「ふくしまの声」について


あかさか のりお|民俗学者、学習院大学教授、福島県立博物館館長。1999年『東北学』を創刊。2007年『岡本太郎の見た日本』でドゥマゴ文学賞受賞、2008年同書で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。2011年4月東日本大震災復興構想会議委員。

ようこそ、ふくしまの声の入会地へ

 これは、ふくしまの声がつどう、かぎりなく開かれた場である。
巨大な地震と津波と原発事故によって傷ついた福島の人々が、
厳しい分断と対立を越えて、未来へと、ふくしまの記憶をつないでゆくために、
わたしたちはいま、ふくしまの声の入会地(いりあいち)を創ろうとしている。
それはきっと、さまざまな声が出会い、入り会い、
大切なものを分かち合う場となることだろう。

あらかじめ、明らかにしておきたいと思う。
ふくしまの声はひとつではない。
そこでは、いくつもの声が渦を巻き、ぶつかり合っている。
ふくしまの声はとてもかすかで、多様で、
誰かがそれを代表したり体現することはありえない。
わたしたちはだから、そうしたひき裂かれたふくしまの声に耳を傾け、
寄り添いつづける覚悟だけは固めたい、と願う。
ふくしまの多様な声がたがいに敬意をもって、やわらかく響き合うことは可能か。
わたしたちは試されている。
まるで試練のように、祈りのように、ひそかな怒りと悲しみに震えながら。

それぞれの多様な声にたいして、どこまでも開かれた入り会いの場となるために。
ふくしまの記憶を未来へとつなぐために。
みずからがメディアと成るために。
それぞれの、ささやかな戦いへ。

ふくしまの声の入会地へ、ようこそ。

          2013. 5.1.  赤坂 憲雄(一般社団法人ふくしま会議代表理事)


ふくしまの声 編集部

編集者
 赤坂 憲雄 小松 理虔 伊藤 江梨

デザイン
 高野祥一

協力
 株式会社 SAGADESIGN SEEDS
 公益財団法人 日本中小企業福祉事業財団

主催
 一般社団法人 ふくしま会議