様子見を決め込む
GEとシーメンス
ところが、名指しで勝負をふっかけられたGEとシーメンスは、「現段階では、事業統合でどれだけ強くなるのか判断できない」と、静観の構えだ。「元から三菱重工は脅威だ。ただ、そこに日立が加わることで、その脅威が強まるのか、まだわからない」というのだ。
その理由の一つに、2社の力量の差が挙げられる。
三菱重工はガスタービンで、すでに世界トップ3といえる地位を築いている。総合力こそGEやシーメンスに劣るものの、「技術では追いついた」(三菱重工幹部)というのは、自他共に認めるところだ。最新鋭の「J形」と呼ばれる大型ガスタービンには、GEもシーメンスも一目置いている。
一方、日立の火力発電設備事業に対する外部の声は最近、厳しいものがある。
「日立の技術力低下に対して、相当な問題意識を持っている」。ある電力会社の幹部は、強い口調で言い放った。「(日立が機器を納めた)中部電力の上越火力発電所で起きたトラブルが有名だが、表沙汰になっていないものも含めると、日立の品質トラブルは相当数ある。三菱重工や東芝ではありえない数だ」と、語気を強める。
もう一つ、製造の視点からも、「シナジー発揮には、5年以上の時間がかかる」と、ガスタービンに精通する三菱重工の技術者はみている。
というのも、三菱重工は米ウェスティングハウス、日立はGEから技術のライセンスを受けて、ガスタービンを造ってきた歴史がある。そのため、三菱重工と日立のガスタービンは大きさの違いだけでなく、「設計思想が根本から違う、まったくの別物」なのだ。
したがって、統合効果が大きく発揮されるべき、部材調達の共通化で大きな効果が見込めるのも、製造拠点の統廃合が実現するのも、先の話になるという。
さらに、三菱重工は三菱電機、日立はGEと火力発電事業で協力関係にある。中でもGEと日立は共に「顧客に迷惑はかけない」とするが、GEとしては「今後は三菱重工に情報が漏れるという前提になる」。そのため、「最新鋭技術での提携は難しくなる」というのが本音だ。今後は役割分担や関係の整理という仕事が待つ。