桜宮高自殺:体罰に異を唱えぬ風潮 外部監察最終報告
毎日新聞 2013年05月01日 22時12分(最終更新 05月02日 01時25分)
大阪市立桜宮高校バスケットボール部の男子生徒(当時17歳)が昨年12月、顧問だった小村基(はじめ)・元教諭(47)=懲戒免職=から体罰を受けた翌日に自殺した問題で、市の外部監察チームは1日、調査の最終報告書を公表した。市教委と学校側の「なれ合い体質」のなかで、処分を最終的に決める教育委員会会議に、体罰の情報が正確に伝わっていない現状を批判。全ての体罰情報が同会議に報告される仕組みの必要性を指摘した。
学校で体罰が発生した場合、校長がまず市教委指導部に伝え、教務部、教育委員会会議の順に報告が上がり、同会議で処分を決める流れになっている。
しかし報告書は、市教委への伝達を校長の裁量に委ねると、自らの管理責任を問われかねないため、隠蔽(いんぺい)につながる危険があると批判した。生徒や保護者が体罰に異を唱えない風潮を背景に、理解を得られたなどとして校長らが体罰を報告しないことが、「体罰が根絶されない根本的理由の一つ」と指摘した。
さらに、学校から報告を受ける指導部の指導主事が教員出身のため、加害教員や校長との仲間意識による「なれ合い」に陥る可能性も指摘。実際、指導主事の判断で、処分などを担当する教務部に体罰を報告しなかったケースがあった。報告書は「体罰に関する情報は、全て教務部や教育委員会会議に到達する仕組みが必要」と記している。
市教委と学校現場のなれ合いは、2011年に市の公益通報制度を通じて小村元教諭の体罰に関する情報が寄せられた際の調査にも影響した。当時、指導主事は生徒への聞き取りを求めたが、顔見知りだった校長に強い姿勢で指導できず、拒否されたという。
報告書は、体育系学科を持つ桜宮高の特殊事情にも言及した。全教員の約3割を占める体育教員の発言力が強く、他の教員が体罰を問題視しにくい土壌があったと結論づけた。
市教委は報告書を基に、今月中にも市教委幹部らを処分する。また、体罰に関する情報伝達の仕組みなども見直し、来年度以降反映させる方針。
報告書は、外部監察チームの西島佳男氏ら弁護士5人が作成。市教委の依頼を受けた1月16日以降、同校の生徒838人と保護者、教員77人を対象にアンケートを実施し、生徒ら80人に聞き取り調査した結果を分析した。【林由紀子】