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改憲論議 独り歩きにさせない 05月02日(木)

 

 憲法とは何か。

 3年前に亡くなった作家の井上ひさしさんはこう説明する。

 国をおさめている人たちがその力を利用して、すきかってなことをしないように、わたしたち国民が「けんぽう」というきまりをつくって、歯止めをかけているのです…きみたちの自由を、まもってくれているんです―。

 国家が表現や思想など、国民を縛っていた戦時中の体験から、井上さんは憲法の大切さを子どもに語った。先の文章は「『けんぽう』のおはなし」(講談社)という絵本に載っている。

   <権力を縛るもの>

 井上さんの言葉は、近代国家の多くの憲法が取り入れている「立憲主義」を易しく語ったものだ。近ごろ、この考え方とは逆の方向を目指す憲法改正の動きが強まっている。特に自民党はその先頭を走っているようにみえる。

 先月下旬の参院予算委員会。安倍晋三首相は「民主主義、人権が定着している今日は王政時代とは違う」とし、国の理想や形を示すために憲法改正に取り組む考えをあらためて示した。今の憲法は時代遅れと言わんばかりである。果たしてそうなのだろうか。

 自民党は昨春、憲法改正草案を発表した。読んだ印象では憲法と比べ、復古色が濃く、国民への締め付けが強くなっている。

 草案には国民は自由と権利には責任と義務が伴うことを自覚しなくてはならない、とある。天皇や国会議員、公務員などに課された憲法を尊重、擁護する義務については天皇が省かれ、新たに国民が付け加えられた。

   <国民には厳しく>

 草案の9条3項には、国の主権と独立を「国民と協力して」守るとの文言がある。当然のこととして見落としがちだが、どんな場合に何をするのかが明白ではない。このままだと、万一の際、国民は政府の方針に一切反対できなくなる恐れはないのだろうか。詳しい説明が聞きたい部分だ。

 先日、自民党憲法改正推進本部事務局長の中谷元氏が共同通信社で草案について講演した。

 中谷氏は憲法の尊重義務で天皇を外し、国民を加えたことについて「正確なところは忘れた」と語っている。草案ができるまでの党内論議を公開してほしいとの要望には「議事録は見たことがない。検証に役立つ努力をしたい」と述べるにとどめた。

 草案は今後の論議の柱になる可能性がある。党内でどんな話し合いをしたのか、国民が分からないのは問題である。

 日本の憲法は9条に代表される徹底した平和主義など、時代に先駆けているとの評価がある。尖閣問題などの対立があるとしても、あくまでも平和的な手段で解決を目指す姿勢は憲法に裏打ちされたものだ。何より、戦後70年近く、武力に訴えず、戦争による犠牲者を出さなかった意味は重い。

 日本維新の会は、憲法が日本をおとしめた元凶とする。が、平和的な貢献で国際社会は評価しているのではないか。自民党は憲法を現実に合わせるべきだと主張する。が、現実を理想に近づける努力が必要ではないのか。

 なぜ、改憲を急いでするのか。政治家の説明は不十分だ。憲法が戦後日本の発展にどれだけの貢献をしたか、複雑化する国際関係の中でどんな価値を生むか、幅広い検討を重ねるべきだ。

 安倍政権の発足後、憲法を総合的に調査する衆参両院の憲法審査会も論議を再開した。先月下旬の衆院の審査会では自民党議員を中心に出入りが繰り返され、空席が目立った。傍聴を続ける東京の弁護士は「メンバーの議員が言いっぱなしで、議論と言えない。これで責任ある結論が出せるのか」と疑問を投げかける。

   <理解を深めねば>

 改憲を目指す政党も、護憲を訴える政党も、参院選を待たずに憲法に対する丁寧な見解を国民に示してほしい。勢いやムードで改憲論議が独り歩きしていくのを黙認することはできない。憲法改正は最終的には国民投票で決まる。後悔することがないよう、私たちも立ち止まって憲法を吟味し、中身への理解を深めたい。

 投開票まで3カ月を切った参院選は憲法改正の是非が争点になる可能性が高い。有権者はかつてなく重い選択を迫られる。

 憲法の意味や改正をめぐる問題点を3回続きで考える。

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