つまり、イスラム過激派のテロで標的になったNYを戦略拠点に選び、ここから形勢挽回を策したのだ。NYTの記事で出ている話はわずかだが、実際のインタビューの録音では、滔々とイスラム批判を垂れている疑いを拭えない。時間の問題でもう一つ注目するべきは、インタビューの日(4/16)と記事掲載された日(4/27)の時間差の問題だ。11日間も空いている。おそらく取材に来た記者たちも、インタビューのお膳立ての事情からして、最初は猪瀬直樹のPR活動に半ば付き合うつもりだったに違いなく、無難な記事を予定していたのだろう。しかし、実際のインタビューで、あまりに猪瀬直樹のイスタンブールへの罵詈雑言が酷いため、平板な取材では収まらない事態になったのではないか。10日以上も間隔が空き、IOCの招致活動の行動規則(RULES OF CONDUCT)から第14条を参照し、猪瀬直樹の発言が抵触することを確認している。また、米国五輪委員会の元幹部の専門家から話を聞き、猪瀬直樹の発言を検証する作業をしている。記事の内容も表題も、猪瀬直樹の発言を正面から批判するもので、東京都知事で東京五輪招致委の責任者がこんな非常識な暴言を吐き、宗教差別をしていると告発したジャーナリズムとなった。インタビューのコンタクトとオファーの経緯を考えると、NYTが最初から罠を仕掛けて張っていたという想定は難しく、インタビューの中で、あまりに無分別で極端な暴言が飛び出すので、記者たちと猪瀬直樹との間に緊張が走る場面に及んだのだろう。