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猪瀬直樹のイスタンブールへの誹謗は計画的なものだ
猪瀬直樹によるイスタンブール(トルコ)への誹謗中傷の件、推測していたとおり、NYTへのインタビューは猪瀬直樹側が申し込んで実現したものだった。NYTの紙面を使って東京五輪の広報宣伝を狙ったもので、場所も都側がホテルの部屋を用意して記者を招いている。4/16のことだ。NYへの出張は4/14-4/19、1週間の長い滞在で、NHKを筆頭に日本のマスコミが張り付き、都バスの24時間運行やら何やら、猪瀬直樹のために御用報道にいそしんでいた。テレビと新聞の面々がゾロゾロと大名行列で随行している。彼らにとって、気候のよい季節の1週間のNY観光旅行なのだ。社の経費で好きなだけ飲み食いし、猪瀬直樹が「NYで東京をPRしている姿」なるものを、日本の視聴者に刷り込むべく素材を撮って本社に流すという、ただそれだけの気楽な貴族仕事。猪瀬直樹にとって、他の日本の保守政治家にとっても同じだが、マスコミ関係者というのはそういう身内のお供だから、NYTの記者の前でイスラム批判の持論を説教してやれば、その趣旨をきれいに記事にしてくれるものと錯覚していたのだ。だが、NYTの記者は日本の腐ったマスコミ貴族とは一味違っていた。猪瀬直樹の辛辣なイスラム批判は、本人が弁解しているように、雑談で偶発的に飛び出したものではなくて、予め猪瀬直樹がメッセージとして用意していたものだ。この真相を推理するためには、インタビューの前日(4/15)に何があったかを思い出す必要がある。


現地時間の4/15の午後、ボストンで惨事が起きていた。イスラム過激派によるテロではないかという情報が駆け巡り、事件後すぐに、サウジアラビア国籍の男が容疑をかけられて拘束されている。さらに、ほどなくして監視カメラの映像がテレビから流され、警察の正式発表なしに、チェチェン人兄弟の情報(未確認情報)が流れる推移になった。こうした状況の中でインタビューは行われたのだ。「イスラムの国々は争いばかりしている」という猪瀬直樹の侮辱発言は、「イスラム過激派のテロに怯える米国社会」という構図を周到に計算したもので、「イスタンブール=イスラム国=危険、東京=多神教国=安全」という二項対立図式を情報発信し、米国市民がその観念を積極的に受容する効果を狙い、米国での五輪世論を東京招致に有利にしようと謀ったものだ。イスラムのテロに恐怖する米国市民の心理につけこみ、イスタンブールが訴求している「イスラム圏初の五輪開催」という意義を、イスラムを正面から批判することで崩す魂胆で、米国からその突破口を開くべく仕掛けたものである。要するに、猪瀬直樹のイスラム攻撃は確信犯の作為であり、招致戦略の一環としての計画的な誹謗中傷なのだ。昨夜(4/30)、NHKの報道に登場した専門家も語っていたが、どうやら、100名超のIOC委員の票読みは、イスタンブールがかなり優勢な状況になっているのである。猪瀬直樹のNY行脚は、その流れを阻止するための反撃工作だった。

つまり、イスラム過激派のテロで標的になったNYを戦略拠点に選び、ここから形勢挽回を策したのだ。NYTの記事で出ている話はわずかだが、実際のインタビューの録音では、滔々とイスラム批判を垂れている疑いを拭えない。時間の問題でもう一つ注目するべきは、インタビューの日(4/16)と記事掲載された日(4/27)の時間差の問題だ。11日間も空いている。おそらく取材に来た記者たちも、インタビューのお膳立ての事情からして、最初は猪瀬直樹のPR活動に半ば付き合うつもりだったに違いなく、無難な記事を予定していたのだろう。しかし、実際のインタビューで、あまりに猪瀬直樹のイスタンブールへの罵詈雑言が酷いため、平板な取材では収まらない事態になったのではないか。10日以上も間隔が空き、IOCの招致活動の行動規則(RULES OF CONDUCT)から第14条を参照し、猪瀬直樹の発言が抵触することを確認している。また、米国五輪委員会の元幹部の専門家から話を聞き、猪瀬直樹の発言を検証する作業をしている。記事の内容も表題も、猪瀬直樹の発言を正面から批判するもので、東京都知事で東京五輪招致委の責任者がこんな非常識な暴言を吐き、宗教差別をしていると告発したジャーナリズムとなった。インタビューのコンタクトとオファーの経緯を考えると、NYTが最初から罠を仕掛けて張っていたという想定は難しく、インタビューの中で、あまりに無分別で極端な暴言が飛び出すので、記者たちと猪瀬直樹との間に緊張が走る場面に及んだのだろう。

猪瀬直樹が喋ったままを記事にして書くと、それはイスタンブールを誹謗し、イスラムを批判する記事になってしまうのだ。NYTが、宗教差別に加担する結果になり、IOCの行動規則と五輪憲章に違反する行為を幇助してしまうのである。だから、インタビューの現場で、その発言は問題ですよと釘を刺す一幕があったのに違いない。最終的に4/27に記事が発表される前に、NYTと猪瀬直樹との間で記事をめぐってやりとりがあり、悶着があったことが想像される。猪瀬直樹は、NYTも朝日や毎日と同じで、脅したり宥めたり賺したりすれば、簡単に猪瀬直樹の身内になり、提灯記事で体裁をつけてくれると甘く考えていたのだろう。どこかの時点で、このNYTの録音記録がそのまま公開されることを強く望む。さて、猪瀬直樹は、昨日(4/30)の会見でなお虚勢を張り、9月の決定までまだ長い時間が残っているなどと嘯いていたが、招致レースは終盤を迎えている。5月末のサンクト・ペテルブルクの会議で、一体誰が演壇に立ち、何をプレゼンテーションするというのか。IOC倫理委員会は、竹田恒和(東京五輪招致委理事長でJOC会長)に書簡を送り、今回の件について所見を求めている。始末書だ。それが届いた時点でIOC倫理委で検討となり、協議の結果が報告される。その動きが、招致活動の正念場での競争とパラレルに進行する。宗教差別で諸国の心証を悪くした日本の不利は否めない。失言の多い麻生太郞や安倍晋三が、また何か騒ぎを起こす可能性も残っている。猪瀬直樹の暴言は彼らの正論なのだから。

NYTが猪瀬直樹を叩き、録音もあるぞと詰め、猪瀬直樹が嫌々ながら謝罪をし、白旗を上げて降参した。政治戦は猪瀬直樹の完敗となり、NYTの勝利が確定し、猪瀬直樹と一緒にNY漫遊旅行を満喫したマスコミ連中が猪瀬直樹を叩き始めた。昨日(4/30)、猪瀬直樹が負け惜しみでTWしたところの、「誰が味方か敵かよく分かって収穫だった」という意味は、具体的にはそういう恨みつらみの口上であり、一緒にNYで飲み食いして豪遊したマスコミ連中(新聞社・テレビ局)が、掌を返したように批判し始めたことに対してあてつけで言っている。同じ内容のことを朝日や毎日のインタビューで吹いても、決して朝日や毎日はそれを五輪憲章違反だとも言わず、IOCの定めた行動規則違反だとも言わなかっただろう。猪瀬直樹の前でヘラヘラと媚び諂い、その多神教優越論の説教に相槌を打ち、猪瀬直樹の代筆者となって読者に向かって提灯記事を書いたに違いない。猪瀬直樹のイスラム侮辱よりも、もっと何倍も酷い民族差別や歴史認識の暴言が、他国を傷つける政治家の妄言が、国会で毎日のように続けられているというのに、朝日や毎日はそれを叩こうとしない。憲法違反の人権侵害であれ何であれ、右翼の政治家のやることは何でも見逃し、既成事実を積み上げさせ、この社会で常態化させている。そもそも、いつM7クラスの首都大地震に襲われるかもしれないのに、本当に2020年に湾岸地区で五輪大会を開催していいのか。東大地震研(平田直)がその確率を4年以内に70%と出しているのに、よく平然と五輪招致などとお祭り騒ぎができるものだ。

大地震が起き、大津波が東京湾に押し寄せたとき、最も大きな被害を蒙るのは、選手村と競技施設が集中する有明から新木場にかけての湾岸一帯だ。東京湾の一番奥だから、当然、そこに最も高い津波が襲来する。3.11の震災後は、マスコミは来る日も来る日もそう警告してテレビでCGを流し、首都圏住民の危機感を煽って防災を叫んでいた。昨年、ロンドン五輪の前後から、そんなことはケロリと忘れたように、施設を湾岸に集中させた「コンパクトな大会計画」をマスコミは喧伝するようになり、国民を洗脳して五輪翼賛に扇動して行く。誰も異論を唱えず、首都直下地震や東京湾の津波の話は雲散霧消した。江戸川の河口に放射性物質が大量に流れ込み、海底の放射能濃度が異常に高いという情報も、いつの間にか誰も言わなくなった。関東北部の山々に降り落ちた放射性物質は、雨に洗われて利根川水系に流れ込み、江戸川や荒川を下って東京湾の海底に沈殿する。たとえ五輪大会を日本に招致するにしても、場所は内陸を選び、なるべく地震や津波のリスクを避けるのが常識であり、それが世界のアスリートに対する配慮と礼儀というものだろう。何で、わざわざ最も危険の大きい湾岸地区に施設を集中させた五輪大会を設計するのか。また、それを問題視したり不当視したりする意見が出ないのか。おそらく、9月の選考発表でイスタンブールに負けた後、マスコミと官僚は、思い出したように東京の地震と津波の脅威を言い出し、防災予算を肥大化させるべく、テレビで騒ぎ始めることだろう。国民大衆は、少し前に湾岸での五輪の招致に盛り上がっていたことなどケロリと忘れ、避難対策はどうするだの喧々諤々としているだろう。

政府とマスコミが騒ぐ新しい扇動ネタに埋もれて、右往左往しているに違いない。


by thessalonike5 | 2013-05-01 23:30 | Trackback | Comments(4)
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Commented by ろうのう at 2013-05-01 20:26 x
反動の輸出は絶対に親日国を増やさない
Commented by haku at 2013-05-01 22:56 x
IOCやトルコの寛容を示すニュース速報が流れています(本当なのかな?)。日本としては有難いけれど、大きな借りを作りましたね。それに「芽」を自分で摘んだまま、また生えてくることはない。
Commented at 2013-05-02 00:18 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by Areopagitica at 2013-05-02 02:34 x
 今回、記事(4/26日付)を書いたNYTのケン・ベルソン記者は日本在駐経験もあり、本(サンリオとハロー・キティの実態)も出している方なんですね。相棒の田淵広子とタッグを組んでいたようですが、猪瀬直樹にとっては相手が悪かったですね。先週の安倍晋三~猪瀬直樹と悉く海外メディアから突っ込まれている。貴殿が仰ったように、本来であれば国内マスコミが真っ先に糾弾すべきなのですが、最早この国はジャーナリズムが機能していないのかな、と感じました。まるで緊張感が無いですね。今回の五輪に関する暴言も3日遅れ。
 一方、オバマはホワイトハウスの番記者達をヒルトンホテルに一斉に集め、晩餐会(ネット配信アリ)を催しました。日頃の緊張関係の裏返しなのか、オバマは饒舌でユーモアやシニカルなネタで笑わせたかと思うと、最後はボストンの事件やメディアの姿勢についてしっかりとシリアスに締めました。流石です。日本で同じ事を安倍晋三がやったら右翼の内輪ネタに終始しそうですが。
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