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動き出す有機ELビジネス(下)装置・材料は韓国に集結――グローバル開発カギ。

[ 2012年4月19日 / 日本経済新聞 朝刊 ]

 「テレビ向けの大型パネルの量産に向けて力を貸していただきたい」。今年2月、来日した韓国LG電子の具本俊(グ・ボンジュン)副会長は有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)関連の装置や材料メーカーを回り、こう要請した。

 LGは年内に55型の有機ELテレビを発売する予定で、量産に向けて開発を加速している。白色の有機EL材料をバックライトとして使い、カラーフィルターを通して映像を表示する方式を採用する。赤青緑の三原色をガラス基板上に形成する韓国サムスン電子の方式より、コストは大幅に安くなる見込み。

製造技術に課題

 ただ、パネルの効率生産に不可欠な製造技術にはなお課題を残している。経営トップから直接協力を要請された、ある装置メーカー幹部は「サムスンに後れを取ってきたLGも本気になった」と感じた。

 有機ELパネルで約8割の世界シェアを握るサムスンは2012年にパネル関連で6兆6千億ウォン(約4700億円)の設備投資を計画、多くを有機EL関連に振り向ける。その独走態勢を支えているのも日本の製造装置や材料メーカーだ。

 有機ELパネル製造の要となるのは自発光の有機材料を形成する工程だ。その装置はキヤノン子会社のキヤノントッキと、真空装置技術を得意とするアルバックがサムスンと二人三脚で開発を進めている。

 アルバックは韓国京畿道平沢市に海外初となる研究開発拠点を11年に設立、数十人規模の技術者を常駐させている。サムスン側から「連日のように課題が出る」(アルバック幹部)という。

 材料メーカーもサムスンとの距離を縮めている。出光興産は11年10月、サムスンが採用する低分子タイプの有機EL材料の生産子会社を韓国に設立した。宇部興産はサムスンと合弁で耐熱性の高い樹脂材料を生産する新会社を同8月につくった。ガラスの基板を樹脂に置き換え、折り曲げ可能なパネルの実用化に向けて開発を進めている。

 独立行政法人、科学技術振興機構(JST)は11年7月、酸化物半導体の技術をサムスン電子にライセンス供与すると発表した。東京工業大の細野秀雄教授のチームが開発した酸化インジウム・ガリウム・亜鉛(IGZO)と呼ばれる半導体で、消費電力を抑えながら高精細のパネルを作れるようになる。

日本技術を導入

 シャープは量産出荷を始めたタブレット端末向けの液晶パネルにIGZOを採用したが、サムスンはこの“日本発”の技術を液晶と有機ELの両方に導入する計画だ。日本の技術と装置、材料メーカーが結集して「亀山モデル」をつくった液晶パネルとは、まったく異なる状況で有機ELをどう事業化していくか。

 ソニーは台湾のパネルメーカー友達光電(AUO)と共同で、有機ELテレビの量産化に向けた技術開発を始めた。すでにテレビ用パネルを試作済み。今後はサムスンやLGも未解決の第8世代以降の大型ガラス基板で、いち早く量産技術を確立することを目指す。

 ソニーは07年に世界初となる11型の有機ELテレビを発売した。現在は放送局など業務用に17型や25型の有機ELパネルをつくっている。大型パネルの量産化時期などは未定だが、ソニーの技術とAUOの低コスト生産のノウハウを組み合わせ、韓国勢に対抗するシナリオを描く。

 先行する2社追撃へ、装置や材料メーカーとグローバルな開発・生産体制をどう築くかが課題となる。

 指宿伸一郎、尾島島雄、渡辺淳が担当しました。

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