幽霊・妖怪直撃インタビュー(その11)
最強ストーカー / 展示期間:前期
「和漢百物語 清姫」
月岡芳年(つきおかよしとし)
1829-1892 慶応元年(1865)
インタビュー?待ってよ。こっちから聞きたいことがあるの。あなた、安珍(あんちん)っていうお坊さん、見なかった?ねえ、どこ行ったか知らない?若くてイケメンのお坊さんよ。あたしは清姫。お坊さんの彼女よ。約束をすっぽかされたかわいそうな彼女なの。ほんとに知らない?ウソついたら承知しないわよ。あたし、もう完全にキレてるんだから。顔を見たら分かる?そうでしょ。あたし、泳げないじゃない。だからこの日高川だって、ヘビになって渡ってきたんだから。えっ?道成寺っていうお寺に行った?ありがと。あなた、命びろいしたわね。いえ、何でもないわ。インタビューはまたあとでね。それじゃね。…さあてと、安珍さまーっ!殺すぅーっ!
幽霊・妖怪直撃インタビュー(その12)
メイドの土蜘蛛 / 展示期間:前期
「新形三十六怪撰 源頼光土蜘蛛ヲ切ル図」
月岡芳年(つきおかよしとし)
1829-1892 明治25年(1892)
あのね、シーツをひっぺがして掃除してるわけじゃないの。このオジサンをやっつけようとしてるわけ。だいたい、私はメイドさんじゃないんだから。顔見りゃわかるでしょ。土蜘蛛よ。ツチグモ。えっ?クモはこんな顔なのかって?ただのクモじゃないわ。妖怪よ!
このオジサンもね、お宅にいる定年退職したお父さんみたいにゴロゴロして掃除の邪魔をしてるんじゃないの。源頼光(みなもとのらいこう)っていって、オニの親分の酒呑童子(しゅてんどうじ)をやっつけちゃうし、私たち妖怪の敵なのよ。いやななつ。病気で寝ていたから襲ったのよ。あっ、インタビューに答えてたら、もう刀を抜こうとしてる。もう、ヤダ。何よこれっ!に、逃げようっと!
幽霊・妖怪直撃インタビュー(その13)
首だけ酒呑童子 / 展示期間:通期
「大江山酒呑退治」
歌川芳艶(うたがわよしつや)
1822-1866 江戸末期
ぐわああああーーーっ!あほんだらあっ!なにがインタビューや!この状況、わかっとるんけえええーっ!
わしは酒呑童子(しゅてんどうじ)や。京の都で暴れまくって、財宝や女を奪い、山奥の豪華な邸宅で鬼どもをしたがえて暮らしてたんや。そうや。鬼の大将や。裸の大将ちゃうで。そこへ山伏どもが珍しい酒を持ってやってきて大宴会やった。ところがこの酒が毒入りやんけ。おかげでこのザマや。首をぶった切られてもうた。このクソッ!頭だけになっても暴れてやるんや!山伏に化けてわしをだまし打ちにした源頼光と四天王、おぼえてけつかれっ!ぐああああっ!もうアカン。おかあちゃーーーん!
幽霊・妖怪直撃インタビュー(その14)
必殺コンビ / 展示期間:後期
「足長手長 生人形 浅草奥山」
歌川国芳(うたがわくによし)
1797-1861 安政2年(1855)
手長:
兄貴、直撃インタビューだってさ。ちょっと照れるなあ。でも、兄貴はいいよ。オレと違って足が長いしカメラ写りもいいからなぁ。
足長:
まあな。でもよ、オマエもコタツに入ったまま、いろんなものに手が届くじゃねえか。うらやましいぜ。オレの足、コタツから出ちまうし。それに、手も足も長かったら、それこそ妖怪じゃね?
手長:
ハハハハ。そうだね。でも、俺たちがこうやって魚とるのって、ホントにすごいのかな。
足長:
当たり前だろ。だからわざわざ生人形(いきにんぎょう)として見世物になったし、浮世絵にも描かれたんだ。でもな、なんとなく、みんなに笑われている気もするんだなあ。
幽霊・妖怪直撃インタビュー(その15)
疲れた妖怪 / 展示期間:通期
「妖怪図」
円山応震(まるやまおうしん)
1790-1838 江戸時代後期
なんだよ。そんなにじっと見るなよ。ほっといてくれよ。インタビューだって?…ゴメン。疲れてるんだ。ちょっとだけ?…そうだなあ。ギャラくれる?今日も稼ぎがわるくてさ。もうホントに疲れちゃった。仕事から帰ってきたばかりだけど、このザマだよ。仕事?よく見てよ。琵琶法師だよ。ギターによく似た楽器を弾きながら、平家物語とか、昔々のながーいながーいお話を語っていくんだ。オレはまだ人間に見える妖怪だから、なんとか琵琶法師をやれてる。でもバレないかって気をつかうし、おまえ、なんか変だぞ、なんて今日もいわれたし。うん。オレを描いたのは円山応挙(まるやまおうきょ)の孫にあたる画家だよ。彼も世の中に疲れてたのかなぁ。それにしても、はやく人間になりたーい。
幽霊・妖怪直撃インタビュー(その16)
実在したバケモノ / 期間中頁替えあり
「筑前国宗像郡本木村化物次第書 全」
竹圃?-?
安政6年(1859)写
どうした。驚いた顔をして。ワシはこれまでのやつらとは違うだと?あたりまえだ。ワシは実在したバケモノだからだ。正確に言えば、ワシは福岡にある村を襲ったバケモノの大将の頭蓋骨だ。これはそのスケッチなのだ。アゴ骨をはずされているのに、よくしゃべれるなだと?うるさい。黙って聞け。
今から330年ほど前、ワシは仲間と共にある村を襲った。困った村人たちは福岡藩士を連れてきたがうまくいかず、最終的には三代藩主黒田光之の犬によってワシは退治された。犬にやられるとは我ながら情けない。このスケッチは、その折りの事情聴取の記録を後に写した文書に載っている。わかったか。
えっ?何かの動物の頭蓋骨だろだって?ネットや図鑑で調べてみるって?ううう…勝手にしろ!
※会期中展示替えがあります。展示期間は都合により変更される場合があります。ご了承ください。