東日本大震災:福島第1原発事故 県民健康管理調査を主導していた山下・県立医大副学長に聞く /福島
毎日新聞 2013年04月23日 地方版
◇批判された不安解消の目的「今は段階変わった」
福島第1原発事故を受けて県が実施する県民健康管理調査を主導してきた山下俊一・県立医大副学長(60)が毎日新聞の取材に応じた。山下氏は4月から県立医大の副学長は非常勤になり、長崎大に復職した。被ばくの影響を否定する結論ありきではないか、と批判されてきた「県民の不安解消」という調査目的について「段階が変わった。見直すべきだ」と述べた。【聞き手・日野行介】
−−調査が始まってもうすぐ2年になる。住民の信頼を得られたと思うか。
◆極めて難しい問題だ。私個人として判断できないが、言ったことが正しく伝わらないこともあった。
−−事故直後に県内各地で「100ミリシーベルトまでは安全」と講演したことが影響したのではないか。
◆国が避難の基準などを年間20ミリに定めたことが大きかった。平時(1ミリ)と非常時で基準が異なるのは当然だし、国の言うことだから従う。しかし1ミリ以上でも危険だと混同して受け取られてしまった。
−−自身の役割をどう考えて福島に来たのか。不安を抑えるためだったのではないか。
◆その目的もあったが、放射線のリスクの話をするのが仕事だと思っていた。
−−県民健康管理調査の検討委員会の座長の立場はどうするのか。
◆長崎大教授の立場で福島に来て、検討委の座長として調査を立ち上げる一方、(県から委託されて調査を実施する)福島県立医大の副学長になった。調査の実施部隊と検討評価を同じ人間がやるのはおかしいと元々思っていた。準備会(秘密会)の記事が出て、代わるべきだと思った。
−−秘密会の議事録を読むと、県の作った進行表に従い、「これは議論しない」と範囲も制限している。これは住民に対する情報操作ではないのか。
◆誤解を招いた意味では申し訳ない。結論ありきではない。議論するときには下書きがなければ意見集約できない。進行表に沿ったのは県への配慮もある。県も被害者、被災者で一生懸命だからだ。
−−調査目的に「不安の解消」と掲げ、「被ばくの影響なし」という結論ありきではないかと批判されている。見直すべきではないのか。
◆さまざまな意見があったが、当初は不安が強かった。今は段階が変わっている。目的も含めて見直されてしかるべきだろう。
−−原発についてどう考えているのか。