ビッグデータの時代に
一番欠けているのは人財である
ビッグデータ時代に一番欠けているもの、それは人財である。マッキンゼー・レポートでは、今後米国だけで14万~19万人の “Deep Analytical Talent”(データ分析に秀でた人財)が必要になるとしている。我々が必要としているのは、どのような人財だろうか。
今世紀もっともセクシーな職業は
「データ・サイエンティスト」
グーグルのチーフ・エコノミストであるハル・バリアンが、2009年に「今後10年間で最もセクシーな仕事は統計学者である」と語ったことが大変話題になった[1]。また、ハーバード・ビジネス・スクールの トーマス・ダベンポートは、「データ・サイエンティストとは、高度な数学的素養を持ち、プログラミングに長けていて、好奇心旺盛で企業の経営にも興味を持つ、スーパースターである」と述べている[2]。シリコンバレーの「インサイト・データ・サイエンス・フェローズ・プログラム」[3]は、物理や数学などの博士号所持者に対して6週間のプログラミングなどのトレーニングを施し、企業に送り込むデータ・サイエンティスト育成プログラムである。このプログラムの修了生は、例外なくグーグルなどシリコンバレーの企業に就職しているそうだ。履修費用はすべて企業が負担する。米国において、データ・サイエンティストが「もっともセクシーな職業」と言われる所以である。
日本では、このようなスーパースターの労働市場はまだ立ち上がっていないようである。しかし、品質管理、サプライチェーンの効率化、マーケティングなどの分野においては、データを使った意思決定が既に行われていて、このような現場で活躍できる中堅のデータ分析者、エンジニアが求められている。
データ分析に必要なスキルとしては、データ処理や統計に関する基本的な知識に加えて、データの裏にある真実を見抜く力、あるいは一見まったく関係のないデータを組み合わせるときに何が見えるようになるか、様々なステークホルダの立場に立って想像してみる力が必要である。このためには、コミュニケーション能力も欠かせない。このように「データ・リテラシー」は全人的なスキルとなる。
氾濫するデータから貴重な宝を発掘する
「データ・キュレーター」
どれほどよいデータ分析手法を用いても、データそのものの品質が悪ければ結果も信頼出来ないものになってしまう。従って、入力にどのようなデータセットを選ぶかは、非常に重要な問題となる。「第4の科学パラダイム」の中で、ゴードン・ベルは「データ中心科学は3つの主要な活動からなる。データの収集(capture)、キュレーション(curation)、分析(analysis)だ」と述べている[4]。この中で、キュレーションは今まであまり注目されていなかったが、今後重要になる概念である。
- 最終回 データ分析型企業への変革は まずトップから (2013.02.05)
- 第7回 ビッグデータの時代に 一番欠けているのは人財である (2013.01.31)
- 第6回 ビッグデータのキーワードに 振り回されないために (2013.01.29)
- 第5回 経営資源・知財として ビッグデータを最大限に活かす (2013.01.24)
- 第4回 経営者はデータ活用に 明確なビジョンを持つこと (2013.01.22)