経営者はデータ活用に
明確なビジョンを持つこと

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データさえあれば、自動的にビジネス・イノベーションが起きるわけではない。経営者は、データ分析に必要な組織上の要件と、データ分析を意思決定に用いることの限界を理解し、データをどのように経営に活かすか、明確なビジョンを持つべきである。

 

データ分析を一連のプロセスとして捉える

 データ分析とは、ある特定のイベントではない。データ分析は、組織における意思決定の補助手段であり、データの収集から意思決定までの一連のプロセスとして定義されなければならない。

 例えば中南米における市場動向の分析をしたいとしよう。このためには様々なデータを集める必要がある。もちろん、営業部門から上がってくる中南米の支店 における売上データは直接のデータである。それ以外にも、製造部門から来る中南米のサプライヤーの状況、マーケット部門からくる市場調査のデータ、あるいは経営企画部門から各国のマクロ経済の動向に関するデータも上がってくるかもしれない。これらのデータを整理し、統合し、分析し、意思決定につなげるにはどうすればよいのか。それには、社内に部門横断的な分析チームを構成する必要がある。

 最高情報責任者、いわゆるCIOは、情報システムの責任者という位置づけが一般的かもしれない。だが、CIOは社内の情報を一元的に俯瞰できる唯一の役職である。単なる情報システムの管理者ではなく、本来は、統合された情報を戦略的に経営に活かす役割を持つポジションであるべきだ。データに基づく意 思決定の時代においては、戦略的にデータを収集し、統合し、分析し、意味ある情報として経営にインプットすることが求められているのではないだろうか。

データを客観的に解釈する

 統計数理研究所は、国立国語研究所と共同で山形県鶴岡市において定期的に方言の調査を行なっている[1]。東北地方の方言は、上代などの古い日本語の発音を残しているとされていて、これらの方言がどのような人によってどのような状況において利用されているか、またその経年変化を見ることは、日本語の研究にとってきわめて重要だと考えられている。この調査によってわかったことの一つに、「テレビを多く見る人は、方言の利用率が高い」という結果がある。テレビで使われるのは多くは標準語であり、テレビが標準語の普及に大きく貢献していることには疑問の余地がない。にもかかわらず、なぜテレビを多く見る人が方言をより話すのであろうか?

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