適切なデータ分析アプローチを
選択せよ
モデル化は、将来に対する予測を与えてくれると同時に、現在や過去のデータの欠損値を埋めてくれる(オムツのデータが今日に限って、システム故障のために得られなかった場合など)。さらに、モデルがあれば、様々な戦略をシミュレーションしてみることができる。ある販促を行って、ビールの売上が20%増えるとすれば、オムツの売上も増えるだろうか?
もちろん、通常完璧なモデルはあり得ない。だから、モデルによる予測も外れることがある。しかし、過去のデータに基づくモデルがあれば、より合理的な予測ができることは間違いない。
3. 指示的データ分析(Prescriptive)
データ分析を行う究極の目的は、よりよい意思決定につなげるためである。ビールとオムツが同時に売れる傾向にあることがわかっても、売上増や顧客満足度向上につながる意思決定ができなければ役に立たない。モデルがあればシミュレーションができる。だが、シミュレーションにどのような仮説を入れるか、すなわちどのようなシナリオを作りパラメターを設定するかがわからなければ、そもそもシミュレーションは成り立たない。
最適化はそのようなシナリオとパラメターの設定の可能性、つまりビジネスにおける「次の一手」の中で、最も良いものを選んでくれる技術である。可能な指し手が数個であれば、それらを次々に予測モデルに入れて、それらを評価することで、最もよい指し手を見つけることができる。もし、可能な指し手の数が大きければ、その中からベストなものを見つけるのは容易でない。最適化の手法は、単純な数え上げの不可能な、非常に大きいパラメター空間の中で最適な設定値を探してくれる。
もちろん、「何が最適か」は目的によって違うだろう。売上を最大化したいのか、顧客満足度を上げたいのか、あるいは利益を上げたいのか、はたまたそれらの組み合わせかもしれない。Prescriptiveなデータ分析は魔法の杖ではない。自分が欲しいもの、つまりは目的関数がはっきりわかっているときに助けてくれるものなのだ。
[参考文献]
[1]James R. Evans, “Business Analytics: The Next Frontier for Decision Sciences,” Decision Science, Vol. 43, No. 2, 2012.
- 最終回 データ分析型企業への変革は まずトップから (2013.02.05)
- 第7回 ビッグデータの時代に 一番欠けているのは人財である (2013.01.31)
- 第6回 ビッグデータのキーワードに 振り回されないために (2013.01.29)
- 第5回 経営資源・知財として ビッグデータを最大限に活かす (2013.01.24)
- 第4回 経営者はデータ活用に 明確なビジョンを持つこと (2013.01.22)