今週の1冊は、M.J.アドラー/C.V.ドーレン著、外山滋比古/槇未知子訳『本を読む本』（講談社学術文庫）。
現代人は、情報の洪水の中で、頭を使わなくとも済んでしまう（！）そうだ。なぜ頭を使わなくとも済むかというと、マス・メディアが「情報や意見の知的パッケージ」を作り提供しているので、読者や視聴者は自分の判断を下す手間が省かれるのだという。恐ろしいことだ。原著が出版されたのは1940年ごろだから、事態はさらに進んでいるはず。
情報や知識を主として活字によって得る習慣のある人が読書家だ。ラジオやテレビは活字が果たしていた機能を肩代わりしようとしているが、物事を深く理解するという点では大いに疑問だと、読書の重要性を説く。
読書には4つのレベルがある。すなわち、初級読書、点検読書、分析読書、シントピカル読書（比較読書法）で、本書では主に分析読書について書かれている。
ところで、良い本というものは、論証が展開されていくにつれて自然に要約されていくものだそうで、この本でも分析読書についての要約はあった。172頁
�� 分析読書の第一段階：何についての本であるか見分ける(1)〜(4)規則�� 分析読書の第二段階：内容を解釈する(5)〜(8)規則�� 分析読書の第三段階：知識は伝達されたか(A)知的エチケットの一般的心得(9)〜(11）規則：(B)批判に関してとくに注意すべき事項(12)〜(15)規則
規則が15条もあるだけでも消化不良を起こしそうだが、その下のレイヤーにも附則があったりすると、降参という感じだった。
ところで、分析読書に入る直前に、意欲的読者になるためという節があった。それは、「読みながら質問する習慣」を付けることなのだが、その質問事項は4つあった（割愛）。そのためには鉛筆を持って読書するのだ。効果的な書き込みの例は７つあった。7番目の例は、ページの余白に書き入れをするだった。質問や答え、複雑な議論を簡単な文にまとめるなど。その場所として、表表紙の見返しに注目していた。
さて、最後にちょっと怖いことが書いてあった。精神の成長は人間の偉大な特性だが、筋肉と同じで、使わないと萎縮するおそれがある。“精神萎縮”は精神の死滅を意味する恐ろしい病だ。多忙な生活を送っていた人が、引退すると急に衰えてくることが多いのもこのためだという。自分の中に「精神的な貯え」のない人は、外側からの人為的な支えがなくなると思考を止めてしまう。テレビ、ラジオをはじめ、さまざまな娯楽や情報源も、すべて人為的な突っかい棒にすぎない。
すぐれた読書は、われわれを励まし、どこまでも成長させてくれるものだと、読書の効用でしめくくっている。
さて、まず面食らったのは、規則が階層状に多数列挙してあること。とても覚えきれない。本を読むとき、総てを適用できるとは思えない。この手の本は、できるところだけを参考にする。後日読み返したときに、新たに参考となる箇所がみつかれば、また取り入れる、というスタンスがいいと思う。読みながら傍線を引く。とくに重要な箇所はページを内表紙にメモすることはやっていた。今回は、不明な事項や、調べた事柄をページ余白に書き込むことを取り入れたいと思う。