鈴木
「日本の領土やいわゆる歴史問題をめぐって、中国や韓国など日本の周辺国が国際世論に自国の立場をアピールする動きが活発になっています。」
阿部
「その舞台の1つが、世界の情報の発信地ニューヨーク。
各国との情報戦に日本はどう対応するのか。
日本の外交官を追いました。」
鈴木
「日本の領土やいわゆる歴史問題をめぐって、中国や韓国など日本の周辺国が国際世論に自国の立場をアピールする動きが活発になっています。」
阿部
「その舞台の1つが、世界の情報の発信地ニューヨーク。
各国との情報戦に日本はどう対応するのか。
日本の外交官を追いました。」
先週、ニューヨーク州の議員らが会見を開きました。
州の議会で、いわゆる従軍慰安婦の問題をめぐって日本政府に公式の謝罪を求める決議案を提出するというのです。
ニューヨーク州上院議員
「誰も過去の罪と過ちを忘れてはならない。」
この動きを後押ししたのは、韓国系アメリカ人をまとめる市民団体でした。
韓国系アメリカ人団体
「慰安婦問題は世界共通の人権問題だ。」
世界の情報の発信地、ニューヨーク。
国際世論に強い影響力をもつメディアが集まっています。
これらのメディアに対して、いかに自国の主張をアピールし、世界に伝えてもらうか。
各国が熾烈な情報戦を繰り広げています。
日本の情報戦の拠点となる、ニューヨーク日本総領事館です。
各国に遅れを取らないよう、毎日会議を実施。
メディアが日本をどのように扱っているか、細かく分析しています。
廣木重之総領事
「オピニオンリーダーやメディアに積極的に働きかけて、一層、強力に日本のPRができるように。」
去年(2012年)9月、日本側を驚かせる出来事が起きました。
中国の政府系英字新聞が有力紙ニューヨーク・タイムズに全面広告を掲載。
「尖閣諸島は中国の領土だ」と主張したのです。
その後も立て続けに広告を掲載。
いずれも日本円で2,000万円を超える巨額の広告費がかかったと見られています。
こうした多額の予算をつぎこむ手法に対し、日本側は地道にメディア各社をまわり、日本の立場を説明してきました。
日本の情報戦を担う川村首席領事です。
国際世論に影響力をもつニュース雑誌、ニューズウィークの本社。
川村さんは、編集長を繰り返し訪ねて、尖閣諸島は、歴史的、法的に、日本の領土だと粘り強く訴えてきました。
川村泰久首席領事
「去年は何度もお会いいただきましたね。」
ニューズウィーク編集長
「1970年まで日本側の領有権に中国から異論は出ていなかったそうですね。」
先月(12月)、編集長のコラムが掲載されました。
タイトルは「領土を欲しがる中国」。
「中国は1970年まで尖閣諸島の主権を一度も主張したことがなかった」と書かれています。
地元ニューヨークのテレビ番組にも出演、日本政府の主張をアピールします。
川村泰久首席領事
「尖閣諸島は問題なく日本政府が管理している。」
この1年間の川村さんのメディアへの訪問は40社、100回近くに上ります。
さらに新聞への投稿や電話での申し入れをあわせると、3,000回近くのやりとりにのぼります。
川村泰久首席領事
「ニューヨークタイムズやウォールストリートジャーナルの意見は、世界への影響が大きい。
ニューヨークで日本の考え方をくどいくらい説明するのは重要なこと。」
鈴木
「ニューヨークで取材にあたっている榎原(えばら)記者です。
日本の広報活動、成果は上がっているのでしょうか?」
榎原記者
「領土・領海の問題について言えば、今のところ日本の立場が反映されている記事は多いと思います。
アメリカでは、巨額を投じた官製の全面広告をそのまま信じる読者はほとんどいない、それよりもできるだけ多くの正確な情報を提供してもらったほうがいい、とこちらのジャーナリストたちも話していました。
しかし、日本に関して云えば、アメリカのメディアの関心は、領土問題そのものより、安倍新政権が日本経済をどう立て直すのか、また過去の歴史の上に立って、近隣諸国とどんな関係を築くのかに移っています。
一定の警戒感を持った記事が増えていることも確かです。
阿部
「今後日本はどう戦うべきなのか?」
榎原記者
「とにかく、さまざまな機会をとらえて、情報を出してゆく、発信する量を増やすことが情報戦を生き抜く鍵だと見られています。
日本情勢に詳しいジャーナリストからは、日本から発信される情報はまだまだ乏しいという指摘を受けました。」
米国海外特派員協会 ホルスタイン名誉理事
「日本には目立つことを好まない文化があるが、アメリカでは政治の生命がメディアの中にある。
ここで起きているのは情報戦だ。
もっと、さまざまなレベルで情報の発信が必要だ。」
榎原記者
「アメリカでは中国・韓国から移住する人たちが増える中で、彼らの発言力が強まっています。
日本が情報戦を生き抜くためには指導者、外交官に留まらず、民間・個人のレベルでも、アメリカに来て直接発言するなり、ソーシャルメディアなどで発信することがこれまで以上に必要になっていると感じます。」