E.P.A環境変換装置建築研究所の武松幸治代表がサウスウッドの設計依頼を受けたのは2010年。建築主は環境配慮型の建物を求めていたので、その方面での実績をもとにアイデアを期待された。
当初から鉄筋コンクリート造と木部材のコンビネーションを検討していた。まずはハイブリット集成材を採用するべきかどうか調査。二酸化炭素(CO2)削減の先導事業として補助金制度の利用も模索するなか、鉄骨製作時のCO2排出量や国産木材の乾燥に使う熱源などが、先導事業としての要件にそのままでは合わない公算になっていったという。
そんなとき、竹中工務店や鹿島が木質の耐火構造技術を開発しているのを耳にした。竹中工務店に相談をしたところ、このプロジェクトに必要な断面の燃エンウッドの大臣認定取得のめどが立ち、本格的に設計に取り込むことになった。
「求めたのは9mスパンが実現できることだった」と武松代表は言う。竹中工務店が当時実現していた4~4.5m程度のスパンでは商業施設の計画には使えないと考えた。五十嵐リーダーも、今後の普及展開には9mスパンを実現することが必要不可欠だと考えた。燃エンウッドの大臣認定取得のめどが立ったことで「ハイブリッドでいったん基本設計ができていたものを、ほぼやり直すことになった」(武松代表)。
建築主の横浜都市みらいは当時、商業施設間の競争の激しいこの地区で、施設はどういった個性を持つべきものであるか、といったことを社内で議論していた。多くのリピーターを生み、集客力が高く、優良なテナント誘致力を持つ施設でなければならない。
「設計者には、特に『木造で』というリクエストをしたわけではなかった」と、横浜都市みらいの須田将幹企画部次長は言う。太陽光パネルや壁面緑化などを組み合わせて魅力付けするイメージだった。そのため、木造の耐火構造を取り入れた提案を示されたときは「本当にできるのか」(須田次長)と思った。
■2013年4月、ついに組み立て完了
ついに4月8日、現場では燃エンウッドの組み立てが完了した。工期は9月末までで、2013年秋に商業施設がオープンする予定だ。
サウスウッドの工事概要
施工場所:横浜市都筑区茅ヶ崎中央6番1他、発注者:横浜都市みらい、トータルプロデュース:シー・アイ・エー、設計者:武松幸治+E.P.A環境変換装置建築研究所、構造設計:竹中工務店、設備設計:総合設備計画、施工者:竹中工務店(監理者:武松幸治+E.P.A環境変換装置建築研究所、現場代理人:沖田哲雄、元請けの技術者数:7人)、敷地面積:3507.98m2、建築面積:2941.73m2、延べ床面積:10874.33m2、階数:地下1階・地上4階、最高高さ:18.631m、用途:ショッピングモールおよび一般事務所、主な専門工事会社:斉藤木材(集成材製作・建て方)/洲国建設・黒崎工務店(型枠工事)/トーハンスチール(鉄筋工事)/目黒建設(とび工事)/高砂熱学工業(空調・衛生)/きんでん(電気)、工期:2012年4月~13年9月、工費:非公表
(写真家・ライター 勝田尚哉)
[ケンプラッツ2013年4月17日付の記事を基に再構成]
人気記事をまとめてチェック >>設定はこちら
サウスウッド、集成材、燃エンウッド、竹中工務店、タワークレーン、鉄筋コンクリート、建築基準法、木造
横浜市にある港北ニュータウンの中心部、市営地下鉄センター南駅前に珍しい光景が現れた。大規模なコンクリート躯体(建物の骨組み)の上にクレーンで建てられていく梁(はり)と柱は、どう見ても「木」なのだ。聞…続き (5/1)
東京を出てあと数分で名古屋に到着する東海道新幹線の車窓から、間近に迫る工事現場が飛び込んでくる。国道1号をまたぐ新幹線の軌道(線路)の上空に、名古屋高速道路4号東海線の高架橋を建設…続き (4/19)
2016年度開通を目指し、横浜市北部を流れる鶴見川に並走して工事が進む「横浜環状北線」。第三京浜道路との結節点になる港北ジャンクション(JCT)に近い現場では、様々な…続き (4/11)
各種サービスの説明をご覧ください。
・ソフトバンク、2段目ロケット点火なるか
・NEC、電池不要のセンサーシステム
・アスカ、米工場を8倍に拡張
・クラレトレーディング、スーツ用繊維の販売1.5倍に
・旭化成ホームズ、完全自由設計の高級住宅を年100棟…続き