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【なくせ仮設引きこもり】 南相馬の医師らがプロジェクト  物作りで希望と活力


 木工作業所で黙々と作業に取り組む、仮設や借り上げ住宅で暮らす男性たち=4月14日、福島県南相馬市
 仮設住宅で独り朝から酒を飲み、たまに外に出ると足はパチンコ店へ。不健康な暮らしに、周囲は孤独死を心配する。そんな被災者の男性たちを社会に引っ張り出そうと、福島県南相馬市の医師たちが仕掛けた。題して「(H)引きこもり(O)お父さん(H)引き寄せ(P)プロジェクト」。スペルは違うがHOHPを「ホープ」と読み、あすへの希望につなげる試みだ。

 日曜の朝、南相馬市の住宅街にある木工作業所。のこぎりやドリルの音がにぎやかに響く。ホープ作戦の一環で、仮設や借り上げ住宅の被災者向けに今年1月から始めた「男の木工」が毎週開かれている。

 「物作りの楽しさを味わい、働く意欲を取り戻して心身ともに健康になってもらおう」と、市立総合病院の医師有志が市内の工務店や塗装業者らに協力を依頼した。4月現在、55~80歳の男性6人と33~53歳の女性3人が参加。趣味ではなく、買ってもらえる本気の製品作りを目指す。

 第1弾のテーブル4脚は市内の区役所にできた市民向けカフェに納入した。震災後に改修した映画館の前に飾る、寄付者の名前を書いた札の受注も決まった。

 参加者のリーダー格、 横山邦彦 (よこやま・くにひこ) さん(70)は借り上げ住宅で妻と2人暮らし。「何もなければ私も引きこもってしまうタイプ。作りながら互いに絆が生まれるのを感じます。仲間を増やしていきたい」と笑顔で手応えを話す。

 地震、津波、東京電力福島第1原発事故と、南相馬市は三重のダメージを受けた。原発30キロ圏で国から避難や屋内退避の指示が出たことから、人口約7万1500人のうち一時約6万1千人が市外へ。現在は4万8千人まで戻ったが、放射能への不安や、差別・偏見混じりの外部からの視線に「心身ともに疲れ果てた」とこぼす市民は多い。

 若い世代は遠方に避難を続け、市の高齢化率(65歳以上の人口割合)は震災前の26%から33%に上がった。巡回診療では高血圧、糖尿など生活習慣病の悪化やアルコール依存が目立ち、医師たちは「高齢化が進む日本の20年後そのものだ」と感じている。高齢者の健康を維持し、若い世代が市に戻って働ける策を充実させないと、復興どころか医療も介護も崩壊してしまうと危機感を募らせる。

 ホープの代表を務める南相馬市立総合病院の 鈴木良平 (すずき・りょうへい) 医師(61)は「まずは引きこもる男性を一人でも引っ張り出して、孤独死や自殺を防ぎたい。やれることは何でもやる」と話している。(共同=高橋宏一郎)

(共同通信)

2013/04/30 12:40

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