| 岩手県の遊技業者は連日、炊き出しを行い、被災者を喜ばせた
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パチンコホールや飲食店などが津波で全壊や営業不能に陥るなど、東日本大震災は同胞経済にも甚大な被害をもたらした。中でも投下資本が大きく、同胞経済の基幹ともいうべき遊技業の打撃は深刻だ。営業可能なホールでも、福島原発事故による電力供給能力の低下にともない、ネオンの終日消灯や営業時間の短縮などの自粛を申し合わせている。夏場に向かって計画停電の実施は避けられず、営業に対する逆風はさらに強まりそうだ。それでも被災地の同胞業者は、自身が被災者であるにもかかわらず、地域を元気づけようと奮闘している。 ◆癒し・活力 今こそ…物資提供、炊き出し、出玉サービス… 岩手県の公楽グループ(李太炯会長)は、1店舗が津波のため床上浸水の被害を受けたが、震災2週間後の3月26日から営業を再開。来店客は以前よりも少ないものの、「震災地の人々から喜ばれている」という。節電対策として10時から21時までの営業だ。 宮古市は同グループ発祥(51年前)の地であることから、「少しでも被災者の力になれれば」と考え、いち早く小学校の避難所にティッシュやミルク、ミネラルウォーターなどの日用品を差し入れた。さらに、トン汁やバーベキュー、カレーライスなどの炊き出しを実施。多い時で300食を数え、社員が交代しながら担当した。 宮城県の百反(金政郁社長)は、パチンコ店10店のうち、塩釜店が津波のために全壊した。残りのうち6店が3月23日、2店が26日に再開し、被害の大きい1店がまもなく再開にこぎつける。 地震直後、「被災者のために、何か励ますことができれば」と思い、食品や生活用品などの在庫品を安く提供した。金社長は「被災者はどこかに安らぎの空間を求めている。暖をとりに来たり、時間つぶしに来たりする人が多い。これから本格的な復興作業の段階に入れば、さらに大変な現実にぶつかっていく。少しでも元気が出るよう手助けしたい」と話す。 郡山市内にパチンコ店8店舗を展開するアラジングループ(成鍾太社長)は、全店舗で被害を受けた。全壊した2店舗を除き、6店が3月27日にオープン。被害額はざっと10億円と見込む。 成社長は「それなりにお客が来店してくれたのでひと安心。こういう大変な時こそ、癒しの空間が必要であることを実感した。いつよりも出玉を多くしてサービスに努めている」と述べた。 福島県のつばめグループ(禹日生社長)は、立ち入り禁止区域の福島第一原発周辺や、津波の被害が甚大な浜通り地区の店舗は手つかずの状態。比較的被害の少ない会津若松店が震災後2日目でオープンしたのをはじめ、内陸部から順次オープンさせている。 禹社長は「今は売り上げなど関係ない。開店さえできればいい。原発問題で不安要因はあるものの、いずれ落ち着けば、以前にも増して多くのお客様に楽しんでいただけるよう頑張りたい」と気丈だ。 茨城で5店を営む金嶋観光グループ(金昭夫会長)は、2店が一時営業不能になったものの、3月31日にはオープンにこぎつけた。4店舗は15日から、玉1個(貸球1個4円)でタマゴ10個入りパック1つ、あるいは辛ラーメン5つを提供、大いに喜ばれたという。 金会長は自ら指揮し、13日から東京都などでトラック数台分の物資を調達、一般道を6時間かけて運んだ。「地域の皆さんあってこそのP店だ。事業面では大きな痛手を受けたが、ここは一番、少しでも地域のためにと歯を食いしばった。今後、何より大切なのは気合だ」と意気込む。 (2011.4.6 民団新聞) |