2012年8月14日(火)

有能な秘書が見抜く「信用してはいけない人」の特徴

PRESIDENT 2012年7月16日号

著者
松下 信武 まつした・のぶたけ
ゾム代表取締役

1944年、大阪府生まれ。京都大学経済学部卒。日本電産サンキョー・スケート部メンタルコーチ。専門は情動心理学。得意分野はエグゼクティブコーチング、人材育成の仕組みづくりなど。著書は『「凡人が一流になる「ねたみ力」』『メンタリング・ハンドブック』(共著)ほか。

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ゾム代表取締役 松下信武=文
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筆者の知人宅にAという人物がやってきた。Aは初対面であるにもかかわらず、そこの家の娘さんがお茶を持って現れたら、すかさず、その家の主人に向かって満面の笑みを浮かべ「すばらしいお嬢様ですね。私の息子の嫁にほしいくらいです」とやった。初めて会った娘さんが、ほんとうに嫁にふさわしいかどうかはわからない。事実無根で、臆面もなくホメている。この人は後日、たいへんな食わせ者ということがわかった。おおげさなホメ方をする人は、相手に気に入ってもらうために平気で嘘をつく人である。そのような人を信用できないのは当然である。

ただし、歯の浮くようなお世辞を言う人を信用する人もいる。典型的な例は、裸の王様になった経営者だ。だまされる側が天狗になっているか、現実を直視できなくなっているかである。歴史的にいえば、ロシアに攻め入る直前のナポレオンは天狗、豊臣秀吉の晩年は、現実が直視できなくなった例である。あなたの会社の経営者が、“ヨイショ”に弱くなっていたら、会社の将来は危ういと判断してよいだろう。

《やたらとニコニコする》

心理学者のエクマンとフリーセンは、笑顔は真意を隠すための偽装に多用されると言っている(注4)。笑うときの筋肉の動きはネガティブな感情を表現するときとはまるで違うから、ネガティブな感情を隠しやすい。初対面の人に「今後ともよろしくお願いします」と言いながら、ニコッと笑っても、相手の警戒心を呼び起こすことはない。笑顔は、状況を問わず気軽に使え、しかも相手によい印象を与えるので、本心を自然に隠すことができる。それゆえ、やたらとニコニコする人は要注意だ。私はこれまで無愛想なペテン師に会ったことはない。

次に、(3)の社会的コンテクストから判断する方法を分析してみよう。

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