2012年3月26日(月)

就活で、一番行ってはいけない会社とは

飯島 勲 「リーダーの掟」

PRESIDENT 2012年3月5日号

著者
飯島 勲 いいじま・いさお
小泉純一郎元総理大臣首席秘書官

飯島 勲

1945年、長野県辰野町生まれ。小泉純一郎元総理首席秘書官。現在、松本歯科大学特命教授。最新刊『リーダーの掟』プーチン絶賛でたちまち重版。

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小泉元総理秘書官 飯島勲 写真=PANA
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社員として採用する企業の側から見れば、「大学で何を学んだか」が学生を選ぶ判断基準にまったく入らないということになる。容姿と大学の偏差値だけで勝手に決めているのが現実だ。

私が客員教授として5年間見てきた経験からいうと、学生の意識や雰囲気が変わってくるのは4年生になってから。この状態を見ないで採用を決める現在の企業採用はやはりおかしい。

昔の採用は4年生が対象で、どの教授のゼミに入っていたかというのが、一つの採用基準になっていた。例えば、政府税制調査会会長を長く務めた慶応大学の加藤寛教授(現・嘉悦大学学長)のゼミにいた学生なら、大手都市銀行や証券会社は安心して採用することができたようだ。学生本人の能力が未知数であったとしても、教授の理論や、ゼミでの厳しい経験を通して「このゼミの学生なら、うちの会社に必要だ」と判断できる。最近の3年生は、就活を優先して、厳しいゼミに入らない。

当たり前のことだが、容姿に優れ、学歴の高い人間が、就職活動には有利だ。出世にも、異性へのPRにも有利だろう。しかし、彼らが挫折を味わっていないのも事実。あえて採用時期をずらし、就職活動に失敗した人間に光を当てれば、辛抱強く、困難に立ち向かう人材が獲得できるのではないか。

学生であっても、そこであきらめるのではなく、バカはバカなりに、ブスはブスなりの活路を拓く。考えてもみてほしい。出世には、仕事の力量よりもヨイショやゴマスリが勝ったりする。どんなに努力しても、どんなに手際よく仕事をしていても、上司から、正当な評価を受けることなどほとんどないのが現実だ。

そうであるならば、いまは零細企業だとしても10年、20年経ったときに大きく成長している組織で、自分が重要な位置を占めることができるかを見極めるのが大事だろう。

一番よくないのは、創業者であるカリスマ社長が経営している大企業だ。社長退陣後に、早晩傾く可能性が高い。いまは人気があっても、そのような企業は一生働くだけの価値はない。私が小泉純一郎事務所に入ろうとする前、名の知れた大物政治家や選挙基盤が盤石の政治家にも秘書の口があった。しかし、私は当時落選中だった若手の小泉純一郎事務所を選んだ。小泉氏の将来性と、同じ秘書をするなら事務所がゼロからスタートしているほうがいいと考えたからだ。

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