悪徳商法などの被害回復のために特定の消費者団体が被害者に代わって集団訴訟を起こせる特例法案が閣議決定された。待ち望まれた新たな制度だ。消費者を守る視点で国会審議を尽くしてほしい。
違法な契約で消費者が失った金銭を取り戻し、泣き寝入りさせない。「集団訴訟制度」の狙いはここにある。ゴルフ会員権の預かり金や入学前に前払いした授業料の返還トラブル、モニター料をあげるからと布団を買わせて約束を破るモニター商法など、被害は毎年七十万件に上る。消費者庁によると、六割以上が事業者に交渉しても一円も返してもらえない。被害の半数は十万円未満、個人で訴えるには裁判費用や労力が見合わず、訴訟を起こす人は少数派だ。
この壁を乗り越えるため、新たな制度は首相が認定する消費者団体が被害者に代わって損害賠償訴訟を起こす。類似の被害をまとめて救済できるよう、被害者は団体が勝訴した後に参加し、簡単な手続きで賠償金を受け取れる。
だが、経団連などの経済団体は「訴訟が乱発されると、健全な企業活動までが萎縮し、経済再生に悪影響を及ぼしかねない」と反発している。おかしな意見だ。企業の収益のために消費者は被害を我慢すべきだというのだろうか。
訴訟を起こせる消費者団体は不当な勧誘の差し止め請求などで実績のある非営利のNPO法人などだ。政府の審査や監督も受け、違反の場合は認定取り消しもある。敗訴すれば裁判費用も自腹になるのだから、訴える根拠のない裁判を乱発するなど考えにくい。
集団訴訟制度は欧米で導入されているが、日本の場合はかなり限定的だ。企業は賠償金が増えるのを心配するのだろうが、訴訟にできるのは金銭被害だけで、敗訴して支払いを命じられるのは商品の値段までだ。慰謝料や逸失利益、製品事故や食中毒など人身に及ぶ被害の賠償は含まれない。これらは別に通常の民事訴訟で解決を図ることになる。
法案は救済対象を法施行後の被害とした。そのような抑制的な制度でいいのか。悪質なケースには遡(さかのぼ)って適応できるようにならないのか議論してほしい。
まともな企業活動なら訴えられる心配はいらない。経済界にとってはここまで被害を広げた違法な契約に対し、どんな手を打ってきたのかを見直す機会になる。それが消費者との信頼回復や経済活性化にもつながるはずだ。
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