「アリーナ」でプレイヤーを待ち受ける、ランカーAC。プレイヤーが数々の想いを胸に秘めながら「アリーナ」に参加するように、ライバルであるランカーACにも、戦いに身を投じる事情がある。「アリーナ」では、銃弾を通して戦士たちの小さな物語が咲いては散っていくのである。
 ここでは、『アーマード・コア ナインブレイカー』の世界を彩る、ランカーACを紹介していく。
 




 アリーナに十数年以上君臨し続ける“女帝”イツァム・ナー。数多くのレイヴンを退け、絶えず勝利を重ねてきた。その圧倒的な強さは、レイヴンズアークが「今後、彼女以上のレイヴンは現れないだろう」と考えるほど。そして一部の連中は彼女をアリーナの象徴としてビジネスにつなげようと画策しているが、彼女は歯牙にもかけていない。
 なぜ、彼女は強いのか。その秘密を探ろうと過去多くのレイヴンがAC「プロトエグゾス」を研究してきた。だが全身に良質なパーツを使っているものの、それ以外に目だった違いは見当たらない。そのため、そのACを真似てみても、彼女の強さに触れることはできなかった。彼女と対峙したわずかな者のみが、彼女の強さの秘密の一端をうかがう事ができるのである。


 上空からの攻撃と「WH10M-SILKY」の連射を支える緻密なエネルギー管理、移動しながらの捕捉能力、すべての敵攻撃への的確な判断。それら、一人前のレイヴンであれば、誰もが備えている技術を、さらに数段高いレベルで実行し続ける彼女の戦闘技術は、戦った者にしか実感できない。その「基礎」の強さは、対峙したレイヴンにAC戦闘の奥深さを改めて教えるよう。そして、この巨大な人型兵器へ畏れすら抱かせるほどだ。
 だが、彼女がアリーナに君臨し続けるのはAC戦闘の奥深さを教えるためでも、観客のためでもない。彼女が見据えるのはただ1機。かつて彼女を破った、真紅のACだけである。



 その戦闘で彼女は敗北を喫してしまう。しかし、新たに1位となるべきレイヴンは、その後行方不明に。だが、いつか再び出会うことを願い、トップコンディションを保ち続けたまま待っているのである。この最強の実力と、決して奢ることのない精神に、隙はない。だが、彼女へ挑戦できる者も全レイヴンのほんの一握り。ここまでアリーナを勝ち上がってくる間に身につけた、総合的な力を発揮して、「ナインブレイカー」の称号を争う最強のライバルに勝機を見出すしかない。





 アリーナは実戦同様の機体を使うとはいえ、あくまでも競技である。激しさはあっても、命を奪い合う場ではない。だが長年アリーナのトップクラスに在位し続け、一種の緊張やスリルといった感覚に麻痺してしまう人種がいる。
 そんな“アウトロー”のランカーACの中でも、リュミエールやポーコ・ア・ポーコ以上に特異なのが、ランキング2位のウォーロードだ。彼も元は重量級の攻撃力とタイミングの良いオーバードブーストを活かして戦う、一般的なランカーだった。しかしランクが伸び悩みつつも、アリーナでの戦闘を続ける内に、次第にリミッターが外れたかのように彼の性格と戦闘スタイルは変貌していく。


 元々荒っぽいところのあるウォーロードだったが、戦闘を重ねるうちに、その神経が一層研ぎ澄まされ、更なるスリルと快感にのめり込み始める。数ヶ月を経て、彼は対峙するだけで相手を圧倒するほどの雰囲気を纏うようになっていた。
 戦場に漂う異様さとは別の、狂気とも言える雰囲気を持つウォーロード。機動力を捨て、耐久力を重視した彼のAC「ゴライアス」に、その一端が表れている。
 多くのレイヴンは、相手の攻撃を回避することを念頭に置く。しかし彼は、受け止めるのだ。もちろん、急所に受けるようなことはしないが、積極的に避けることもしない。そして、対戦者の攻撃をある程度見極めたところで、通常の機体では決して受け止めることのできない火力で撃ち返してくるのである。そのため、一部の関係者から「アリーナで最も危険な存在」と呼ばれている。


 長年2位に居座り続けるだけあって、さすがに彼のAC「ゴライアス」の武装は強力。肩部から強力なエネルギー弾が、腕からは正確無比のバズーカが発射され、正面から攻撃を受けて勝ち残ることはどのようなACであろうと不可能だろう。またタンクタイプにもかかわらず、機を見てオーバードブーストを使うため、回避性能も悪くない。過去、このACに土をつけた者はイツァム・ナーを含め若干名。弱点の見当たらないこの難敵を打ち破るためには、高機動で敵の強力な攻撃を確実に回避しつつ、わずかな隙にダメージを与え続けるしかないだろう。





 レイヴンとは因果な商売である。また、その活動内容ゆえ、レイヴン同士に因縁が生まれることも少なくない。たとえ、それまでパートナーを組んだ仲間であっても。そして、そこから死闘が発生することも特に珍しくはなかった。
 ここに、コンビを組んで任務を遂行する2人のレイヴンがいた。彼らは「連星」と呼称され、あらゆるミッションを成功させてきた。しかしいつしか、補佐役のレイヴンがある野望を抱き始める。「今の地位を、俺ひとりで独占できたら……?」だが、パートナーであるB・ビリーの抜群の腕前を誰よりも知っているのは彼。多少の被弾など打ち消してしまうほどの絶大な威力を持ったB・ビリーの空中爆撃に耐えることは難しい。しかし、それでも一度芽生えた誘惑に勝つことはできなかった。ついに、独立を宣言してしまうのである。


 相棒の突然の離反に驚く間もなく、アリーナでの試合が始まった。歴史に残るであろうドッグファイトを期待した観客たちを裏切り、それ以上の驚きを与えて勝利したのは、あまり表舞台には出てこなかった「載星」。ACの常識を越えたスピードとテクニックによる砲撃は、観客ですら恐怖を抱いてしまうほどであった。また、当時の3位ランカーを再起不能にしたことで、載星は一気にトップランク入りを果たしたのだった。
 だが、その後は彼に関する話は徐々に途絶えてしまう。野心に満ちていた瞳は、感情が乏しくなり、彼はオフィシャルバトル以外にはほとんど姿を現さない、幻のレイヴンとなっていった。噂によると彼の部屋からはいつも悪夢にうなされる声が聞こえるという。そして稀にアリーナに姿を現しては、弾丸の雨で対戦相手にも恐怖の悪夢を植えつけていくのである。



 精神的に不安定な一面を見せる「載星」だが、対戦したときの実力は、やはり並のレイヴンの比ではない。他のレイヴン同様にロックする間もなく、敗れることもあるかもしれない。空中の敵へのロックの腕を磨き、一定の間合いを保ち続けるスピードが不可欠だろう。だが何よりも必要なのは、以前の彼のような手段を選ばないほどの、勝利への執念かもしれない。





 レイヴンの中には、愛機のカスタマイズを考える時間を“至高”と感じる者がいるらしい。自らの操縦感覚、予算、次に挑む対戦相手の状況、そして嗜好。あらゆる要素を考慮して、自分好みの機体を組み上げていく。そんなレイヴン達の間でも特に機体そのものに高い評価を得ているのが「丁」である。
 彼が駆るAC「葉隠」は、積んでいる武器パーツはたったふたつと、この上なくシンプル。また、機動力を念頭に置いた無駄のない機体。つまり、スピードで翻弄して特定の武器で的確に攻撃を当てていく戦いとなる。しかし、これではあまりにも特徴がない。では、この機体でどうやってトップランクにまで登りつめたのだろうか。


 大破壊以前のさらに遠い過去、古代に「忍」と呼ばれた闇の者達がいる。彼らは幼いころから前時代的かつ超人的な特訓を受け続けたため、恐るべき動体視力と反射神経を備えている。もちろん、こうした人材はすべて過去のもの。彼らの一族が現在も活動をしているかどうかは不明である。しかし「丁」の身のこなしから、「彼には同様の能力が備わっているのではないか」との噂が流れている。
 AC「葉隠」は超高機動での戦闘を前提として構成されている。近接状態での撃ち合いなら部類の強さを誇る両手の「CR-WA69MG」。そして、中長距離で威力を発揮するレールガン「WB24RG-LADON2」。どちらも高速移動中に効果的に使用することは、難しい。それこそ、常人離れの動体視力と反射神経を持っていなければならないほどに。


 「自らの特性を知り、それらを最大限以上に使いこなすためのパーツ構成」。彼の人気はそのシンプルさゆえの美しさもさることながら、彼の持つ“AC観”に同じ立場のレイヴンたちだけが理解できる何かがあるからだろう。だが感心するだけでは、彼を乗り越えることは到底不可能。彼のようにたったひとつのスタイルを磨き、その戦場に敵を巻き込むだけの技術を身に付けなければ、彼に、そしてその先へ挑戦する資格はない。





 長い歴史を持つアリーナには、圧倒的な破壊力を持ったACやどんな弾丸も被弾しないACなど、複数の“伝説”が残されている。しかし、この“伝説”は観客に強い印象を残したレイヴンにのみ与えられる、いわば一時代を築いたという証。勝利を収めたからといって簡単に認められるわけではない。そのため数年前に登場した赤いAC以降、“伝説”となったACは現れなかった。
 しかしついに、観客を満足させるレイヴンが姿を見せた。彼の名は「ミューズ」。レーザー、ショットガン、ミサイルといった多彩な武装による上空からの攻撃を得意とするレイヴンだ。そして、彼に付けられた通り名は「ウェポンマスター」。アリーナランキングの上昇に伴い、レイヴンズアークから贈られるパーツを必ず1度は使用しているためである。


 レイヴンズアークから渡されるパーツの中には、市場に出回ることの少ない逸品も含まれている。特に上位入賞者のみに与えられるものは、好事家の間で途方もない額で売買されるケースもある。しかし、希少なパーツがすべて高性能だとは限らず、さらに機体によっては使いどころが難しい場合もある。それでもミューズは、あえて入手したパーツを試してきた。その姿勢を観客が認めたのだ。
 そしてあらゆるパーツを使用するうちに、彼のAC「テルプシコレ」はアリーナでどんな相手とも対等以上に戦えるバランスの取れた機体に仕上がっていく。特に武装は遠方から小型ミサイル「WB01M-NYMPHE」やレーザーライフル「WR05L-SHADE」といった確実にダメージを奪うもの、接近しては一撃必殺の「WB34M-ECHIDNA2」と全距離に対応。相性という要素が大きいアリーナだが、誰と対戦しても善戦以上の結果を残すミューズこそ、イツァム・ナーの跡を継ぐのではないか、と推す向きも多い。



 対戦と経験を重ね、落ち着いた試合運びでランキング上位に位置するミューズ。しかしさらに上位には、イツァム・ナーをはじめとする強敵がひしめいている。さしもの「ウェポンマスター」も、彼らにはてこずっているようだ。
 ミューズとの対戦では、連射の利かない攻撃をスピードに乗って回避し、その隙に着実にダメージを当てるのが有効。パーツの収集は、しばらく諦めてもらうことにしよう。


 
 

(C)1997-2004 FromSoftware,Inc. All rights reserved.