金曜日のギモン、今回のテーマは「奨学金」です。
経済的な理由などから奨学金を受け取ったものの卒業後に返済できない人が増えています。
滞納者は今や33万人。なぜこんな事態になってしまったのか?
ギモン調査しました。
【オペレーター】「はい、日本学生支援機構返還相談センター」
ここは東京にある奨学金の返還相談センター。
毎日3000件もの相談が寄せられます。
【オペレーター】
「毎月返還いただくのが基本的な金額です。滞納になった場合は最低でもその金額を払っていかないと滞納は解消しないですし」
『自分の返済残額はいくらなのか』
『収入が減ったので返済を猶予してほしい』
そんな相談がひっきりなしです。
おととし、国の奨学金の返済を滞納した人はなんと33万人、滞納額は876億円にも上ります。
「スペシャルステーキヒレワンです。ヒレは150グラムです」
私立大学に通う新山拓矢さん(23)。
いまは大学を休学し、朝から深夜まで飲食店の厨房でアルバイトをしています。
(ラップに包まれたご飯)
【職場の人】「新山くん、置いとくね〜」
【新山拓矢さん】「ありがとうございます」
晩御飯もバイト先の余りものに頼る毎日です。
【新山拓矢さん】
「就職活動あんまりできてなくて、その理由がアルバイトしないと生活ができない。帰ってきたら就職活動のエントリーシートとか書いてって感じですね。時間は…足りないです」
幼いころに両親を病気でなくした新山さん。
祖父母も他界していて高校1年生の時から奨学金で学費を賄ってきました。
大学生の時に借りた国の奨学金には利子がついています。
【新山拓矢さん】
「利子だけだと200万くらい。(返済総額は)1100万くらい。就職してから地道に返すしかないかなと。それしかないので」
返済総額がなんと1100万円!?
このように重い足かせになる奨学金。
ほかの大学生に聞いてみると…
【大学4年生 男性(21)】
「月8万ですね。不安ありますね。(返済で)月2万以上払うってなってるんで。(返済期間は)20年ぐらいですかね。ちょっと厳しいですね」
【大学4年生 女性(21)】
「私的にはすごくプレッシャー感じてます。奨学金返済義務っていうのに。給与をみて、家賃や返済金額を考えながら就職活動してますね。」
【大学2年生 男性(19)】
「家計がそんなに、母子家庭であんまり裕福じゃなかったんで(奨学金を)借りて学費に使っている感じです。通えているのも借りてるから」
奨学金制度を利用している大学生が増えています。
日本学生支援機構によると、いまや大学生の2人に1人が奨学金を利用しているのだそうです。
大学の学費は昔と比べて高くなっています。
入学初年度の私立の学費は年間130万円ほど、国立でも80万円以上と30年前の2倍以上の金額です。奨学金を借りないといけない学生が多いのも納得です。
社会に出る前から経済的に大きな負担を負うことも多い日本の奨学金制度。
これって当たり前?教育制度に詳しい専門家に聞いてみました。
【中京大学国際教養学部 大内裕和 教授】
「授業料が有料で、給付型の奨学金がない国はOECD諸国(経済協力開発機構)の中で日本だけです。だから最悪なんです。いままでのように貸しておいて卒業後は必ず返せるという制度自身がバブル崩壊までは若年失業がほとんどなくて、ほぼ新卒で仕事につけて順調に給料上がってた時代の産物だということは明らか。ですから、制度自身を見直す必要がでてきたと思います」
OECDの加盟国を見てみるとアメリカやフランス、日本など34カ国中33カ国に奨学金制度があります。
ただし日本の奨学金以外は基本的に返済する必要がない給付型です。
アイスランドには奨学金制度がありませんが国立大学の授業料が無料です。
ところが日本では国が運営する奨学金は卒業後に返さなくてはならない貸与型のみです。国の財源で運営される「第1種奨学金」に利子はありませんが、採用枠が少なく、厳しい審査基準があります。
一方、国が民間の金融機関などから借りたお金を財源とする「第2種奨学金」は採用枠が多く、利用者の7割が利用していますが、利子がつきます。
【大阪府の33歳の男性】「大学行かんかったらよかったな」
大阪府に住む労働組合職員の男性は大学時代の4年間、毎月8万円の奨学金を受けました。利子を含めた返済額はおよそ450万円。
33歳になった今も返済が終わるのはまだまだ先と話します。
【大阪府の33歳の男性】
「利息分を返し終わったのは多分…30歳入ってからやと思うんですよ。いまどれくらいやろと思って(確認したときに)まだ利子分しか返せていない、元金に届いてなかったのかと気が遠くなった」
先月、弁護士などを中心とした「奨学金問題対策全国会議」が発足しました。
【岩重佳治弁護士】
「わたしたちは当事者の声をすくいあげていかないといけない。(奨学金の問題は)金融問題なんですね。長年多重債務の問題やってきたんですけど、ピンときたんです。私たちの嗅覚にぷーんときたわけです。お金のにおいがする。貧困ビジネスだと。その問題を取り上げていかないとこの問題は解決しない」
会場には返済に苦しむ社会人や学生が集まりました。
就職難、そして非正規雇用の増加…現在の社会事情が不安を増幅させます。
全国で進学を控えた高校生や親から奨学金の相談を受けているアドバイザーは借りる前に返済のリスクを十分に考えてほしいと訴えます。
【奨学金なるほど相談所 久米忠史 代表】
「住宅ローンとか自動車ローンであれば借金して買っても返済が厳しくなったらそれを売却して債務を軽減することができますけど、奨学金はそれができないんですよね。自分が卒業したら月々いくら返さなくてはいけないということを肝に銘じて(在学中から)資格をとるなり、就職に向けて学校生活を送るということが重要」
奨学金の返済総額が1000万円以上になっている新山さん。
大学の卒業論文のテーマは『こどもの貧困について』です。
将来の夢は家庭環境などで貧困にあえぐこどもたちの声を多くの人に伝えられるジャーナリストになることです。
【新山拓矢さん】
「社会に出ることへのワクワク感はありますけど、社会に出たあとのお金のことに関しては不安とかプレッシャーしかないです。お金がない子たちが安心して大学に行けて、将来、社会に出られるというのはそれは国としてあるべき姿なのかなと思います」
国は去年、家計が厳しい学生については卒業後に本人が年収300万円以上の収入を得られるようになるまで、奨学金の返済を無期限に猶予する制度を新しく設けました。
しかし国の財源で運営される無利子の奨学金だけが対象で利用者が多く、より負担の大きい有利子の奨学金に関しては救済が進んでいないのが現状です。
学生が学ぶのをサポートするはずの奨学金。
それが今、若者の将来をしめつけています。