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臨時増刊号 掲載記事
ラムニエ(右)は米国マイアミ生まれでヨルダン大学を経て、現在代表の主将を務めている。
photograph by Getty Images
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失格処分から立ち上がった、
ヒジャブを巻いた“なでしこ”。
~女子サッカーで戦うイスラム教徒~

矢内由美子 = 文

text by Yumiko Yanai

photograph by Getty Images

「詳しく話してもいいかしら?」

 それまでゆったりとしたリズムで話していた彼女の口調が、にわかに毅然としたものになった。

 リーマ・ラムニエ、29歳。サッカー女子ヨルダン代表GKである彼女は、知性と姉御肌でチームをまとめる主将であり、イスラム教徒(ムスリム)である。

 '11年6月3日、ヨルダンのアンマンで行なわれたロンドン五輪女子アジア予選。ムスリム女性が髪を覆うためのヒジャブを巻くことは違反だとしてイランが失格になった際、対戦国のヨルダンの中にも、同じ理由で失格とされた選手が3人いた。ラムニエはその一人だった。

「すごいショックでした。ムスリム女性にとって公の場でヒジャブをつけないことは信仰上、受け入れられません。イランは選手全員が泣いていたし、ヨルダンもヒジャブを着けている着けていないにかかわらず皆泣いていました。9歳からサッカーをやってきた私としては、人生で一番大事にしてきたサッカーをすることをFIFA(国際サッカー連盟)からダメと言われたことがショックで……」

ラムニエの訴えは、ビジャブ禁止の規定を撤廃へとつながった。

 FIFAは安全上の理由でヒジャブを禁止すると'07年に決めていた。ところがアジアサッカー連盟の地域では禁止されていないため、認識の違いが各所で問題になっていた。そうした流れの中でFIFAから下された失格処分だった。

 悲嘆に暮れたラムニエだが、ただ泣いているばかりではなかった。すぐさまフェイスブックに「LET US PLAY」というページを立ち上げると、世界中から6万8000もの「いいね!」をもらった。残念ながらそのページは何者かにハッキングされて休止を余儀なくされたが、彼女が発信した「ムスリム女性にサッカーをするチャンスを与えてほしい」との訴えは多くの人々の心をとらえ、'12年7月、国際サッカー評議会はヒジャブ禁止の規定を撤廃した。

 ラムニエの次の目標は'15年にカナダで行なわれる女子W杯に出ることだ。そのためには'14年女子アジア杯に出て上位5カ国に与えられる女子W杯出場権を手に入れなければならない。

「失格は辛かったけど、そこで負けるわけにはいかなかった」

 ヒジャブを巻いたなでしこが世界で活躍する日を心待ちにしたい。

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