動物園の人気が復活しつつある。同協会によると、2009年度の来園者総数は前年比4%増の4336万人で00年度の水準まで戻した。大人も引き付ける最近の動物園の魅力とその背景を探る。 |
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ホッキョクグマの「背泳ぎ」を下から見上げる(静岡市の日本平動物園)
厚さ3センチのガラスを隔てて、飛びかからんばかりに迫るライオン。携帯電話のカメラに向かってくる。その迫力に客は大興奮。家族4人で来園した渡辺心さん(39)は2人の娘が喜ぶ様子に目を細め、「以前はあまり動物園に来なかったけれど、こんなに楽しいならまた来たいですね」。
頭上を見上げるとホッキョクグマが泳ぐ。厚さ10センチのガラスの壁面をけった瞬間、大きな足の裏が客の目の前に現れる。「うわー、肉球だ」。子供たちの声が上がる。
日本平動物園(静岡市)は3月、肉食動物を集めた新展示施設「猛獣館299」を開設。来園者は前年の2倍になった。
大きな音を立ててガラスを叩くライオン。間近に迫る姿に歓声が上がる(静岡市の日本平動物園)
動物本来の生態を見せる行動展示を打ち出した旭山動物園(北海道旭川市)に続けとばかりに、「各地で展示施設の再整備が進んでいる」(日本動物園水族館協会)。
今春、伊豆アニマルキングダム(静岡県東伊豆町)は食事をしながらホワイトタイガーを眺められるレストラン、とべ動物園(愛媛県砥部町)ではペンギンを間近で見られる施設を造った。福岡市動物園は来春、ゾウの運動場を設ける。
自治体の財政難が叫ばれる中、公立動物園でも「来園客が増えた例が目立つようになり、議会の理解が得やすくなった」(西日本の動物園)事情もあるようだ。新施設は遠巻きに眺めるのではなく、ガラスを多用して来園者と動物との距離を縮める。動物の思わぬ表情やしぐさの発見が来園客の心をつかむ。
日本生産性本部の柳田尚也主任研究員は「動物園ブームは一過性ではなく、大人も楽しめるレジャーとして定着してきた」とみる。
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