■3月12日
「もう、いいから早く『とんび』にしてくれ」。オランダを相手に、日本がこれでもかとばかり大量点を取った10日夜のWBC中継(TBS系)を見ながら、そう思った人も多いだろう。七回コールドでようやく終わり、内野聖陽の好演で人気のドラマ『とんび』(第9回)が始まったのが午後10時15分だった。
死闘を演じた8日の台湾戦の視聴率30・3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を上回る34・4%。一方的で緊迫感もない試合にしては意外で、『とんび』待ちが占める割合も多かったのではと推察する。何を隠そう小欄もその口で、予定より45分も遅れた『とんび』の視聴率も18・3%と高かった。
それはそうとして、6本塁打を含む先発全員17安打とは打ちも打ったり。点差が開いた後の本塁打でもガッツポーズする選手もいた。折も折、WBCのカナダ-メキシコでは九回6点差をつけたカナダの先頭打者のバント安打に、怒ったメキシコの投手が次打者に内角攻めの後、背中にぶつけ大乱闘になった。
大量リードでの盗塁やバントなど海の向こうでは御法度。高校野球精神の延長で大量リードでも点を取りにいくのは日本流だ。「向こうは敗者をいたわる精神が受け継がれている。ホームランを打たれた投手はその瞬間死者に等しく、日本流ガッツポーズは死者にむち打つことになる」とサンケイスポーツ専属評論家・江本孟紀氏は指摘する。
敗者をいたわる「騎士道」があちらの野球の根本なら、侍ジャパンもどっしりと「武士道」で対抗したらどうか。次は12日夜のキューバ戦。米国行きにうかれ、視聴率でとんびに油揚げをさらわれぬよう、質の高い試合を見せてもらいたい。(今村忠)
(紙面から)