日露首脳会談:極東開発「両国に利益」強調 共同声明
毎日新聞 2013年04月29日 23時45分(最終更新 04月30日 09時58分)
日露首脳会談の共同声明は、極東・東シベリア開発など経済分野で協力関係を深化させる姿勢を打ち出した。同地域の開発に日本の協力を取り付けたいロシアに対し、日本は北方領土問題を前進させる環境整備として経済協力を位置づける。ロシアの天然資源や成長力を、安倍政権の成長戦略に取り込む思惑もある。【松倉佑輔、西浦久雄】
「(日露は)ウィンウィンの関係になっていく」。安倍晋三首相は首脳会談後の記者会見で、ロシアとの経済関係強化は両国に実益をもたらすとの考えを強調した。首相の訪露には、経団連日本ロシア経済委員長を務める岡素之・住友商事相談役ら約120人の企業関係者が同行。共同声明では、エネルギーや農業、医療、インフラなど幅広い分野で、ロシアの資源と日本の技術を活用し、ともに利益を得られるような官民共同の事業を打ち出した。
中でも日本の経済界が期待するのは、ロシア産液化天然ガス(LNG)の輸入拡大だ。ロシアは欧州向けガス輸出が低迷し、アジアへの供給を増やしたい。米国から割安なシェールガスの輸入を計画している日本は、調達先を多様化して価格交渉力を高め、割高な輸入価格を引き下げるシナリオを描く。
当面は、ロシア国営ガス会社「ガスプロム」と伊藤忠商事などが計画しているウラジオストクLNG基地からの輸出案件などが焦点となりそう。日本は、米国のシェールガス対日輸出許可の動向もにらみつつ、ロシアからの調達規模や価格などの交渉を本格化する。
インフラや医療技術・機器などでの協力拡大も盛り込んだ。ロシアは、膨大な天然資源がある極東・東シベリアの人口減少などに直面。経済を活性化させて同地域の安定化を図ろうとしている。ガスや石油だけでなく、森林や耕作地の活用も課題だ。北海道銀行は、極東アムール州との農業協力で合意。農業経営者の交流を進め、広大な耕作地を持つ同州の農業の生産性向上などを手がける方向だ。
都市環境整備や先端医療は日本の得意分野で、安倍政権の成長戦略の柱の一つでもある。日本企業のロシア進出を支援しようと、政府系金融機関の国際協力銀行(JBIC)とロシア開発対外経済銀行(VEB)などは共同で、日本企業が参加する事業に投融資を行う「日露投資プラットフォーム」を設立する。