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あずです。

たくさんのご意見ありがとうございました。初めての方からも一言をもらえたりして感無量でした。違和感、感じた方はいらっしゃったと思います。
それが私の意図かそれ以外の部分だったか、戦々恐々です。

ではどうぞ^^
一章 ツィーゲ立志編
森鬼の村で
森鬼の村はアンブロシアの群生していた森とは別の場所にあった。

彼らは本当に善意、というか彼ら独特の使命感からアンブロシアを守ろうと定期的に人を派遣していた。

それなりにツィーゲから近い場所に存在していたが、これまでにヒューマンと積極的に争ったことは無いらしく、あの場所に極端に近づかない限り戦闘に至ることは無かったらしい。

戦闘になっても姿を確認されることなく追い返したり全滅させたりしていたので森鬼の集落の存在自体がツィーゲには知られていないんだとか。

最近弱まってきた結界のおかげで戦闘の機会が増えたらしいけど、全部撃退できているならこのままでも良くない?

行方不明になっている皆様は大部分が彼らに狩られたとみるのが妥当というわけだ。

一部は別の魔物に襲われて……結果は同じ。

なにそれ怖い。森鬼ってレア種族?しかも存在を悟られてないってどこの暗殺者だよ。

村で話の出来る方と席を持つことが出来た僕は澪と二人で彼らの説得に当たって”いた”

そ、襲い掛かってきた特殊なABはさて置いて、彼らのトップは意外と話を聞いてくれたのだ。

流石に二人に先導させて村に到着した時は敵意の混じった視線を避けられなかったが、これは仕方ない。無力化してますよって見て判るように捕縛していたから。

ウズウズしていた聞きたかったこと、ずばりダークエルフって存在なのか聞いたらさらっと違うといわれた。褐色の肌、赤い瞳、落ち着いた白髪。耳は短くてもエルフだと思ったのにな、華奢だし。短耳種とかいるかもって思っても無理はあるまい。。

エルフでもないのにどこぞのハイエルフさんと同じような服を着こなすとは侮れん。今度機会があれば是非青く染めた皮鎧でもプレゼントしようか。

「ダークエルフは森を守る性格を持ちません。森に住むエルフにしても彼らは精霊の力を森に求め共存する者。中には湖や海、山に住む一族もあると聞きますな」

森鬼さんの長老の1人が答えてくれた。

となるとダークエルフっていうと、洞窟とかに篭ってる連中なのかな。ダークというか穴倉エルフ?…クールなイメージが消し飛ぶ名前になるな。

「……ダークエルフというのは魔術の探求に走り精霊の加護を捨てた一族を指す言葉ですわ」

意外な所から解説が。澪だ。

へぇ澪から何かを教わるなんて初めてかも。

ダークエルフだから澪とも関わりがあるかもと思ったけど、魔術の探求云々だと期待薄だ。

「我ら森鬼は森を守る者。精霊とは関係なく森を管理し恵みを受け、広げる者。森守もりもりとも呼ばれている。なぜ貴方が森鬼という我らの正確な種族の名を知っているのかわからないが」

わからないが、と言いながら語りかけてくる別の長老さんは明らかに答えを求めていた。しかし、森守ね。最強剣士が待望したレーザーぶっ放すゴーレムじゃなくて本当に良かった。そっちだったら今頃僕が死んでるかも。

巴が教えてくれたって話しても大丈夫かね。あいつがどうして知っているかまではわからないけど、その時は巴を連れてくれば済むか。別に僕が考えなくてもいいや。

「上位竜種の蜃を知っていますか?縁あって彼女から貴方たちの存在を聞いたのです」

『!』

蜃の名は知っているようだ。動揺と驚きが僕らの囲む円卓から周囲へと伝達していくのがわかる。言っといて遅いけど、蜃って名前だして大丈夫かな。

「確かに、蜃様であれば我らの名前を知っていても不思議はございません。この果ての荒野において精霊の加護に依らぬ種族はあの方に少なからぬご恩がありますれば。ですがかの御方のお住まいは遥か南西。とてもヒューマンの貴方が到達できる場所ではありません。ヒューマンたちが絶野と名づけた拠点からでさえ、一月近い距離があるのです」

蜃様。面倒な予感。

「あー、それは話すと長くなるんですが」

というか正直面倒。略しちゃだめかな。でも巴のご恩ってのにも興味があるな。超長生きしてるせいか従者二人の能力や過去を僕は全部は把握できていないからな。

全部自己申告させると何日かかるかわからないから折を見て質問すれば問題ないとは思っている。

「結構。時間はございますとも」

長老さんは順番に話す決まりごとでもあるのかな。さっきから順番に順番に別々の人が話すんですけど。

やっぱ話すしかないのか。澪のことも話すか。災害チックなとこは伏せて。

こっちだと澪ってもう突発的な災害として扱われてるんだもん。撃退しても撃退しても世界のどっかに現れる防ぎようの無い存在。現象として扱われた吸血鬼かっての。

何だか最近、人よりも人外に事情を打ち明けることが多いなあ。……そういえば、ヒューマンには事情打ち明けた人いない。レンブラントさんともまだ商売以上の話はしてないや。

父さんと母さんの家が残ってるとしたらだけど、こっちに親戚もいることになるんだし、多分心から信じられる人はその内出来るさ。

「それでは…」

かいつまみながらオークとの交流やモンスター大発生による絶野の崩壊、蜃とのいざこざを説明していく僕。

この分だと、今日はここに一泊しないと駄目かなぁ。

はぁ。







~巴~

いやいや棚からぼた餅、とはこの事じゃ。

以前若に記憶の閲覧を禁じられて以来、我が悲願達成のため、色々と頑張ってやっと記憶についてはそれなりに見せてもらえるようになった。

時代劇の解禁の時に、若の世界の歴史関係も知れると思ったのだが、どうやら「てれび、どうが」というジャンルに固定された許可だったようで。

禁止されてしまっていたのだ。

これではせっかく”禁止されていない”記憶は見ても良いと許可を頂いたというのに意味が無い。

人に限らず知性ある生物にとって”許可したことを許す”のと”禁止していないことを許す”のは大分異なる。

若の世界には確か用語になっておったな、なんちゃらりすと、とかいう横文字であった。ま、儂にはさして関係無いな。

とにかく、前者と後者では後者の方が遥かに許可の範囲が大きい。若には何とか上手くこちらの許可を取り付けたんであるが。

刀やら稲作、その歴史や技術については時代劇だけでは今ひとつ要領を得ない部分が多いからな。

思案に暮れていた時に若が何かとはしゃいでいる様子が伝わってきた。

澪が色彩の無い危ない目をしていたり、よくわからないヒューマンが三人程逃げ回っていたりと面白い状況だったが襲撃者であろう二人組の特徴には覚えがあった。

確かアレは…数回の眠りの前じゃったが、乞われて結界を作ってやった奴らに似ておった。

確かあの者らの名前は…森鬼、そうじゃ、森鬼じゃ。

このような世から隔離された場所だからこそ変わらずに在れた希少種、いや古代種と言うべきか。

森に住みながら精霊と決別した旧きエルフの祖の一柱・・・・・・・・・・

完全に森と同化する道を選ぼうとする同族に反発して植物との対話能力を自ら捨てた、のだったな。

もっとも、古い話だ。儂から見てそうなのだ。彼ら自身は既に己のルーツを見失っておろうな。最早エルフと自分を違う種族と思っているかも知れぬ。

エルフにはまったく理解できない、ダークエルフ以上にわからない存在であろう。

だが、逆に若には意外と理解できるかもしれん。彼らの生き様は、若の世界でいう古来よりの樵の生き方。近代で言うのなら林業を営んでいるようなもの。

となると。

奴らには面白い選択肢が提示されることになるやもしれんな。

やらねばならんことは山積している状況だが面白いことなら話は別だ。当面の方向は決まり、やることは動き出しているからな。

刀鍛冶の映像や刀の構造はエルドワ(儂の言い出したドワーフどもの略称だが実に呼びやすくて良い)たちと会議を重ねて解析を続けている。若や澪の武具を仕立てている連中以外は参加させておる。

稲についても原種らしきものはいくつか発見できた。若の世界、若の国の主食だ。ご自身の世界に無い筈が無いとは思っていたが、やはりあった!

これはエマ始めハイランドオークに既に品質改良に着手させている。魔法あればこその周期を短くした実験は続いている。

成長の促進や環境状況の恒常的な設定、こんな魔法はこれまで聞いたことも無かったが若が提案した新たな概念でこれらは実現できた。

おそらく、大した提案をしたおつもりは無かろう。儂の分体と話を聞いていたリザード、オークが目を点にしていた様子を見て苦笑しておられたから。一体どうやったら錬金術の製薬風景からこんなことを思いつかれるのか理解が追いつかん。

我らの様子は異常な発案に対する驚きだが、若には呆れと受け取られてしまったらしい。

……事実上、あれは時間を操っているようなものだからな。驚きもする。時間属性の魔法は神の領域、だが生物の構造や仕組みを理解すれば似た結果を遥かに容易く、無理も無く得られた。

信じられない。カガクとは、素晴らしく、そして危険極まりない思想だ。魔術とカガクとは両立させてはいけないのかもしれないと話してくれた若の言葉に共感と畏怖を感じた。

澪と同じく、若が望むなら世界の望みなど知ったことではないから儂にそんなことを議論する資格は無いかもしれないが。

事実、今も世界全体からすれば危険なことを実行しようと考えておるからな。

森鬼の忘れられた能力の覚醒を。

女神や精霊は驚くであろうなぁ。能力を自覚していた頃の彼らであれば自制もしようが。

じゃが、荒野で過ごし存在の歴史も多くを損失した今の彼らであればどうであろうな。精霊と決別しているのだ、当然女神への信仰も無い。

そうじゃなあ。もし志を同じくするというのであれば、伊賀か甲賀の忍びとして仕えてもらうとするかの。

ぬふふふふ、血湧く血湧く。

若は無自覚に配役をどんどん埋めていってくれるのう!

最近どうも散漫というか集中力が欠けた、何か投やりな無思慮な行動をされることがあるが……娼館なぞ本来は絶対に行かぬ性質に捉えておったのにフラフラと向かわれたこともあった。

ちと、まずいかもしれぬな。あの方はまだ高だか十数年しか生きておられん。しかも女を知らん。一つの山があるやもしれぬと思っておくか。儂としてはどちらに転んでも良いが♪

だが面白い。本当に面白い。そんな状態でもああいった輩を引き寄せてしまうのじゃから。

儂はこんなにも快楽主義者だったかと驚くほど。最近の儂には楽しいことが多い。

何の価値も見出せなんだ人の世すら煌めく黄金の夢に映りおる。

では、厄介ごとに手をつけるとしようかの。

そう、亜空に引き込んだ新たな客人、ヒューマンの三人。儂はツィーゲで冒険者などしている身だからここは分体にやらせるべきか。

接待はいつもどおり、オークにリザード、アルケー、エルドワに任せて置けば問題ない。いや、そうだな共通語の巧みな温和なオーク、それにエルドワだけにするか。

リザードやアルケーと相対した時、パニックになって暴れられてしまうのも面倒だ。喚いていた内容一つとっても奴らは程度が低い。

さて、今度の客人は夢の中で何を思うのか。財を手にツィーゲに戻ったその心に宿るのは恭順か反発か欲望か。

……普段の若ならこの者らの招待はあるまい。それだけにどういった対応を取るか。

普段ない行動に、特別な結果を結びつける。若なら、ふらぐとでも言うか。儂も感化されてきておるのかな。

基本、どれでも良いがな。本意ではないが一度くらいは無関心、というものにも出会ってみたいものだな。

蜃気楼都市、そしてその噂。

ふむ、蜃気楼都市は今ひとつか?霧の都市とでもしようかの。

いずれ都市に名を与えれば必要ない呼称になるかもしれんが……。また住人を集めて徹夜で意見を出させるか。うむ。

ともあれ、ツィーゲには大分この街の存在が浸透してきている。

眠ったと思ったら。

迷ったと思ったら。

死んだと思ったら。

ぼんやりと迷い込む事がある幻の街。

そこでは魔物が共通語で会話し、来客に好意的。歓待を受け無事に帰してもらえる。普通の依頼や任務では到底得られないほどの収入に換わる希少な資源や素材、装備をお土産にだ。

冒険者たちからすればカジノで大当たりを引いたようなものだろう。少しずつだがその素材もツィーゲに流れ始め、それに関する依頼も出るようになってきた。

若が商会で亜空からの商品を扱うようになる下地は徐々に整いつつある。

絶野のベースでは、話を聞いた後すぐに”不慮の事故で”ベースが崩壊したからのう。

しかもその後は若が厳戒態勢で、休息もそこそこにツィーゲまで一直線。しかも儂は乗せられて武者修行なんぞしていて、ちっともこの話は進まんかった。

……レベルも20しか上がらなかったんじゃった。忘れたい悪夢じゃな。

遅ればせながら、何とか御命令には添えている。どうにも、レンブラント商会と関わってから若の周囲はなんぞ慌しい。

のんびりしていて後手に回るのも性に合わぬ。

いつツィーゲを離れても良いように。

儂も真面目に楽しくやらんとな♪
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