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久々の?従者登場。
さて、真君の頭痛はいつレベル3になるのか。
レンブラントイベントもあるのに、あっちもこっちも大変なツィーゲ編。
本編をどうぞ~^^
一章 ツィーゲ立志編
澪、お前もか……
忘れていたけど、僕は主だ。

亜空に行くのも良いけど、いっそ巴と澪を喚んで夕飯を先にとってしまおう。

そうだよ、何で僕がいそいそ報告を聞きにいかねばならんのだ。奴らが折々に報告をしに来るのが普通だろう!この世界には念話なんていう受信者に何の負担も素養さえ必要ないスキルがあって巴も澪もそれを使えるんだから!

よし、なら2人を…

そう思って通信の回線を開こうとしたそのときだった。

(若!若!今大丈夫ですかな!?)

何かここしばらくご無沙汰だったトラブルメイカーの声が聞こえた。

これ以上があるかっていう狙いすましたタイミングで。

(はいはい、どうしましたか~?)

(なんでしょうな、そのやる気の無い感じは!)

(え~、ここんとこ連絡もなかった人からいきなり大声で今大丈夫かって聞かれても~。忙しかったですけど何か~?)

思いっきり嫌味をぶつけてやる。

まったく命じたことの報告もオーク任せにして失踪しやがった癖に態度でかいんだよ!

(む、むう。それについてはちゃんと成果を挙げて報告できるようにしてある。ばっちりじゃ!そのために時間が必要だったのじゃ若~!)

どうだかな~。

こいつはご飯食べれなくても新発売のゲーム買うタイプの人だからなあ。ギリギリまで頑張ったとか言われても今一つピンとこないよ。

真顔で米が作れそうです、キリッとか言いそうなんだ。

(それで?急用なのか?)

(ああ、急いで亜空に来て欲しい。澪の奴が大変なのじゃ!)

澪?

……そういえば、あいつとは昼に別れてから一度も連絡を取っていない。

これまでは似たような事態があっても30分に一回くらいのペースで念話で通信を入れて話したがる奴だったのに。

まさか。

僕の与えた魔力が枯渇して暴れてるのか!?

(まさか蜘蛛に戻って暴れているのか!?)

(そんな生易しい状態ではない!その逆じゃ!ええい、若、とにかく早く来てくれ!何とかできるとしたら若だけなんじゃ!)

それ以上の状況だと!逆ってなんだよ!?

ああ、もう!

僕は勘定を終えるとすぐに裏路地に入り込み、人目を気にして霧の門を召喚した。

確か、澪は資料庫という名の僕の記憶が収納されている場所にいるはずだ。

そこで整理を頼んだからな。

「巴さん!続き、続きを早く!」

「澪、今日はコレで終いにしようではないか。ほれ、もう外も暗い。若もみえる頃であろう?」

「なら来るまでで良いですから!」

「ええい、もうどれだけぶっ通しでやっとると思っておる!終わりじゃ終わり!」

「……あぁら。そうですの、でしたらこの良くわからない水晶板がちょっと傷だらけになりますわね?」

澪が取り出したA4くらいの大きさの透明な板。それに鉄扇が近づきながらの一言。

のわああっとわけのわからない奇声をあげた巴が身悶えている。

「お前!澪!それは儂が苦心してCMカットしてノイズを取り去った水戸黄門東海道中編!」

「続きが見たいですわ~すっごく続きがみたいですわ~」

「おおおおおお!ま、待て、早まるな!それに何かあれば儂とて今後一切の協力はしかねるぞ!それでも良いのか!」

「そんな!そんなことになったら私、ここにあるものを全部まとめて食べちゃいそうなくらいショックですわ!」

「な、な、な、な、何とぉぉぉぉ!?」

……なんだこりゃ?

亜空に来てみたはいいんだけど。

何かせがんでる澪と、止めている巴?

ここは巴の管轄している僕の記憶の映像がどうとかって場所。

まあ、図書館というか資料室というか、そういう位置づけの場所だろう。

そこにこの亜空でトップクラスの2人が何を子供の喧嘩みたいなことを。

それにCMカットにノイズ除去ってお前。どこの動画職人だ。

僕の記憶は一体どんな感じになってるのか。

だがあれ1枚に水戸黄門一節が全部入ってるとなると現代もびっくりの記憶容量だなあ。あれが噂の超クリスタルか。ハーキマーダイヤモンド的な貴重品か?

いやいやいや。

とりあえず、そうじゃなくて。

えっと、他には誰かいないのか?

お、珍しい。アルケーさんがいる。

「ねえ、これは一体どうしたの?」

「若様、私たち、若様に会った後、ここで澪様と整理と分類を進めていた」

おおう、片言だったのが大分言葉になっている。すごいな、共通語の習得早いわ。

僕なんて大分やってもダメだったのに。拗ねたくなるね。

「うん、それで?」

「途中、巴様が戻ってきてカンショウというのを始めました」

カンショウ、鑑賞か。

お前、巴よう。仕事、山積みじゃん?

頼むから上に立つ者として振舞ってくださいよ!

「それに澪様も混ざった」

くぉら、お前ら共犯かい!

「でも巴様をたしなめて、すぐ手伝いに戻った」

おや、模範生。ならこの事態は?

「澪様、あちらの資料の整理に行った」

ああ、確か巴が言うにはその他扱いの映像やら記憶やらといっていたな。

返す返す便利だよな、一度に人の人生スキャンしてこうやって劣化もなく保存しておけるんだから。

その時の感情まで読み取れるわけではないらしいけど、経験したことすべて事象としては記録できるなんて凄すぎだろう。

考えようによっちゃ月読様からもらった僕の力よりも強力な気がするよ。

はぁ、アルケーさんの説明も長いな。片言ながら丁寧に一生懸命話してくれるのは好感持てるけどね。

いつ核心に触れてくれるのか。

「そうしたらああなった」

えええ!?

大事な過程が全部すっ飛んで無いか!

「澪様、あそこで固まって。巴様をひきずって。それでああなった」

意味がわからん。

僕はありがとう、と一言礼を言うと未だ舌戦を続ける”忠実な”従者2人に歩み寄る。

事こうなったからには当人達に聞くしかないよな。

「巴、来たぞ。なんだこれは?」

心底呆れた声がでた。まぁ、そうなるよね。自分でも驚くくらいに呆れた声がでたさ。

「お、おお!若!よく来てくださった!この馬鹿を止めてくだされ!」

「いいえ、若様。巴さんばかりがこのようないい思いをするなど、えこ贔屓というものではございませんか!?」

「何を言うか!これは若から許可を頂いた儂の正当な楽しみじゃ!」

巴ばかりが?許可?

おいおい、もしかして何か。

巴に引き続いて澪までも時代劇にとりつかれたってんじゃないだろうな。それはきついぞ?

あ~、澪が脅しに使ってるのが水戸黄門の映像だっていうならそれは違うか。

でも会話の流れからすると僕の記憶がらみな気がするんだけど?

「落ち着け!」

思わず怒鳴る。

見た目妙齢の女二人が何子供みたいな事でぎゃんぎゃんと喧嘩せなならんのだ!

しかも何でその仲裁が僕だ!?

静かになる資料室。

「オホン、落ち着いたか。では澪、まずソレを巴に返しなさい」

「……はい。すみませんでした」

「はい、よろしい」

巴はホクホクな顔で水戸黄門を抱きしめている。

「で、巴。これはどういうことか説明しろ。特に、何で僕がここまで来てお前らの喧嘩の仲裁をしなきゃならんのかをな」

「う。それは、ですな。私が昼過ぎにこちらに来たときにこの者らが先客でおりましてな」

「まずそこがおかしいな。色々と命じてあるはずのお前がどうして一切の報告より先にここに来る?先ず僕の所に来るべきだろ」

「え、え~と。いくつか確認したいことがありまして…」

「時代劇の鑑賞でか?」

「ギクゥ!いや、そのう英気をですな…」

もにょもにょもにょと言っている巴さん。

報告する前に息抜きしていこうぜ~ってなったわけね。

僕の周りは楽観的な人ばっかだなあ、もう。

「それで、澪とはどうして言い争、ん、なんだこれ?」

懐かしい画像が目に止まる。

これは確か日曜朝のアレか。

スゥゥーパァーーヒーローターイム!

って奴だな。戦隊物と仮面何とかな時間帯だ。

あの近辺の時間に時代劇なんてあったっけ?

やってても早朝くらいまで遡ると思うんだが。

「若、それで、ございます。原因は」

「巴?なんだその疲れた顔は」

「澪が…澪が…儂を家電かなにかのように使って!!」

よよよ、と巴が崩れ落ちた。

な、なんだ?家電ってあんた巴さん、どんだけ現代人化していくつもりですか!

いや、それはおいといて。

ひどく憔悴した巴の様子には嘘はない。

大体、澪がいたずらを誤魔化す子供のような作り笑いをしているのだ。

「若様、巴には時代劇の鑑賞許可を与えたと聞きました。巴さんときたらそれで任務もそこそこに、この画像の編集作業に没頭する始末」

戻ったのに連絡がなかったのは動画編集に没頭していたため、ですか。どこのマニアだ、お前は。

「ああ、問題だな」

「ですが!これほど、魅力的なものならば、そうなるのもわからないではありません」

雲行きが怪しいね~。

「従者として初めて、私、若様にお願いいたします!私にも鑑賞許可を!」

つか、もう見てるんじゃないの?許可とか以前に。

そうか、やられたな。巴との交渉が原因だ。

僕はあいつに記憶について、僕が禁止した項目を見れないようにした。

……だから巴は”禁止されてない”僕の記憶を見れるわけか。そして編集できると。PCも無いのに芸達者な奴。

で、澪まで雑多な日常の記憶からテレビの何かを見て、ハマッたわけか。

澪よ。

僕がお願いしたのは言葉がわかる澪を筆頭にして少しでも未処理の書類や嘆願を片付けてもらうことですよ~。

文字はダメでもさ。話し言葉がわかるのならそれなりに使えると判断したんだけど。

なんてこったですよ。

「時代劇?別にいいけ、ど」

「違います!私はあんなものに興味はございません!」

「おま、澪!あんな物とはなんじゃ!失礼じゃろうが!あれこそは日本文化の極み!」

なんだ、澪は違うものにハマったのか。巴の言い分はもう放っておくとして。大体日本ってお前、一応僕が異世界出身なのは内緒だよ?記憶見られている時点で時間も問題だとは思うけど。今のところは遠い国、で済ませている。

現在、生の記憶を見れるのはアルケーと澪、それに巴だけだ。

違うものねえ?

これは、アニメか。

おい。おいおいおいおいおいおいおい!

これ、おま、あれ、マジか!?

「澪、お前これが見たいの?」

巴に負けず劣らず長編なシリーズだよ、これは。

「はい。コレに関する鑑賞の御許可を頂きたいです!」

やる気溢れるお顔だ!しかし僕よ。何故これをシリーズコンプしてたかな。集めた記憶は無いしコレクションしてもいない筈なんだけど。

そうか、あいつだ。弓道部の友人の一人に去年の夏、拷問同然に見せ続けられた!空調もバッチリ効いてるAVルームで軟禁に近い耐久レースしたんだった!

お、思い出せば出すほど恨めしい記憶だ。仕返しに僕も何かしてやるべきだった。しかし普通の高校生の財力で一体どうやってDVDシリーズをコンプすればいいのか。そんな金無いわ!金持ちめ!

「……わかった。巴、澪にこれは見せてやってよ。僕はもう疲れた。寝る」

「わ、若!?よろしいので?というか儂の時間が削ら……」

「感謝致します、若様!!」

「お~……ただそれはアニメっていう動く絵だ。現実との区別はつけてくれよ~。巴は報告~」

報告ついでに色々話さないといけないこともあるしな。

僕はこれから商人になるんですよ?当然、この二人はその従者。従業員みたいなもんですよ。

なのに片や侍だか山賊だかわからんような状態の時代劇かぶれ、そしてもう一人は世間の常識も未熟な上にあんなものにハマっている。

前途、多難だ。

巴に別室で報告をさせ、唐突に消えやがった事について説教をし終えた頃には僕はもう心身ともに疲れ果てていた。

宿に姿が無いと知れると面倒なので疲労をおして亜空から宿の部屋に戻ると、すっかり夜と言っていい時間になっていた。いや深夜とも言えるな。

こちらの夜は静かになるのが早い。

飲んで騒いでいる連中も夜通し騒ぐようなことは少なく。

この街の夜は意外と早く静寂を迎える。そうなってしまえばおそらくまだ夜の九時、十時なのだろうが雰囲気は深夜そのものである。

宿の並ぶような場所には酒場も多く、比較的遅くまで明かりが残っているが、それも今はもう消えている。もっと大きな街の盛り場や遊所なら不夜城の如き場所もあるのかもしれないが。

「疲れた~」

僕は開けた窓から外を見て独白する。

腰掛けた椅子はゆりかごのようにキコキコと揺れるタイプのものだった。

これが予想以上に気持ちがいい。お気に入りです。弱った心に致命的癒しをくれます。

本当に色々動き回った一日だった。

これだけ疲れたのは本当に久しぶりだ。心も体も。

ふと室内を見る。

ベッドが二つに大きめの長椅子が一つ。

普通は従者のどっちかが交代で長椅子を使うと思うんだが、奴らは二人ともベッドでスヤスヤと寝息を立てている。

いわく。

「どちらのベッドに来て頂いても構いませんぞ」

「(コクコク!!)」

いけるか!

今日は長椅子で寝るのか。そうだな、確定だろう。僕は健全な男子高校生だったはずなんだが、何故かあの二人には全く性欲が湧かん。元を知っているからか問題児過ぎるせいか。

いっそこうやって外を見ながら夜を明かすのもいいかな。夜風を仄かに感じながら月を見て過ごす夜、落ち着く。月読様を思い出すしな。ついでに虫も思い出すから差し引きゼロになるが。

あの女神。月読様と話した感じと言い、もしかしなくても月関係の神様なのかな。嫌だな、月だけは司っていて欲しくない。フラグとかじゃなく本気でそうじゃないことを祈るね、ホント。

錬金青年には連絡をつけてある。明日冒険者ギルド前で待ち合わせだ。

秘薬に数えられるアンブローシアの精製に携われるなんて!と感激して快諾してくれた。

他のメンバーは、明日はお休みなんだそうだ。

腰を落ち着けてここに留まるから安くて居心地の良い宿を探すのだと言っていた。

僕らも、長くここにいるつもりなら借家か、あればアパートのようなものを探しておかないといけない。

商売をするつもりなら馬車や、商品を保管する倉庫も必要になってくる。

やることは明確で、明日も明後日も走り回ることになるだろう。

落ち着けるまでにまだ少しかかることははっきりとわかる。

やや冷たく、気持ちを引き締めてくれる秋の風が身にしみる。秋、がある場所かは別にして、ただの僕の感覚だけど。

「気持ちもしっかりしなきゃって思っては、いるんだけどさ」

自嘲気味な声。あまり沈まないようにと意図して避けてきたのだけど。

「従者が二人とも奇怪な趣味に目覚めそうで困るでござる。嫌でござる」

結局、秋の夜長に軽く震えながら現実逃避気味に呟く僕が考えていたのは。

青い従者のちゃんばら趣味と、黒い従者の新たな趣味の犠牲者になるであろう自分についてだった。

寝よ。もう、寝よ。
さて、クイズです。澪は何にはまったでしょうか?
いえ、冗談です。ほとんどノーヒントで、しかもまだしばらく明らかにする予定もないので^^;
き、決まってはいるんですからね!

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