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あずです。
お供が増えない、出てこない感じで進行しているツィーゲ編です。
魔法や肉体のみならず財布もチートになりそうな感じになって参りました。
それではどうぞ^^
一章 ツィーゲ立志編
義務教育は偉大です
「やったよ~やりましたよ~♪」

月がその形をはっきりと空に示しだしたころ。

僕は宿から幾つかの荷物をいれた箱を担いで商人ギルドに向かっていた。

筆記試験ごうかーーく♪

あの試験、日本で義務教育を受けた身の僕としては全然簡単な代物だったのです。

一部暗記項目があったけど、その辺だけささっと試験の準備してる間に暗記しちゃったら後はもう楽勝。

数学の入り口になるかならないかくらいの計算に関する問題と一部の取り扱い禁止項目や免許制の品目についての暗記問題。

だが明らかに計算に比重が大きく置かれていて暗記の量が少ない。これは正に僕のための試験だった。

商人がギルドの一員となる段階で扱えるであろう品目の範囲では免許や扱いの制限がかかる物は少ないらしい。助かったな。

運良く懸念のあった暗記も目を通した場所が出たので、試験に用意されていた時間の半分ほどで解答を終えて試験官に提出。

結構どんぶり勘定な商売感覚でいる所に数学を多少学んだ僕が解答するんだからこれは楽勝そのものなのDEATH。

金貨から銅貨までの両替効率も知ってたしね。

試験官が紙もってプルプル震えながら目見開いて「合格、です」といったときの表情ったら無かったね。

この程度の試験に何年も勉強を要求する辺り、おそらくこの世界「学校」っていうものは無いな。あってもかなり特殊な部類に入るものなのだろう。

奇跡の満点合格だったので供託金は金額こそ変わらないが自由のきく分割払いに出来るらしい。一括で払うつもりの僕としては関係ないけど。違う特典が良かったよ。

すぐに次の試験が出来るかと聞いたら調達の試験は課題を出されて何日以内に達成できるかというものだった。

今日はいつまでOKかと聞くと、まだしばらく(この辺が曖昧なんだよね異世界)やっている、とのことだったので課題を見た僕はすぐ宿に帰って果てで得た素材から自分に分配された物を適当に箱に詰めて担いだ。

みかん箱と同じ位の箱に中~小型の素材をいくつか詰めて肩にかついでえんやこら。木箱だからかダンボールより重いのだけど、ハイパーボデーの僕にはむしろこっちのが軽く感じる。

『以上四点の素材、もしくは相当する価値以上の物をもってくること』

試験内容に記された4点の素材については正直聞いたことも無い。

でも試験官さんが言ったんだよね。運が悪かったなって。

調達の試験はラックの試験もかねているとかで中身のわからない箱から番号のついた玉を引いてそれに対応した物品を持ってくるという内容。

その中でも僕は難易度の高い素材調達、しかも四つも持ってこなければならない超難関の玉をひいてしまったのだそうだ。

はっはっは、僕にラックが無いのなんて序章からわかりきってます!

試験官いわく

「レベル50程の冒険者に知り合いでもいなければこれは達成できまい」

と言っていたからだった。

普通の商人見習いが外に出て調達するのはまず不可能。冒険者でも多少腕に覚えがある人間でなければならず、当然彼らを雇うとなればお金がすごくかかる、といったレベルの素材らしく不可能と見られたのだろう。

でもこれ、相当する価値以上のもの、であればいいわけで。そう書いてあるしね。

なら荒野の魔物はといえばレベル50程度じゃ狩れないランクらしいので絶対大丈夫ってわけですよ。ちょっと多めに入れたし。

入るだけでレベル95無いと駄目なんて、どこのネトゲの上位狩場かと。

つくづくトアさん達の無謀がわかるわ~。手前側のベースでひいひい狩るレベルで最奥部まで行ってれば毎回賭けみたいな狩りを繰り返すのも納得です。

それはともかく。

僕はついてる!即日合格いけんじゃん!

「ごとうちゃ~く!!」

誰にも理解できないであろう日本語で思わず到着を口にする。

まだ明かりがついているし人の気配もする。おっし!

[どうも、ライドウですが]

「あら?ライドウさん、確か調達の試験中のはずですが?」

[ええ、終わりましたので確認お願いします!]

「……はぁ!!??」

お姉さんの本日二度目の大声がギルドの響きましたよと。

[ですから素材四点の調達、相当以上の品で持参しました。確認を]

「は、はい!少々お待ちを!試験官!試験官~!」

なにやらばたばたとお姉さんが向こうの廊下を歩いていたおじさんを呼び止める。

おお、確かにあの人だ。満点だ、と搾り出すように口にしたのが記憶に新しい。

おっと、2人とも戻ってきた。受付で確認もしてくれるのかな。

また試験の部屋に行くのかとばかり思っていたよ。

「ライドウくん?君ね、課題の発表からまだいくらも経ってないよ?いい加減なことを」

[はい、確認してください]

ふたを取る。中には8つほど素材が入れてある。小さいのとダブってるのを見繕っていれてみたのだが。

「ん?んんん!?」

[どうでしょう。課題の物に相当するとは思うのですが]

「君、これをどこで!?」

[先日、荒野から戻ったときに同行していた冒険者の人から譲ってもらいました]

「これ全部かね!?一体誰から!?」

[トアさんっていう闇盗賊さんの一行から。先日戻ってきてあの人たちも素材は売ったと言ってましたが?]

キッとお姉さんを見る試験官。

お姉さんは台帳らしき分厚いファイルを軽快に読み進め、目的の場所をすぐに見つけた。

「確かに。大量の希少素材が本日朝交易所及び素材取引所に持ち込まれています。一部合成や付与を扱う場所にも流れています」

「その一部か!」

おじさんは頭を抱えている。どうやらこの試験が楽に突破されたのが密かに悔しいご様子。

[はい]

「……ライドウ君といったね」

[はい]

「おめでとう、文句なしで合格だ」

[やった、嬉しいですね]

「……何だかそんなに嬉しそうに見えんね。商人試験を飛び込みで即日合格したのは君が初めてだよ。まったく。とんでもないことだ」

嬉しくないわけは無い。でも、思ったよりは簡単だったのと文字で書いたのでそう思われてしまったんだろう。

[ありがとうございます]

「ギルドカードは明日昼には発行できるようにしておこう。カードで出来ることや規約についてはその時にでも。明日は大丈夫かね?」

[問題ありません]

「わかった。では……君、手続きについては頼む」

引き続きお姉さんに作業を頼むとおじさん試験官はふらふら~っと夢遊病者のように奥に行ってしまった。

もしかして、結構なことをしたのか?でも早く欲しかったし問題無い。

冒険者ギルドカードの機能も気になるけどこっちも早く受け取りたいのさあ。

試験勉強でうんうん言うのは嫌なんだよねえ。向こうの世界の苦い思い出が蘇るから。

「驚きました!すごく優秀な方だったんですね!まさか合格されるなんて」

お姉さんからの視線がランクアップした!うむ、こうして人は出世の階段を上るのだね……。

[いいえ、運が良かったのでしょう。知っていた知識と持っていた物で合格できてしまったのですから]

「ふふふ、謙虚なんですね。こちらが記入用紙になります。供託金と初年度のギルド費はいかがされますか?」

今、いくらか支払うか、ということだろう。

[これから全額支払います。供託金金貨10枚、ギルド費金貨1枚ですね]

この金額は商人としての実績が上がってくるとさらに増えるものなんだそうな。つまり初期の商人でもこれだけの出費は出来なくてはいけません、ということなんだろう。

ま、供託金は分納もOKみたいだしそこまで鬼畜じゃないか。実際の累進具合を見たら実績の報告で虚偽申告したくなるかもしれないけど。

「全額、ですか。ええ、確かに。本当に、どういう方なんですかライドウさんって」

っと。

目立ったせいか少し興味をもたれてしまったかな。それも仕方ないけど。

[どういう方と言われましても。特に、自分では変わった者ではないと思いますが。言葉とコレ以外は]

仮面を指差しながら空欄を埋めていく。

「仮面してらっしゃる人は滅多にはいないですからね~。……伺っても?」

好奇心丸出しだな。でも美人に興味を持ってもらえるのは正直嬉しい。こういう感覚だけはやっぱ元の世界のままだなあ、僕は。

[幼い頃のことなのでよく覚えていないのですが。何か良くない者に呪いを受けたようで。それでこの仮面で呪いを中和したのはいいのですが、今度はこちらが外れなくなった、というわけですよ]

「の、呪いですか」

[ええ、おかげさまで共通語が話せなくて困った挙句がこの筆談もどきです。魔力を扱えることが救いでしたね]

「そ、それはお気の毒に。早く仮面を取れるといいですね」

案の定、呪いを話題に出すと結構相手が引いてくれる。呪病なんて物騒なものもあるんだ。得体の知れない呪いはやはり怖いものなのだろう。

[ありがとう。共通語以外の言葉ならいくつか話せますので亜人の方の一部や魔法を扱う方とはそちらの言葉でお話することはできるのですけどね]

魔法に使われる古代語や召喚の契約に使われる精霊語、エルフやドワーフはじめ亜人の独自に発達した言葉については魔物扱いされるのか理解できるので話せてしまうのですよ。

本当にヒューマンとだけ!話せないんですよ!あのくそ女神め、いつか必ずこのふざけた仕様を改善してもらうからな!

「へぇ~。それは、もしかしたら商売においては物凄いメリットかもしれませんね。ヒューマンの間ではあまり出回らないものを扱えるかもしれないんだし」

[ええ、僕もこれからの商売が楽しみです。はい、記入はこれで良いですよね?]

「あ、はい!え~と、うん問題ありません。綺麗な共通語で書かれてます!あの、それで…」

[では、今日はもう遅いのでこれで。また明日伺いますね]

尚も質問をしようとする彼女の話を強引に断ち切って僕はギルドを後にした。

ギルド試験即日合格か。商人としてやってくのに箔の一つにでもなってくれればいいな。

ふいー流石にお腹が減った。

移動中、ちょこちょことつまんでいたが、ご飯としてはちゃんと食べてなかったことを思い出す。

僕は夕飯時にもかかわらずあんまし客のいない店に飛び込んで奥まった席でフルーツジュースを注文。軽くでもお腹に入れておきたい位空腹だ。

ん~。トアさんたちから連絡が来ては、いないな。

僕のアドレスは教えてあるから訪問の前には連絡があるだろうから、そっちはまだいいか。

まあ、僕のほうから用事があるだけで、澪と巴のアドレスが欲しいあの4人から今夜連絡があるかどうかは怪しい所だ。

ふむ、黄色だ。柑橘系の味かな。

やるなまさかのバナナ味。さらさらなバナナジュースはちょっと苦手だと判明しました。うぇ。

「聞いたか?果てに入ってすぐの森」

「ああ、何でも人が帰って来ないらしいな。依頼が出てた」

「いや違う違う。その先よ。捜索に向かった連中も誰も帰ってこねえんだと。今依頼のランクが跳ね上がってるぜ?」

んあ?

聞こえてきた噂話に耳を傾ける。入ってすぐの森って……ルビーアイとサイズアントが襲撃してきた方向のアレか。

物騒だねえ。街のすぐ傍で行方不明の続出だなんて。

ま、ランクが上がってるというなら無関係か。僕はDランク。荒野に入るにはランクC以上じゃないと入ることさえ許可されてないからな。ランクとレベルの両方を満たすのは冒険者の皆さんにとっては大変そうである。だからこそ不正侵入する馬鹿がいるわけでもあるんだけど。

少し考えればランクはともかくレベルが足りていないのに荒野に入り込んで美味しい思いしようとする連中は冒険者的な意味で、とは違った意味で頭のネジが飛んでいる。命の価値がわかってない単なる大馬鹿です。ランクとレベルの設定は冒険者が無駄に死なないような配慮があってこそ存在するのだろうに。

今聞いている噂話では、依頼が、と言っているから正規に入った連中で対応できない何かが起きているかもしれない。荒野デビューしたばかりの皆様は是非近づかないで頂きたいものだ。不正侵入組はどうでもいいや。

奥地から強い魔物でも出てきて森に巣食ったのかね。

確かに絶野付近からしばらくの間はそれなりの雰囲気のある魔物が多かったな。それまでエンカウントさえ無いような場所を歩いていた寂しさMAXの僕にはむしろ嬉しかったけど。巴や澪がいて寄ってこなかった奴らを含めてサファリパークのようで楽しかった。でもアレらがこの辺りで出没すれば多分トアさんたちのレベルでも苦戦、もしくは全滅の可能性もある。ツィーゲのギルドのキャパを超える存在だ。死亡者続出だろう。

さてこれからどうするかな。出てきた以上は食べる主義の僕は苦手なジュースも完食。慣れれば意外と美味しいかも。

レンブラントさんの呪病の件でやれることは現状では無い。実行犯はもういないから依頼した真犯人探して生まれてきた事を少し後悔してもらいたい所だけど、大きな商会が情報網を駆使してプロまで雇って掴めなかった尻尾だ。土地勘さえ無い僕ではチートでも無理だろう。勇者補正とかあればイベント発生も期待出来るんだが都合よくはいかないものだ。ただ向こうがレンブラント家を常時監視しているのだとすると、僕の存在は犯人に知れたわけで、何らかのちょっかいをかけて来ることは考えられる。”それなり”の警戒をしながらも誘い受けな姿勢でいる方針でこの件は問題ないだろう。

いずれ、関わることになったその時は。巴じゃないが将軍様無双させてもらいましょうかね。くっくっく。

またストレスが溜まるに違いないが……亜空の状況を一度覗いておくのもいいかな。朝行ったばかりだけど澪を一日置いてあるから粗相してないか心配だ。
ご意見ご感想お待ちしております。
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