再開後、早速感想とご意見を頂きました。ありがとうございます!
今回は武具。
チートな主人公のチートな装備の開発ですが、武器は多分皆様予想通りかと。
はい、答え言います。弓っす。ま、一個隠し種もありますがソレもちょこっと前に書いてますし^^;
では防具は……本編をどうぞ~^^
「却下」
僕の冷徹な声が工房に響く。
目前にはそれはもう仰々しい、博物館に飾られているそのもののフルプレートがあった。
こんなもの着てられるか!
来た感じもそりゃあゴツくて、重さこそ大してないけど商人でこれは着れないよ!
だが防具はそれはもう沢山並んでいる。ずらーっと。オートクチュールの店内ショーかと。
長老さんもズズーンと沈んだ作成者の肩を叩きながら次を期待している様子。
そうだな~この中で選ぶとするなら。
全身鎧はパス。革鎧もパス。ふーむ、ジャケットみたいな普段着に近い物はないかな。最悪は革鎧も含めた軽鎧で妥協するか。
見ながら素通りしていく度になにやら効果音つきで崩れ落ちるドワーフたち。
となると、お、このダブついた法衣みたいなのがいいかな。これなら着るのも楽そうだ。理想は大正浪漫の書生服、あるわけもない!
っと。
手に取ろうとした法衣から手を離した。
その二つ横。
僕の世界にあるコートのようなものとズボンのセット。
金属鎧の多い中にあってアンバランスな感じ、藍色とコート裏地の真紅のファンキー具合が気に入った。是非意図を聞きたいねこれは。
「これは?」
「それが…気に入りましたか?」
長老さんは何やら思案げである。気に入ったというか気になっただけだけど。
冬しか着ないようなコートに見える。でも生地は腿辺りで止まっており、動きやすさは阻害されないようになっている。厚手に見えて意外と薄いし、思ったよりは動きやすいのだろうか。
しかもどうしてズボンとセットなのか。そこもどうにも気になった。これで全身防具に仕立てている、ということか?
「いや、僕の国の衣服と少し似ていてね。それで気になった」
「これは、若様から急ぎでと頼まれた指輪、ドラウプニル。あれに着眼した者が造った品でして」
流石長老。ここに並んでいる物全部の概要は知っているのか。目配せした長老に合わせて一人目つきの悪いドワーフが出てきた。
年齢はわからないけど、長老さんよりは若そうだな。何より、ひねた感じがいかにも職人さんだ。偏見かも。
しかし、この人もか。ここにいるドワーフ全員ひどいクマを作っている。寝てないのかね~。
「若さん、儂の作ったこれが気になったかい。あんな指輪を所望する人はやっぱり変わっているな」
若さんって。初めて言われたな。そのうち、若りんとか若っちって言われそうで怖いな。どっかで釘さしておこう。
「上下で揃えてるから全身防具と見ていいの?」
「もちろんじゃ。物理、魔法ともに高い防御性能がある。普段の性能では物理面では特に衝撃に魔法面では風と炎に高い耐性をもたせてある」
若さんは水属性、闇属性が得意なようじゃったから。と付け足して説明してくれる。
水と闇に精通してると風と火が苦手になるのかな?僕は多分そんなこと無い、筈。
でも、それと指輪に着眼する意味が繋がらないな。まだ何かあるのかね。
「戦闘においては状況に応じて二つのタイプに分けて使える。事実上万能じゃ」
可変式とか言い出すなよ。僕は変身とかしたくないぞ。
「万能、そんなものが良く出来たね」
「道具としては、な」
ほらきた。何か面倒なことがあるんだ。脱げなくなるとかだったらパスだな。初級万能魔法のメ○ドだって中盤に登場するんだ、万能って言葉は重い。実際は器用貧乏にもなっちゃう困り者だったりするけど。
「ほれ、この袖のとこを見ておくれ」
これは…細い鎖か?収納するポケットのような部分から5本出ている。
「これとドラウプニルを接続することで性能を発揮するようになっておる」
指輪の魔力を使うってことか。つまり…
「つまり今言った性能は着用者の魔力を使うことで実現してるってことか」
「聡いの、その通りじゃよ」
毎ターンMP消費がある防具ってことね。
「その消費はドラウプニルよりも大きくてな、使い手のことを考えない性能最優先の防具ということになる」
そのドラウプニルの消費すら物足りないくらい魔力が余ってる僕にはむしろ嬉しいくらいなんですが……ドワーフさんはしてやったりって顔してるな。
ここのところ肥大していないみたいだけど、この魔力だけは持て余し気味なんだよな。何とかしたいんだよ。
「ふーん、じゃあ指輪と接続なしで着るとどうなるの?」
「ダイレクトに魔力を吸われます。指輪という弁がなくなるからこやつが満足するまで供給しなくてはならん。凡人なら即死するレベルじゃ」
「物騒な服ですわね」
澪がいつのまにか戻ってきている。彼女のほうはもう測定と装備品のデザインを決めてきたのだろうか。
「澪、もう終わったのか?」
「ええ、鉄扇の形のまま色々やってもらうことに。服も着物が気に入っておりますので付与する能力について幾つか話したくらいです」
「へ~決断早いんだな。ま、僕も防具はこれで決まりそうだけどね。雛形は」
そう言ってコートとズボンを手に取る。
ズボンオンズボンは少し履きにくいけど、防具扱いなんだし何よりこれは試着。気にしない。そんでコート。敢えて指輪を接続せずにどの程度のものか試してやろう。
「若さん、指輪を先に繋げんといかん!」
先にって。袖から指輪につける鎖出てるのにどうやって先に繋げるんだよ。とんちか!
「いいから」
ふむ、確かに吸われてるな。でも別に意識してようやくってレベルだ。凡人なら即死ってのはいいすぎだろ。これで安全靴ならぬ安全ジャケット兼火と風属性に強い服なんだ。
お得じゃん。
「も、問題はありませんかの?」
「ああ、まったく。それで、二つのタイプというのは?」
裏地の赤が関係してるのかな。リバーシブルとか?暗めの赤だから何とか着れなくも無い色だとは思うけど。金銀よりは遥かにマシだと思うし。
「裏が赤くなっているのはお分かりと思いますが」
「ああわかる」
「それが入れ替わるようにイメージしてみて下さい」
こうかな。お、おお!?
表面が赤くなった!
へーへーへー!
イメージだけでリバーシブルに出来るんだ!これすごいな!面白い!
「その状態ですと防御力重視から機動力重視に変わります。特性が斬撃に強い耐性、属性としては水と風、それに光属性に強くなります。また、速度に補正がついて通常よりも高速で動けるはずです。……!」
どんなものかなっと。
不意に軽く駆けてみる。目的は工房入り口の明かり。
ほんの軽く加速しただけだというのに。
周りが一気にスローになった!
こ、こりゃあ凄い!何とか反射神経の方もついていけてるけど街中でやったら消えてるように見えるんじゃないのか?
あまり風を起こすのも何なので出来るだけ穏やかに元の場所に戻る。
それでも戻った所には一陣の風が吹き抜けた。
「これはすごいね。便利だし、強力だ。あとは耐久力があれば最高だけど」
「そ、それは自信がある!防御力は防具の基本だ!」
「ああ、そうじゃない。魔力への耐久力だよ。だってさ、これ」
ドラウプニルで吸いきれない分を一時押さえ込んでいた魔力を開放する。
コートは初めそれを何事も無く受け入れていたが数秒で発光を始め、10秒ほどで生地が裂けだした。僕は魔力を再度抑える。
つけていた3つの指輪は真っ赤になっていた。
「ね。少し、脆いよ。この何倍の性能を追求して良いし、魔力も何倍食おうと構わない。だからもっと僕の魔力に耐えられる服を作ってよ」
「こん、な。魔力の飽和が起きるなぞ」
性能強化の限界まで魔力を吸い、しかもそれでも吸いきれずに服そのものを破壊しだしたのだ。
彼の設計構想の斜め上をいったようである。
でもそのくらいで問題ないだろう。構想の方向は問題ないんだ。職人な彼等ならこれをどんどん改良していって完成させてくれるだろう。
「防具は彼の物を改良したものを使いたいです。武器は弓なんですが出来てますか?」
「わかりました。弓ですな、ご要望を巴様から伺っていますのである程度は。こちらも一度確かめて頂きたいのでご足労願えますかな」
「わかりました」
その後、弓についてもいくつかの注文をお願いし、ナイフとショートソードを普段使いにと受け取って僕と澪はアルケーと対面。
もう一つ頼んだ武器はまだ作成しているとのこと。やはり”この世界”には無い武器だったか。
弓は和弓がベース。つまりコンポジットボウとして説明したわけだけど、ここには特殊な木の素材も数多くあるらしくセルフボウ、つまり単一素材で作る弓の方が様々な面で優れることも多いのだそうだ。
強度や威力が同じなら僕だって扱いや手入れに気を使う物より楽な方が良い。修練だけに使うならともかく、これは実戦用の、しかも常用する可能性もあるのだから。
彼らの収集したものについての整理と分類をしながら、僕の記憶の整理について澪と彼らに協力をお願いして一人でツィーゲに戻った。
次はレンブラント商会だな。
あ、先に冒険者ギルドでトアさん達に一言断っておかないと。巴の不在で登録云々が不透明だし、万が一のために同席して欲しい。
Sクラスの依頼を受けることを了承させるためにも僕が登録して、現品を持っていることを知ってもらう必要があるんだけど。
無理ならトアさんたちに受けてもらって交渉することも考えておかないとね。
ふいーもうお昼か。長い一日だよ、まったく。
あ。
そっか。指輪を外して鎖に装着してから着用すればいいのか。とんちでも何でもなかったな。
防具はトレンチコートを想像していただければ。
ズボンもセットで青と(コートに限っては)赤。
……はい、お気づき頂けましたでしょうか?真はセンス「も」駄目です!
小説家になろう 勝手にランキング
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。