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後1話。
ラスト手前で道中連れて来ることになった冒険者のレベルと職を公開。
ま、見せ場があったわけじゃないし良いや!ということで。
それでは、どうぞ^^
ラストは明日アップする予定です。
序章 世界の果て放浪編
馬車降りて子守終わる
[仕方ないな。では最後くらい僕がやろうか]

「ええええ!?」

まっさきにリノンの驚嘆。

しくしくしく。どこまで期待が薄いのか。

「あ、あのライドウさん?私たちでも死んじゃうんですよ!?澪様にお願いしましょうよ!」

他の奴らも異口同音に必死に止めてくる。

自分の評価に泣きたくなるとはこのことである。

素材採集すらできなかったのだから、どのくらい初心者と思われているかわかろうというものだ。

ごそごそと弓と矢を探して取り出す。澪に目配せして馬車を止める。

流石はバイコーンのお馬さんだ。強いらしい昆虫がこちらに一直線でもまるでひるんでいない。指示の通りに静止してくれた。

えっと蟻の急所は頭だったよな。蜂のほうはどこじゃ?

[ええっと、サイズアントは頭が急所でしたっけ?ルビーアイっていうのは?頭?]

「だから無理だって!」

「それにルビーアイは頭だけは狙っちゃ駄目ーー!!」

「話も聞けてないのに戦いなんて!」

すげえ言われようだね?泣くぞ?しかし確かに頭は狙うなとか言ってたな、これは失言。

[いいから、ルビーアイはどこを狙えばいいのか教えてくださいよ]

「うわーー弓の射程すらわかってないのに、こいつ射る気だよ!」

「お願い、今からでも澪様を説得して」

「……ルビーアイの急所はたしか腹部です」

「おいトア!?」

騒ぐ連中を黙らせるトア。うむ、この娘は見る目があるのう。どうやらこの僕の実力の一端が弓を持ったときから漏れ出てしまったのかもしれん。ふふ、自分が怖い。

頭と腹ね。

ふん、こんだけ「近ければ」外すわけが無い。

弓道だけならともかく、こちとら弓術もばっちりだ。必要なら接近戦だってやっちゃうよ。あ、そうだ。今度ドワーフさん達にアレ作ってもらおっと。

動く的にも当然慣れているさ。

弓を構える。ドワーフから手に入れた矢はまだたくさんある。こんな装備で問題ない。

(おいおい、トア!?)

(黙って!集中してるみたいよ)

(いや、だからよ、無理だって、距離もまだ魔法ならともかくってくらいだし)

(…それにあの子レベル1よ?なに考えてるのよ)

な、なんて失礼なやつらだ。冷静なエルフっ子が何気に心を貫くね。澪には様づけの癖に!

だが僕は10の標的のうちすでに6つをロックオン済み。

7,8,9・・

トアさんの期待に応えるとしますかね。

と思っていたら。

(いざとなれば澪様がでてくださるわ)

(おお、なるほど。やらせてみて動いてもらうのか)

(それに澪様が任せたってことはひょっとしたら凄いかもしれないじゃない)

(…いやいやいや?レベル1にそれはないぞ?)

(ライドウさんじゃないわ、あの弓矢よ。物凄い業物かもしれないわ。エイミングとかクリティカルとかついていて必殺必中かもしれない)

(…なるほど、それは考えてなかった。確かに弓はともかく矢は結構しっかりしてる)

心の涙のダムが決壊しそうだ。即座に本人の資質否定か……。

弓矢かよ!

お前ら全員、永眠愚してやろうか?愚か者どもめーー、うぅぅ。

もういい!見て驚け!

「お兄ちゃん、大丈夫?」

もう、リノンが一番いい子にみえるね!

距離は100メートルくらいか。

全標的ロックオン完了。蜂からいくか。

「…ふぅぅぅ」

肺に含んだ空気を静かに吐き出す。そして一射目。的は先行してきていたルビーアイ2匹のうち一匹。

続いてもう一匹。勿論、先の蜂は腹部を貫通され穴をあけられて地に落ちた。

3,4,5・・・

僕は順調にロックオンを消化していく。

後ろで「嘘」とか「なんだ、これ」と、見たかこら、な感想が聞こえる。

わかったかね、弓を使わせたら私はそれはもうすごいのだよ?

顔では最弱でも部内での実力たるや最強と自負しておりますれば。

8,9・・・

これで終わり、と。

最後の蟻の頭をぶち抜く。

ここまで約30秒。

最初の一射で相手が驚いて止まってから、こちらに動き出した頃にはもう終わっていた。

一匹たりとも近づけさせてない。全部一確で狩ってやったわ!超火力遠距離職なめんな?

うむ、多少装填の速度になまりはあるが精度には変わりが無い。ここんとこ亜空に行ってないから弓を構えてなかったけど、安心した。

「……凄い」

リノン、素直な感想ありがとう。これで僕への評価を改めたことでしょう。うむうむ。

[こんなものです。見直しました?]

後ろの連中にもいってやる。ってか特別な効果なんてついてない弓を見せてやる。

「す、ごい。一見普通の弓にしか見えないのに…」

だーかーらー!弓じゃねえんだって!

どこまで信じてくれないんだ。レベル1ってそんなに逆の説得力が強いのか…。畜生。

[…これは普通の弓ですよ。ついでに矢も腕の良い職人に作ってもらいましたけど魔法なんてかかってないです。私は幼いころから弓矢だけは得意だったのですよ]

そう言って弓と矢を連中に渡してやる。大活躍したはずなのに僕は何故か意気消沈だった。

澪に指示して死骸のところに進んでもらう。

へー。本当だ、レッドビーと違って目が鉱石みたいな輝きの赤だ。ルビーアイ、なるほど。

「これ、つくりはしっかりしてるけど間違いなく何の付与魔術もかかってない」

何か調べていた錬金術師の青年が僕の弓矢について結論を出した。名前は当然忘れた。

そして無礼な奴の名前なんて、もう覚えてやらん。目の前で起きたことも信じないとかありえん。

「……ありえない」

自分も弓を使うエルフ族の女がぽそりと呟く。名前は以下同文。

「威力も、射程も、精度も、あんなの見たこと無い」

「よね」

トアも同意する。道具の性能とばかり思っていたので予想外だったのだろう。

それにレベル1だし。

[皆さん、もういいですか?さっさと素材集めてツィーゲに急ぎましょう]

一足先にサイズアントから鎌みたいな鋭い前足を切除しながら弓をいじっている四人組を急かす。

こういうときは文字会話も良いな。表示させる場所を変えれば声が届かなくても意思が伝わる。

大声出すのはあんまし得意ではない。

慌てて出てくる四人。

何週間も一緒にいたからかパーティを組んでいるわけでもない彼らも連帯感がでてきた。

それからツィーゲに到着するまでの間。

別の人を見る目で僕を見る四人の雰囲気は少し心地よかった。

リノンに「よかったね」と見透かされたときは大分恥ずかしかったが。

ベース破壊からだと大体三週間。「こっち」にきてからだと二ヶ月と少し。

日が中天にかかったころ。

僕はようやくツィーゲに、この世界にきてから初めての街らしい街に到着したんだ。




「なんと!?『絶野』のベースが崩壊!?」

トアさんが冒険者ギルドで事の仔細を報告している。

もちろん、事実のままには報告していない。

他の3人の冒険者に刷り込んだように話を作って合わせるようお願いしてある。

トアさんとリノンには術を使ったなんて言ってない。他の人も話を合わせていると思っていることだろう。

にしてもあの町、いやベースが絶野なんて名前がついていたとは初耳だった。

平均レベル100オーバー、人の町ではかなりの場所らしい。すぐいなくなる人も平均の内に入っていることを思うと実際すごいんだろう。

まぁ、何ともやり口の汚い所ではあったと思うけどね。

この人らも、結局一部の悪徳商人か貴族(諸般の事情により僕は結局黒幕の名前知らないんだよな)の犠牲になりかけてた。

だからかもしれないけど、あの場所にはそれほどの未練も愛着もないようだった。

リノンでさえそうなんだが…なにかトアさんには事情がありそうだった。

離れることには異存はなさそうだったんだが何かしらの未練はあったようだ。

ちなみに作った話はそれはもう適当だった。

ただ一言。魔物の大発生。

それがおかしくない場所とはいえ、どこのネトゲのイベントかと。

僕らは命からがら逃げ出してきたってわけだ。

しかも従者2人が登録したギルドから他のギルドにまだ情報の共有がなされていなかったらしく巴、澪、双方のギルドカードから情報が消えていた。

どんな仕組みか知らないけど、杜撰なものだ。

次のベースで話を聞くと果てのベースでは情報の共有をするための施設が置けないので反映が遅くなることも多いそうで。

結局ソレはどこにあるのか聞くとここ、ツィーゲだということなので2人の再登録はここまでしなくて良いかという話になった。

都合3つほどのベースを経由してきたけど、どこも多少の村レベル、いや野営地に毛が生えた程度だって印象だったし。

今夜にでも巴を呼び出して、明日改めて2人の登録をして、それから商人ギルドに行こうかなあ。

今日はこれから宿を決めてお店見て回って…。

うううう、やっと、やっと街に着いたんだ!やりたいこといっぱいだよね!!

四人の話を聞いてうんうん唸っていた係の人は僕らに待っているように告げると奥に入っていった。

多分偉い人を呼びにいったんだろう。結構大事だからね、ベース無くなりましたって。

澪には会話に参加させずにリノンと一緒に僕の側に居させている。僕の風体が問題でまた怒り出すのも嫌だ。

そーいやここの最高レベルとランク保持者ってどんなもんじゃろ。

ここは流石にしっかりとした建物なので広くて大変だが…おお、あそこか。報告に僕がいる必要は無いしちょっと見にいこう。

僕は依頼その他の掲示板の横にあるスペースに目をつけた。さして急いでもない人の流れからしてあそこだろう。

ええっと、一番上の人で…

レベル201、ランクS。

ふむ、やっぱ低いな。スタートがスタートで、連れが連れだからなあ。基準がもう何なんだか。

クエストも、結構ランク低いな。

この感じだとSランクとかの依頼は個人やパーティに直接行くのかもしれない。

張り出されているものでAとかB+が残っているということは中堅レベルのパーティが多くD~Bが取り合いになってる、とか?

にしても採集系のAランク余りまくりだな、すげえわ。

とてつもなく面倒くさいか、はぐれメタルみたいなのの部位採集なのか?

……どっちもやだな。僕もやりたくねえわ。

でも、採集系で行きやすいのはどこかはアタリをつけておかないとな。”利用”しやすそうだ。

絶野で巴にさせたかった悪企みは諸々の事情で一時停止してた。別行動中はある程度は進めるよう伝えておいたけど、これからは本格的にスタートしないとね。

ん?珍しい、Sランク残ってるやん。ちょい身長が足りないところに付いていたので軽く跳んでその依頼を取る。

少し目立ってしまったのか周囲がざわめいた。もっとも、誰も取る気配が無かったから競争にはなってなかったけど。

なになに?

”求む!ルビーアイの瞳 最低1個から引き取ります。当方6個必要としております。必ず高額でお引取りします。レンブラント商会”

タイムリー!

それに商会の人か。これはいい。僕ってついてる。早速人脈とかできちゃったり?

レンブラント商会っていうからにはそれなりに大きな商売やってる商人かな。Sランクの依頼だ、報酬だって相当高いだろうし。

うむ、これは他の連中に事情を話してルビーアイの瞳は全部もらっちゃおう。狩ったのは僕だし問題ないよね。

最終的には実力行使でもいい。だってあいつら全員相手にしても澪一人でぼこれるし、くくく(悪笑)

「お兄ちゃん、ちょっとコワイ」

「若様。悪企みですか?」

引き気味のリノンにノリ気味の澪。僕はリノン側にいたいな。

[違うよリノン。少し面白い依頼を見つけただけだ]

「ふーん、あ、お姉ちゃんたち!」

話が終わったのか。

見るとそこには確かに四人組がこちらに向かっている。

ちらとランク表を見る。

考えてみると、上位10位までならトアもドワ娘も下位だけど入るな。あれで結構強いほうに入るのか。うむー。

正直彼らの事は賑やかし程度にしか思えないんだが……。

ギルドの人はいなさそうだ。面倒な事にはなっていなかったようで。

状況を説明するのは前のベースで受けた依頼だ。その証となる書面も最初に見せていたから、彼らはこれでギルドからの直接の依頼を果たした事になる。

結構嬉しそうである。

「ただいま、リノン。お2人に迷惑かけてない?」

「ちゃんと静かにしてたもん!」

姉妹の会話だ~。いいな~姉妹って。僕にもいたんだけどねえ、いや考えてはならんな、これは。

リノンはとても良い子にしてました。

[おかえりなさい、依頼は無事終了ですか]

「ええ、おかげさまで。でも良かったんですか?お2人も依頼達成の報酬は受け取る権利があると思いますけど」

トアさんの気遣いは有難いけど。巴のいないところでランク上げました、依頼受けました、頑張りました、なんて言ったらさ。

また煩いことになるんだろうな~と。

ここまでの雰囲気と状況を考えるとそこまでガツガツいかなくてもランクは上がっていってしまうような気がする。

[いえいえ、僕らは冒険者としての名声は二の次ですので。今回は皆さんに譲ります]

そうか!これを交換条件に瞳はゲットだ!

「何から何までお世話になりました」

錬金青年だ。

「経験にお金にランクに素材、本当に助かった。ライドウ殿に大地の精霊の加護がありますように」

ドワ娘だ。

「後で、弓をどこで習ったか、教えて」

エルフ娘だ。それは無理。

「おかげさまでレベルもランクも上がりました。夢みたいですよ。ほらほら」

トアさん。警戒心薄れてんな~。

どれどれ。皆さん嬉しそうにギルドカードを見せる。

トアさんは、レベル125、ランクA、闇盗賊。なんだ闇盗賊って。物騒な名前で近づきたくないのは間違いないが。

ドワ娘は、レベル122、ランクB+、神官戦士(地)。地の精霊に仕える騎士さんってことかな。

錬金青年は、レベル114、ランクB+、アルケミーマイスター。…錬金術師じゃいかんのか?ガンダムに乗れそうだな、おい。

エルフ娘は、レベル108、ランクA-、ブレスガンナー。ガンナーって……銃士!?だってお前弓もってたじゃん!?この世界、銃あったの!?

確かに。誰も彼も一回りはレベルアップしてるな。

エルフ娘なんてレベル100無かったのに、結構な上がりっぷりだ。

ということは一回とはいえあれだけ頑張った僕もレベル30くらいにはなってる、かも?

[用事は済んだようですし出ましょうか。それとも、まだここでやることがありますか?]

「私たちはありませんけど、澪様とライドウさんは登録、していかないと」

一斉に四人が頷く。すげえシンクロ。

なぜそれを君たちが楽しみにする?

[僕らは巴が合流したら一緒に来るつもりだから今日はいいんです。巴が拗ねてしまいますよ]

「巴さんなら拗ねますね。確かに」

澪もそこのところはよくわかっている。

別行動とはいえ、節目は一緒にしないと気にするタイプだろうからな。

「え~皆の驚くところがみたかったのに~!」

トアさん、それなんて無責任。

[明日にでもまた来ますからその時に来てもらえれば見れますよ]

唐突だけど宿は別、いやお別れですよ、という意思表示。

いつまでもってわけにはいかないしね。

なにせ、僕らは諸国漫遊が目的みたいなものだから。

ついでに言えばこの世界における冒険者のパーティというものレベル差が一定以上あると組めないらしい。

冒険者としては恩恵の大きいパーティというシステムを利用するには、僕らはアンバランスすぎる。

確か……

「……そうですね、ここまでは旅の道連れでしたが確かにここからは目的地で道のりは大きく変わる」

「ライドウ殿は、信じ難いが商会として商売をして歩くというから確かに」

「パーティはレベル差が20以内でないと申請が認められない」

20だったか。じゃ澪と巴も組めないんだ。

[ええ、ですから昼食に何か軽く食べて荷台の荷物を分配。それで一度お別れということで]

「一度?」

トアさんが期待を込めた声で聞き返してくる。その期待には応えれないですけど、僕なりに情も移ってるのでそれなりには考えてる。

[皆さんが急ぎでなければ夕食をご一緒してお別れ会といきませんか?みなさんとしてはギルド依頼の成功打ち上げってことで]

『賛成!』

快諾どうも。

「若様。前みたいのは嫌ですよ?」

澪、お前の言いたいことはわかる。今回は居酒屋風のところをチョイスしてバクバクいこうぜ。

それにここまでは保存食やその他も味気ないものが多かった。

[そうだな、澪。皆さんは以前ここに来たことがありますよね?]

頷く面々。なら任せよう。

[それじゃあお任せしますので気軽にたくさん食べて飲めそうな所を選んでおいて下さい。楽しみにしてます]

[勿論、リノンちゃんがいても大丈夫な所で、ね]

自分の言葉に付け加える。

じゃあ、夜は決まりとしてとりあえずの昼食だな。軽くつまんで分配とかの話もできそうな所か。うむ彼らに丸投げしよう。

[では出ましょうか]
ご意見ご感想、一言に評価、よろしければお願いします。
お待ちしています。

3/3 文章追加致しました。
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