支離滅裂な異世界モノでお送りしていますが読んで頂けたら幸いです。
よろしければ、ご感想お待ちしております。
では、どうぞ^^
「お兄ちゃん、いくら若様っていっても馬車も運転出来ないのはちょっとダメじゃない?」
朝の冷気も冷め切らないというのに横に座って手綱を握る少女が冷たーいお言葉を掛けてくれる。
別にできないわけじゃないやい。
巴と澪のよくわからない設定その何番かに「馬車を動かせない」ってのがあっただけだい。
やってみれば多分手綱も必要なく操作できそうな気がする。
だって引いているのは見た目は普通の馬、だけど本当はその頭には角二本。術か体質で出来るのかはわからないけど隠している。
バイコーンというれっきとした魔獣で、うちのオークやリザードマンが騎馬や足として利用しているのだ。
つまり言葉通じる。僕は一体どこまで意思疎通できるんだろうね。今のところ無機物とヒューマン、植物以外はいけてる感じだが。
そういうわけなんで手綱なんて格好だけ持っておいて指示出せばそのように動いてくれるのだよ。
だけど変人扱いが加速するという理由で出来ないことになった。わけわからない言語で馬と話すのは奇人ですぞ、と呆れられた。
……幻想世界で侍やろうとしてる奴に言われたくないんだけど。
人様から見た自分がなんかよろしくない今日この頃。
[すまない、なにもかも二人に任せきりだったので]
「む~。お金持ちでも商売人の跡取りがそれでいいの~?」
まさにその通り、良くないですよ。
流石はこんなハングリーなとこで生活してるだけのことはある。実に精神年齢のお高いこと。
見た目からして10歳前後だろうに。ちっともゆとってないねい。
[だからこのように放り出されているのさ。見聞の旅というよりは勘当に近いかもしれない]
「あ~。そうなんだ。納得~。でも、それなら澪さんがいなくてコレ、ちゃんと売れるの?」
納得されちゃったか~。姉さんに似ず苛烈な性格だこと。
もっとも、あの似顔絵の僕の世界でのそっくりさんと比較して、のことだけどね。
昨夜は彼女の描いた絵がまったく、僕の知り合いにそっくりで取り乱した。
巴や澪にも多少八つ当たりのように接したかと思うと多少の自己嫌悪を覚える。
[ああ、この商品については正直誰が売っても同じだ。ある意味ではね]
これまでこちらを見ずに話しかけていた子がこちらを向いた。
「え?なんで?」
[これは僕も初めて見るものなんだ。いくらになろうと路銀も心もとないので売ってしまうつもりなのだよ。青果は次のベースに持っていくまで保たないだろうしね]
「ねえ、こんなこと教えてもらえないかもしれないんだけど」
[なんだ?]
少女が多少の遠慮で言葉を一度止める。この女の子、姉を探してってことだけど…それだけじゃないのかも。
「これ、見たこと無い果物ばかり。それでとっても美味しい。どこで手に入れてどうやって持ってきたの?」
試食の印象は相当良かったからな。目からは鋭さが伺える。情報屋、悪くするとスパイ、か?
だが姉云々の事情は本当のようだしな、前者なら商魂たくましい、ちょっと過ぎるくらいだけど後者だと……。
姉の無事と引換えに情報を手に入れて来い、みたいな?
いや~もしそうだったら裏で手を引いている人たちは真面目に救いようが無いぞ~。
十歳の幼子に何させてるんだって感じ。小学四年生だよ?
[ふむ、それについては信じてもらえるか自信がないのだが]
「なになに?」
めっちゃ興味津々だ。わかりやすい。
まぁいい。どうであれ、この商品その他については考えがある。
情報の公開はむしろ歓迎だ。これで少女の狙いも探れるのなら言うことは無い。
[僕たちは本来この世界の果てに来る予定ではなくてな。偶然にこの地にたどり着いた]
「うん」
[それで放浪していたわけなんだが、ある時に深い霧に呑まれたんだ。それで霧の中進むと、なんとそこに集落が現れた]
「集落?この辺りに?」
[ここからは二日三日ではないだろうか。その集落は何と魔物のものでね]
「ま、魔物!?」
[そうなんだ、しかも皆が共通語を話し実に好意的だった。そこで数日世話になってこの品々をお土産にともらったのだよ]
「……」
お~疑ってる目だ~。まったくの作り話だから無理も無い。
ま、これから「真実」になるんだがね。
[ほら信じがたいだろう?]
「う、うん。魔物ってどんな?」
[オークにリザードマン、ドワーフに何とアルケーなんてのもいた。実に不思議な場所だった。夢かとも思ったのだけど、モノは確かに持っていた]
そういって荷物を見る。
実際に在る物はやはり説得力がある。ちなみにこの話交易所では言うつもりは無い。ただ珍しい物だといって売るつもりだ。
それでこの少女の質問に他意があるかどうかわかる。
「そんなにいたの!?信じられないよ~」
[ああ、今でも霧の中で見た夢ではないかと僕も思うよ]
「二日三日先の霧、かぁ」
考え込んでいる。この世界の子供の様子に明るいわけじゃないけど、この娘の昨日の様子と比較してみても今のこの娘はかなり怪しい。
[ん、リノン、ここが交易所じゃないか?]
僕は年齢不相応に思考する幼女を呼び戻そうと彼女の名を綴る。この幼女の名はリノン、お姉さんはトアさんというそうだ。トアさん、僕の一個下だった。養う場所に大いに問題があるとは言え、既に一人立ちして妹を養う彼女に尊敬の念を覚えるね。
僕らの世界じゃ16歳なんてほとんど義務教育みたいな高校生だもんな。
「この付近にそんな集落の情報は無いし…」
文字の会話はこういうとき不便だ。
目が向かないとまったく反応してもらえない。
仕方ないので肩を何度か叩いて気づかせることにした。
「ひゃあ!もうセクハラだよお兄ちゃん!って、あ、あれ?」
セ、セクハラあるんすか!?この世界侮れねえ!基本的な人権すら無い所でそんな高度な言葉が出ようとは!
[あの後ろの建物が交易所じゃないかと]
「あーー!通り過ぎちゃった!ごめんなさーい!」
ぽりぽりと仮面を掻き。この世界にもセクハラってあるのか……。と内心驚きつつ。
少し進んで反転する馬車で降車の準備を進める。
さて、交易所。
流石に新顔の僕はとても目を引く存在のようだった。仮面だから無理もない。
何故かリノンは馬車にいる、といって頑なに交易所内に入るのを拒んだし。
あれか。服装がボロみたいなのだったから遠慮したのかな?
でも服屋に行くにも場所はわからないし、多分朝一には開店してない。
それにたまたま知り合った程度の相手に服を贈るってのも何だか金持ちの道楽みたいで好きじゃない。……普通しないよね?
「おはようございます、初めてお目にかかると思いますが本日は何用でございますか?」
[おはようございます。昨日使いの者をやってこの場所を知りました。黒髪の、変わった服装の女性なんですが]
「!あの、失礼ですが」
[申し訳ない。故あって言葉が不自由なのでこのような筆談で失礼します]
澪の容姿を簡潔に説明する。
どうやらインパクトがあったらしく目の前の男性は彼女を記憶していてくれたようだ。
さらに筆談でも特に問題なく応じてくれる。ありがたい。
「あぁ、あの。としますと、もしかしてギルド証を紛失されたという…?」
[ええ、お恥ずかしい限りで。私はまだ商売に携わって間もないこともありまして本当に困ってしまって]
「でしょうな、ここに到着できたのも奇跡に近い。運、という意味で非常に才覚をお持ちなのでしょう。羨ましいことです」
嫌味にしか聞こえない。その運が無いんだよ!致命的に!
[本当に、ここに来るまでに不思議な体験を多く致しました。それで、その体験の中で手に入れた物を是非買い取って頂きたく伺いました]
「ギルドの証なくては堂々と売ることも出来ませぬからな。それでも闇に売らず交易所を通して下さろうとする姿勢、同じ商人として嬉しく思いますよ」
男性はやや豪快に笑うと商品のところへの案内を僕に促す。昨夜の泥棒とは無関係なのか、末端には連絡がないのか。
なんとか会話は問題なくできるからそれとなく伺うのもいいか。
[この馬車の荷です]
リノンはちゃんと馬車の御者台にいる。逃げるつもりでもなかったんだな。
「ふむ、あれは貴方の奴隷ですかな?おい、荷を見せてくれ」
なに?奴隷?
……、なるほど。確かにあの服装で御者をしていればそのようにも取られるか。
そうか、色々と自分にとって聞きなれない言葉と一緒に語られていたから気にしなかったことだけど…。
結構普通に奴隷がいる世界なのか。
この商人のおっさんにしても普通に接してるしな。
だったらどうしてセクハラなんて言葉があるんだよう。その言葉は外見にまずい僕にとっては今後結構デリケートに絡んできそうなんだよう。イヤでござるイヤでござる。異世界でセクハラで収監とかマジで勘弁でござる。
だが、間違いは正しておかないといけない。リノンも反論なく荷を見せようとしている辺り、慣れている扱いかもしれなくてもだ。
[失礼、彼女は知り合いでここに案内してもらっただけです。奴隷ではありません]
「っと、そうでしたか。……」
無言でリノンをみやる男。
「失礼しました」
波風を起こすこともないと思ってくれたのかリノンに謝罪する。リノンはやや驚いたように目を見開きながらお辞儀をして荷を隠していた布を荷台の側面に固定してくれた。
「こ、これは…!?」
[どうです見たことの無い果実でしょう?どれも実に美味い。どうぞ、ご試食ください]
僕はリンゴを二つ取り、一つを渡し、もう一つをそのまま口に持っていって食べてみせる。
「では、頂きます」
僕が普通に食べるのを見て安心してくれたのだろう、商人も一口食べる。
その瞬間、目を見開いてリンゴを見る。そしてまた一口。
こぼれる果汁を逃さぬように彼は一気にリンゴを食べきってしまった。すげー、余程気に入ってもらえたようだな。
これなら売るだけなら大した苦労もなさそうだ。
できれば宿代の何割かを補充できるくらいの買値を提示してもらえれば僕としては問題ないのだが。
[お気に召したようですな]
「これは、こんな美味い果物は食べたことがない!一体どこで仕入れなさったんです!」
[それは企業秘密、というものです。すべてここで卸していきたいのですが引き受けてもらえますか]
「企業秘密!?そんな、これを独占するつもりですか!?」
[独占も何も。これは少しワケありの入荷品でしてね。再度の持込が出来る確証がないのですよ…]
「えええ!?では今回一度限り、ということですか?」
[そうです。数日後には発とうと思っておりますし。なのでここで全部売ってそれで終わりです]
「うむー。そうですか、これ一度きり」
[おいくらで引き取ってもらえますか?]
「他の物の試食できますか?」
[もちろん、ただそれほど大量に持っているわけではありませんので各種ひとつずつでお願いします]
「承知しました。量はどれほどになりますかな」
[この馬車に乗っているだけですので四種四箱で十六箱です]
男は仲間を呼んで僕の渡したリンゴ(一つは完食したので特別にもう一個渡した)、桃、梨、石榴を味見した。
……適当に選んだつもりの4種類だったけど、どれも原生種の割には食用としてしっかりしていた。
それだけじゃない。こうして見ていても、亜空で育つ植物のでたらめさに驚く。季節もくそもあったもんじゃない。
もしくは超局地的に気候が違うとか?某グランドラインみたく。
まあ、味は折り紙つきだ。元の世界で食べても美味しい部類に入るクラスのものばかりだったし。今後品種改良をしていこうと思っているんだけど、そんなに苦労しないのかもなあ。
ハイランドオークの農耕の習慣はここで活きてくれることだろう。
「いや、どれも素晴らしいものです」
[ありがとうございます]
「それで値の方なんですが」
[はい]
「品質は満場一致で申し分の無いものでしたが、何分初めて扱う品。我々の臆病もご考慮頂きたく」
美味くてもわけのわからないものだから安く買うけど許してね、って訳せばいいのだろう。
「……」
「一箱あたり金貨で30枚。合計で金貨480枚でお願いしたいと思うのですが」
たっけーー!!
多分こいつらものすっご足元見てると思うけど、それでもものすごく高価!もはや貴金属!比喩じゃなく宝石箱か!
表情には出さなかったけど、僕は正直こいつら馬鹿だ~と本気で考えていた。
宿代の何割どころか全部ペイできてしまった。
ま、ちょっとごねるか。すぐOKでは希少価値感があるまい。全部で金貨100枚くらい吹っかけて反応を見ようとしていただけに完全に毒気を抜かれてしまった。
大体、全員でこちらの返事を待つ顔がわかりやすい。彼らからするとここから交渉するつもりの最低価格のつもりだろう。
[それはまた…随分と。ですがここは僕が買っていただく身。ご無理を言うべきではないでしょう]
「そ、それではこのまま!?」
わっかりやすいなあ、おい!
[いえいえ、キリが悪いと思いますので総額で金貨500枚でいかがでしょうか?それなら私に異論はまるでない]
はした金ともいえるわずかな上乗せ。二百万がはした金……。何やってるんだ僕は。
「500、ええ!では決まりですな!おい!」
荷物運びと金を出す人間を呼びにやる商人ズ。
どいつもほくほくした顔をしている。
おそらくこれらの行く先は貴族さんとか大商人の所なんだろうな。
この町で下手にフルーツ盛りとか頼むと、ぼったくりバーよりも高いお金を適正に求められそうだ。
僕の売ったこいつらは一体一個いくらで売られるんだろうかね~。2~3倍は固い気がしますな。
10倍くらいになってたら笑うわ。灼熱に笑うわ。億越えだぞ?どこの大物ルーキーだよ。
リノンなんて値段聞いて完全に放心して石になってるし。うーん。
彼女の場合、自分の年収よりも、下手をすると姉の年収よりも高いかもしれない果物を食べたことになるからなあ。
[はい、では確かに500枚受け取りました。どうもありがとう]
「こちらこそ!ご滞在中に珍しい物を手に入れる機会がございましたら是非またお越し下さい」
[ええ、それでは]
リノンを石化から復活させて手綱を握らせる。
まだショックはあるのだろうが500枚の金貨を積んだ馬車はリノンの手によって宿に戻っていった。
適当に収穫した果実は5000万円になりましたとさ。
急いで仕上げようとしたつもりなのに、短くなるどころかむしろ少し長めに…。
どうしてこうなった。
今日は編集作業でごたごたしてすみませんでした。
今度こそ次の投稿は少し間が空くと思います。
それでは~^^
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