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料理茶屋に料亭、それに舟宿。陰謀といえばここ。
それくらいの高級店にやってきました真君PT。

嫌なお約束は続くもの。extraを挟みましたが本編です。
では、どうぞ。
序章 世界の果て放浪編
あぁ、ここは川傍の料亭か。…違うわ!
カチャカチャと。

わたくしライドウさんがナイーフとフォークを使ってそれらしい料理を食べております。

グサ!バクッ!グサ!・・・・・・

お隣で、それはそれは上品な和風美女がフォークのみを使って極めて原始的な刺突で口に料理を運んでおります。

澪には…テーブルマナーってのを教えよう。

少なくとも必要な場では「らしく」振舞ってもらえないと困る。ひっじょーーにだ!!

ま~注目を集めますわ。

僕らの他に冒険者らしきパーティは特にいない。

いるのは主に料理を食べに来た客で宿泊者とはまた客層が違うような気がする。

返す返す、あのボーイめ。一番高いプランを売りつけやがった。

こわごわ案内されてみればドレスコードがありそうな高級なレストラン。

難民キャンプにだぜ!?

どんだけ贅沢なんですか、とマコトはマコトは考えてみた(某妹風)

どんな食べ物が出るかとテーブルにつけば綺麗に並べられたナイフにフォーク。

おいおい、「そういう料理」が出てくるのかい。

その通りでてきましたというわけ。

で、期待を裏切らない見事な味の料理を味わいながら周囲の客を観察する。

貴族っぽいのとか、商人らしいのとかばっかり。本当に貴族なのかはわからないけど、良くあんな動きにくそうな服着てられるな。ここは冒険者集う武者修行の最高峰、正気を疑うレベルだ。

冒険者は金があってもこんな堅い所にはこないかもなあ。

目の保養になりそうな美麗な食事風景がそこらで展開されつつもこちらの黒髪の御仁の豪快な食べっぷりで観察に気を使うこと使うこと。

おかげさまで「こちら」にきてから初めての手の込んだ料理だってのに味がいまひとつにさえ感じられる。つくづくだね。

ばれないように観察したいのに、こっちが皆に注目されてる状況って、もうね。

もちろん、界も使いながら、確実に任務遂行してますけどね。巴と尾行の監視も兼ねてだけど。

会話もできるだけ拾うように心がけてはいるんだけど。

いや、なんていうかさ。

この場に巴がいたら小躍りして喜んでるよ、きっと。

胡散臭い会話が実に多い。

やれ武器の在庫がどうだとか青果の利鞘がどうの、実験、材料etc。

間違いなくここにいる客の半数以上、悪。

時代劇でいうところの何とか屋とお代官だ。一体何話分なのかねえ。

お金持ちイコール悪い奴と決め付けたくは無いけど、なんだかもうお約束過ぎるなあ。

これから行く先々でこんなレストラン探して情報収集とかするハメにならなきゃいいけどさあ。

「若様、この料理、味はいいんですけど量が少なくありません?」

フォークを止めても君の興味は食、なんですねえ澪さん。

[これは一品の量がどんとある種類の料理じゃなさそうだから仕方ないよ]

人目があるので澪にだけ見えるように胸の前で文字を書く。

「一口で終わってしまいます…」

澪は本気で残念そうにしている。魚の切り身を多分バター的なソースでふっくらと香り高く仕上げたであろう一品をパクリと。

一口で食べやがります。

そか、白身魚のムニエルに似てるな。バターに比べると独特の香りがあるけど多分「世界差」ってやつだね。

[だからこうやってナイフとフォーク両方使って少しずつ切り分けて楽しむんだよ]

やって見せてやる。が、どうやら不評。物足りなそうですよこいつは。

[お前は僕の下僕だ、主に恥をかかすような真似を今後も続けたいなら構わないけどね]

呆れた仕草と一緒に多少高圧的に伝えると澪は顔色を変えてコクコク頷く。

気が利くのか利かないのか。まったく理解に苦しみますよ主としては。

難しそう、というか明らかに難しい様子で右手にナイフを持とうとする澪。

今日、今から実践しないでも、おいおいでいいんだがなあ。向上心はある、のか。

[ゆっくり覚えればいい]

ホッした澪を一瞥。

この分だと、巴も懐からMy箸を取り出しそうだ。注意しとかないと。

大皿でどーんと出てくる居酒屋さんとかのが気楽で良いよ。

未成年だからお酒は無いけど、以前に友人の親がやっている居酒屋でノンアルコールの打ち上げをしたことがある。

ああいうのが楽しくて気楽で言うことが無い。

明日はそういうとこ探してみようかなあ。

しかし。

不愉快だ。

先ほどから聞き耳を立てている周囲の会話である。

自分たちが上流階級だと思っている人間の発言ってのはこうも醜いもんなのか。

吐き気さえ覚える。あ、ご飯は美味しいっすよ?多分。

本当に金持ってる上流階級の人間はむしろぶっ飛んでいて嫌味すら感じないものだ。

少なくとも、僕の周囲にいた「すごいお金持ち」はそうでした。

社会勉強とかで下界に下りてきてるのか何なのか知らないけど、常識のレベルそのものが違うと、それこそ学ぶことで弊害がでそうな気さえする。

本人、楽しそうだからってアトラクション感覚だった。お金を使わない美徳ではなくお金をたくさん使う美徳を持っていた。

某ハンバーガーを食べに連れて行ったときは「この味のついた粘土は何?食べ物なの?」

って。目、輝かせていたよな。確か(遠い目)

いやいや、レベルがちげーっす。それに友人の経済状況なんてまるで気にした風もないし。

経済力が友好関係の天秤になーんの影響も与えんのだ、あいつらは。既にそんなのどうでもいいくらいのお金があるからでしょうな。

それに引き換えここにいる奴らは。

他人を見下して利用してお金に換える。それしか考えていない。

そんで、より上のポスト、大きな利権にありつこうと金を使う。

どう考えてもコレの行く先があの超絶お金持ちと重なるとは思えない。

思えないが……。

世のお金持ちたちの最初はほぼ泥棒、強盗、侵略者の類だろうからな。何百年もすれば品格とかもついてくるのかもしれん。

うーむ。

奥が深いね人生ってのは。

ここでの彼ら”モドキ”の連中の会話の要約はこうだ。

金が無い奴は武器買って狩りにでろ。

資源も素材も手に入らなきゃ、戻ってきたときに一文無し、二束三文と少しの時間で借金漬けモルモットの出来上がり。さながら浅漬けのごとく簡単だ。

何かが手に入ればそれでうまい飯食わせて金を回収。食品は錬金術です、と。

最初のくらいはまだ納得できるけどさ。実力主義ならお金は自分で稼ぐってのは納得。さらにここに来る連中は金稼ぎよりも腕を磨きにきてるやつが多いようだから一層にね。

だけどモルモットってのは、聞き逃せない言葉だよねえ。

武器は安く垂れ流して人使って。物持って帰ってくれば多少は高いだろう生鮮食品を完全ぼったくりで提供し。高い宿に泊め。

何も持ち帰れなければ借金に手を出して行き着く先は「モルモット」なんだろう。

お金はどのみち自分たちのところに戻ってくる、と。しかも増えて。

しかも悲しいことにその手助けになるのであろう食も異性も贅沢も、弱者が自らが生きるために提供しているという現実がある。

悪循環、いや利益を受ける者たちからすると良くできたシステムだろう。

「周りのせいで食事も今ひとつですわね」

あ、と。

僕もまだまだ表情にでるな。

澪も一応は聞き耳くらい立てててくれましたか。そこで止まるのが難点だけど前進は認めていこう。うむうむ。

[悪いな顔に出たようだ]

「いえいえ、同席しての食事に水を差されているのはむしろ私もですし」

……。

よく見ると澪さんも結構我慢した顔してらっしゃる。

こいつ、こらえ性もあんま無いのな。

ふむ……いわゆる「愚鈍」?

いやいやいや。

結論はのんびりいきましょ。

[ま、最終的には巴の趣味の犠牲になりそうだ。考えると、少し不憫、かもな]

だって、成敗!!ってノリなんだろうし。

峰打ち、するかなあ?

まず問答無用だよな。

目の前でズバズバ血飛沫が舞うのか。

冷静に考えると、近いうちに僕は多分人を殺めることになるだろう。

だけど、元々それを最大の禁忌のひとつに数える環境に十何年も生きてきた僕からするとどうにも。

リアルに考えれないというかね。

出来ずにパニック、ってなことになっても巴と澪がいるからこちらがどうにかなることは無いのだけど。気楽に、は、なれないな。ふぅ。

殺す、ころす、コロス。

刺して斬って撃って殺す。

リズーの時はつもりすらなかった事故だからそんなには感じなかった罪悪感。

魔族の時は存在を感知してなかった。

巴や澪の時はむしろ、そのナリからして僕のほうが命の危険感じまくってた。

今その対象を人に代えて想像してみると。

笑えた。いや。驚いた、かな。

人を殺す場面の自分が、「普通に」思い描ける。

まさか本当にこんな風に罪悪感も何も感じることなく実行できるわけないけど……。

わけはないはず、なんだけどさ。

僕は自身に一抹の不安を感じながら食事を終えた。

「巴さんはどこか争いごとを望んでいらっしゃいますから」

[一時間の〆だからね]

「??」

澪は言葉の真意が掴めずにハテナ顔をしている。これもまた絵になる。うむ、美人は何をやっても良いってわけだ。

そうだな。少し散歩でもするかね。どのみち、明日交易所に行くのだ。下見で道だけでも覚えておくのも一つ。

荷は巴に任せておけばいい。

澪は出された酒を空けてこちらも食事を終えたようだ。

ちなみに僕は飲んでない。ここが安全とは思えないからだが。

そして澪には敢えて勧めた。酒の作用がこいつらにも同じか知りたかったからだけど。

ま、ザルか。ほろ酔いくらいはしてそうだけどな。僕もいくらか酒を仰ぐふりをして酒が入った二人組を演出。

これで尾行以上の何かが撒いてあるならイベントに遭えそうな予感はしますね。

さて。

鬼が出るか蛇が出るか。

[出ようか、澪。少し歩こう]

澪は言葉の真意には気づいてくれなかったのかノッてくれたのか跳ねるように椅子から立ち上がってコクコク頷いた。
お気に入りに入れてもらえて感想がもらえて評価してもらえて。

正直今、書く意欲絶頂期です。こういう時に書き溜めて更新ペースは一定に、と落ち着いていきたいんですが…我慢できません。

次は明日投稿しますね。書き溜めはまたすればいいんだ。
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