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序章 世界の果て放浪編
最後の街で冒険者登録
「は? えっと、登録、ですか?」

あからさまに「何を言ってるんだこいつは」って目をされた。

やっぱりな。ここで登録するルーキーは居ませんよね。そりゃ判ってますけどね。

「ええ。とは言っても、こちらの方は後学の為に。本格的に登録したいのは我々二人です」

澪がすかさず言葉を挟んでくれた。

「はあ。しかし、随分と怪しい格好ですけど、そちらの人、なんなんです?」

僕を見て説明を求める係の女性。「は?」って言われて怪訝な目で見られたり、面と向かって怪しいって言われたり。

マジで可愛いっす。週刊誌のグラビアとかしてても不思議じゃないな。それだけに余計傷付くんだけどさ!

ま~左手にはピンクと白の指環を一つずつ。

体に対して大き目のサイズのグレーのローブを纏って、顔の上半分を覆い隠す仮面。

怪しいよなあ。しかも本人は喋らないし?

「こちらの方は、さる商会の跡継ぎなのですが、幼少の頃重い病を患いまして声を上手く出せぬのです。しかも、見聞の旅に出た後に事件に巻き込まれ重度の呪いを受けまして」

呪い、という言葉に女性が汚物を見るような目で僕を見る。刺さるなあ視線。中々攻撃力高いよ……。

何かしら、この凶悪な設定。僕の人生そこまで酷かったのか。いい加減世を儚むくらいはするよ?

ただ説明する澪は彼女の僕に対する態度の一つ一つを見て不快さを隠そうと表情をピクピクさせている。というかお前らが考えたんでしょうがこの設定は。

カタカタという音に横を見れば、巴が刀に手を掛けて震えてます!

わお!

慌てて僕は彼女の手を掴み、巴を睨む。渋々と、本当に渋々と頷き頭を下げる巴。

この設定はお前らが以下同文!

「呪いを封じ込める為に、止む無くこの仮面と指環をつけております。ですが主人は魔力に秀でております故、会話でしたら」

澪はこちらに目配せをする。

僕は自分の顔の少し横の空間に魔力で共通語を使って[こんにちは]と書き出す。

女性は驚いた様子だったが状況に納得はしてくれたようだ。筆談は何とかいける様子。一安心だな。

「このように問題ありませんのでご容赦を。私ども二人は腕には自信がございますが、元々主人に仕える身ですのでギルドに登録などはしてきませんでした。けれど今後の為にやはり登録はしておこうと思いまして」

巴も澪の言葉に軽く頷いてみせる。

「何か、問題が?」

穏やかな中に威圧を込めた澪の声。こいつもやっぱ怒ってらっしゃいますね。まあ、さっきは巴に道を聞いてもらったから今度は澪に説明役をやってもらおうと役を振ったんだけど。これからどっちに説明役を頼もうか迷うな。まだ少し様子見だな。

「あ、いえ! そういう事情でしたら問題はございません。ここは知っての通り、それなりの実力者ばかりが集まる場所ですので、登録などされる方はこれまでに一人もいなかったのです。その、失礼しました」

どうやら、登録は出来そうだな。つうかお姉さん、怯えさせてすみません、ホント。

「では登録の為に先にレベルだけ判別させていただきますね。準備がありますので、その間によろしければギルドの説明をしましょうか?」

ありがたい。僕は肯定の意を澪に伝える。

「お願いしますわ」

「はい。当ギルドは、皆様がご想像なさるように冒険者の皆様に各種の仕事を斡旋しております。仕事にはE~SSS、特殊、のランクで難易度が定められておりましてそれぞれ冒険者のランクと同じ仕事まで請けることが出来ます」

ランク、ね。なるほど、そうやって仕事と実力を見合わせながら斡旋するわけか。まあ、なんでもばらまいてたら信用問題になるし当然か。

「そしてランクですが、ギルドに対しての仕事の成功率、及びレベルで判断し昇格していきます」

「あら、それだと高レベルでも最初は最低ランクの仕事から選ばないといけないわけですの?」

澪、その自信どこからくるかね。大人しく聞いておけば良いだろうに。

実力があっても、その裏づけや信用ってのはギルドが判断するんだからそりゃあ仕方あるまい。

「そ、そうです。たとえレベル八十オーバーの方だとしてもはじめはEランクの仕事をこなしてもらいます。ただ、勿論その方にとっては簡単な仕事になるでしょうからランクが上がるのは通常よりかなり早いと思います」

「面倒なものだな」

巴、お前はまたそういう……!!

トラブルはいらないから! 大人しく聞いとけ! 子供かおのれら!

二人を窘めるように見やると二人とも頭を下げて姿勢を正す。まったく。

「各ランクにはマイナス、無印、プラスとランク内の難易度をさらに分けております。例えばプラスの仕事なら3回こなしていただければランクが一つ上がります。無印なら5回、マイナスなら10回です」

幸い係の女性は気にした風もなく続けてくれた。荒っぽいごろつきみたいな冒険者も相手にしているんだろうから意外と寛容なのかもしれない。

ほうほう、ある程度の飛び級はしやすくなってるんだな。

つうか、美人さんなごろつきか。見てみたいような見たくないような。

それならこの二人にはプラスをどんどんやらせればいい。

ん~と、僕としては何か参考になりそうなことや質問はあるかな。

巴や澪との戦いは考えるだけ無駄だしな…。

あ、いたなワンコロが。

後で聞いてみよう。

「あと、特殊ランクの任務についてですが。こちらは基本的にどのランクの人でも請けていただくことができます。ただしその中でおきることは一切ギルドの保険各種が効きません。また明らかに実力が見合わない場合は受注を断らせていただくこともあります」

おや、デンジャラスな空気の仕事だね。

「これは、各ランクで失敗が続いてしまったものをフリーにする意味合いで発生するケースが多く、他に個人を名指しで指名されるケースもこれにあたります」

「前者の場合、S以下のランクでしたら成功時無条件でランクアップ致します。後者の場合、相場を無視した報酬の授受が可能になりますが、例外を除いてギルドランクに動きはありません」

ほうほう。前言撤回。二人には前者の特殊任務があればそっちをやらせようか。

「あとは、ギルドに入ることでこちらの施設や支援組織の援助を受けることが可能になりますので主要な施設を割安に利用可能になります」

お~! それ良いじゃないか! 

なんか無条件に得できるじゃん! 冒険者ギルド、性質の悪い派遣労働者斡旋組織じゃないかと疑ったけど、結構マトモかもしれないな。

「ですが、そちらの」

ありゃ、僕?

「そちらの方の場合、既に商人ギルドに登録されておられるかと思いますので、そちらの扱いが優先されるかと思います。規約で二重に影響する項目がある場合は、商人ギルドの規約が優先しますのでご了承ください」

なるほど。ってか商人には商人のギルドがあるのね。これは盲点。ファンタジー=冒険者だった。ギルドってのは結構数があるものだよな。性格上、そうあるべきだ。職能組合、とか翻訳すると学校で習ったような記憶がある。

いいトコ取りしてお得にやるのはダメってことね。

「冒険者の特権を利用しての買占めなど起こさない、など公益に関する理由もありますのでよろしくご理解のほどをお願いします」

まあ、それで悪いことする気はとりあえず無いし、問題ないでしょ。

ふむ、一通り説明は終わりか。あんまりやり慣れて無い割には、ちゃんと説明してくれたっぽいな。有難いことだ。

手振りで彼女の注意を引き付けてから、確実に見えるように文字を書き出す。

[二つ質問があります。ここの高名な冒険者の情報はどこで知ることが出来ますか? あと、リズーの討伐を仕事として依頼する場合それはランクがどれほどになりますか?]

彼女は僕の横の空間に目を向けてくれている。内容もわかっているようだ。良かった。

何度か確認した様子の彼女は、こちらを向いて説明してくれた。

「まずこのギルドでの高ランク冒険者の情報ですが。ランクとレベルだけでしたらそちらに貼り出してあります。こちらは随時更新していまして、さほどの誤りや遅れはございません。それからリズーの討伐ですが」

「巣の駆除、群れの討伐、部位の確保どのケースで依頼する場合のランクでしょうか?」

おっと、なんか細かいな。だが、それが依頼として「ある」ケースなんだな。ふむ。

[部位の確保、群れの討伐のケースでお教え頂きたい]

僕は続けて質問を返した。

「部位の確保でしたら皮、牙、瞳が該当するでしょうがこちらは基本Cプラスになります。群れの討伐ですとBになります」

ただ、と彼女は続けた。

部位のみの確保だとランクの割りに苦労が見合わないので仕事を請ける者がいないだろう、と。また群れの場合でもリズーは厄介な魔物のため特殊ランク行きになることが多いことを教えてくれた。

飛び蹴り一発だったなんて、こりゃ言えないね。

それにしても……、もしかしてこのランク分けの具合だと二人のレベルがぶち抜きになる可能性高いな。

お姉さんにお礼を返すと、僕は高レベルのリストを見てくる、と二人に伝えて場所を離れた。

300とか400とかがごろごろしてるレベルならともかくそうでないなら二人はここでは登録させるべきじゃないかも。

僕はそう考えてリストの場所に向かった。

……



リストの一番上。

ランクSS レベル四百四十四 ミルス=エース

エースなんてファミリーネームあるんだな。ミスミも相当変わっているとは思うが、エースね。

しかもなんて不吉なレベルだ。死亡フラグが見える。

一つ下はSランクでレベル二百八十。普通の名前。

まあ、どっちも凄く美人さんなんだろうけど。

一位と二位のレベル差を考えると、エースさんは相当に強いと思われる。それで五百に届かないとなると、巴と澪は……。

決まり。

登録は見送り。なんぞ理由つけてお暇しましょう。それが良い。

あれ?

僕がリストを確認していると、なんだろう。後ろが騒がしい。

気になって振り返った僕の眼に映ったのは、紙を持った従者二人。

もしもし? お前ら僕がどうして高ランクのリストを見に行ったか察してないの?

それ、何か調べる紙に見えるよ?

なあ? 基本放置された状況での異世界での展開ってさ? 主に序盤で問題起こす立場にいるのは僕でしょ!?

僕は、かなり心を砕いて事に当たってるつもりデスヨ?

何故に、元々この世界の住人が、こうも僕の足をがっしがっしと縛りつけるかね! 引っ張るかね!

とりあえず、急ぐ。大した距離じゃない。すぐに二人の所に戻る。

折り紙くらいの大きさの紙。二人とも真っ赤な色だ。

なにか複雑な模様があった。

あ~わかる。わかっちゃう。これレベル判別の紙だよ。間違いないよ。

そして元々の色は赤くないよ。これが赤いのが問題なんだよう。

周りの視線が痛い。ひたすらに痛い。

どこのゲームショウに出てくるイベントコンパニオンの集団かと思うような方々の視線が、とにかく痛い。

聞き耳を立てれば、僕が二人の関係者なんだってことは一発でわかってしまう事だ。

僕は大声も出せず、目で二人を思い切り睨む。

ようやく、何の失敗をしたか理解した模様の二人。鳥頭以下のお二人様め!

「あ~その。何やら持った途端にこの紙が真っ赤になってしまいまして」

あはは、と苦笑する巴。

コクコクと同意する澪。

二人とも、僕が少し本気で睨んでいることは了解していただけているようです。数分前に発揮しろ。その感性!

係のお姉さんに説明を求める。

いつの間にかお姉さんがもう一人増えてるし。猫耳だ~、獣人なんてのもしっかりいるんだねえ。うむ、GJですフェリシアさん! 流石に服は着てるけども。

青とかピンクとか、もうカツラみたいな髪の色にも慣れてきたよ。

そもそも本物の獣人なんて、本来初めて出会ったら僕だって驚きの一言や二言出るはずだったけど、オークやらリザードやらもっと凄いのを見てしまっているからか比較的冷静に受け入れることが出来た。

「えっと、これ、レベル四百までを測る判別紙なんですけど…」

すごく、緊張した様子のお姉さん。いきなりランキングベスト3入りが確定した二人が目の前にいれば無理もない。

多分二人とも、エースさんぶち抜きのトップランカーになるだろうし。

この、模様付きの紙の色をどの程度変えるかでレベルを判別するのか。使い捨てかな、勿体無い。

こいつら二人とも、早速レベル四百オーバー確定か。というかこの状況から登録しません、って言うのはもう通らないだろうなあ。

仕方ない、もう開き直って調べてしまおう。

しないと決めてた、ため息一つ。

あぁ幸せ逃げてるなあ。





「え、えっと、ではこちらの六百二十五紙で」

次のを用意するフェリシアさんを僕は手で制する。

[この二人は、少なくとも私を庇いながら一週間ほど、この荒野を無傷で進める実力があります]

嘘は言っていない。二人の、その程度余裕です的な視線がちょっとムカつくけどな!

[実力で言うのならアルケー?クラスの魔物ですら打ち倒せるのです。ですからもっと上の用紙を用意してもらいたいのですが]

どよめく野次馬。

アルケー!? それって暗黒の化身って蜘蛛の化物だぜ!? 災害の蜘蛛の眷属だ!

あの上っていうと九百!? おいおい、この姉さんらどこの達人だよ!?

もし万が一にも千六百紙なんて事になったら、もう精霊にさえ匹敵しかねんぞ!?

ばかな、紙の不具合だ! そうだ、以前のエースの時だって不自然だったじゃないか。あんな高レベルに急に上がるなんて!

色んな声が聞こえる。正直耳を塞ぎたい。精霊ってあの虫女神に準ずるって存在でじゃないですか? 確か月読様からそんなことを聞いた覚えがあるよ。

「九百に千六百!? ほ、本気ですか? これまで使ったこと無くて、ちょっと在庫を見てきます!」

駆け込んでいくフェリシア嬢。

「若、良いのですか?」

騒がれますぞ? と言わんばかりに。

もう遅いんだよ!

無視だ無視!

お。フェリシア嬢再来。早いな。

「あの、こちらになります」

おお、流石に大きい。両手で持つタイプか。

ん、端に止めてある金具みたいなのを外したな。

紙全体に何か微妙な魔力が巡るのがわかる。

ふーん。

もう自棄だ。この判別紙って物を勉強しよう。

[巴、お前からやりなさい]

文字で指示を出す。

「御意」

カウンターに置かれた紙を両手で掴む巴。

紙から巴に、巴から紙に何か力のやり取りがあるのがわかる。

魔力だけじゃないな。僕が界を作る時に感じるような、体の内側からの力を巡らせている様子だ。

水色の紙が巴の右手からみるみる赤く染まる。そういえばあいつは右利きだったな。それが関係あるのか?

どよめきも大きくなる。もう三分の一は赤くなっている。これでレベル五百以上は確定。

半分。

四分の三。ん、動きが弱まってきたな。一気に染色が緩慢になる。

八割、到達しているかどうか微妙なところで動きが止まった。

あ、紙に纏った魔力が消えた。

もう他者が触れても大丈夫なんだろうか?

だけどフェリシア嬢はなにか特別そうな手袋を付けて、恐る恐る金具を付け直す。

何かを金具から読み取っているようだな。ふーん、あれでレベルを数値にして読めるんだ。多分合っていると思う。

フェリシア嬢が顔を上げて溜息を一つ。何かを書き留めると、次に用意したカード状の金属プレートに彼女が魔力を当てているのが判る。

プレートに刻印が済んだのか、もう一度彼女が判別紙を掴むと――

紙が一瞬で炎に包まれて消えた。手品を見ている気分になる。

機密保持? プライバシーの保護?

それとも、使用後の紙に何か危険があるのだろうか?

はっきりわかったのは、あの紙が使い捨てって事だけだな。

「これで登録完了です。こ、こちらが巴様の冒険者ギルド登録証になります」

「おお、ミスリルのプレートに私の顔が写されておる。どうでしょう若」

頷いてやる。文字で話すのも面倒だしな。にしても結構気軽に登場したね、ミスリル。ファンタジー金属も見た目はただの金属なんだなあ。光ったりしてない。

Eランクで、レベルは……うーん、目立つだろうな今後。

なにせ、

「巴様のランク及びレベルは」

固唾を呑む音が比喩じゃなく聞こえてきた。

「Eランク、レ、レベル……千三百二十です」

だからねえ。

「現在冒険者ギルドの……最高レベルになります」

!!!!!!

なんですと!?

ナンバーワン!?

「おやおや、他愛無いのう。既に一番とは。次点はどれ程か聞いても良いかな?」

上機嫌だね。どこまで目立つつもりか!

でも興味はある。トップの冒険者のレベルがどれほどのものか。

「次点は『竜殺し』ソフィア=ブルガ様です。ランクSSS、レベル920です」

巴、馬鹿。……馬鹿。

竜殺しとか物騒な二つ名を背負っている冒険者ですら三桁で留まってるのに!

「ほほう、竜殺し、とな? どんな竜を狩ったのだ、その御仁は」

目を細めて楽しそうに聞き返す。

そうだった、こいつも竜だった。

「ソフィア様のパーティは、確か帝国に巣食う上位竜種『ランサー』を討伐されたと聞いてます」

「ランサー? ほう、”御剣”なぞと驕っておるからじゃ。あの阿呆め」

わーお、ドライなこと。小声で何やら楽しそうですらある。

感情が表に出にくいと評判の自分を褒めたい。そうじゃなかったらプレート見た段階で吹き出していたに違いない。

しかし、巴の奴。知り合いなのは間違いないようだけど、仲は良くないのかね竜の上の方は。

にしてもカッコいいな”御剣”なんて二つ名の竜なんて。

是非存命中に会ってみたかったな。

「では次はわたくしの番で良いですわね」

っと、そうだ。まだ澪がいた。

何となく想像はつくけど、こいつも四桁だろうな。

……測定中。

終了!

はい九割真っ赤!!

金属プレートを渡す手が震えている。

そりゃあね、目の前に竜殺し出来ちゃうかもしれない輩がいると判ればお姉さんだってそうもなろう。

顔から汗が吹き出ている様子は可哀相の一言だよ。

「澪様、Eランク、レベル、せ、千五百、です」

はーい、ゆーあーなんばーわーん。

もうお前らで黄門様やれよ。

うわー目立つ。これから超目立つよ。レベル四桁の護衛を二人も連れた新人商人なんて、世界中探しても僕だけさ!

「なんじゃと!? 澪が1500で、私が1320なわけないじゃろ! おい、係。もう一回紙を持って来い、正しく測り直す!」

ああ、もう。パーティのストッパーは僕一人かよう。

とんとん。

巴の肩を叩く。

[お前が寝てる間も澪は戦っていたんだからある意味当たり前だ。次、僕の番だ]

蜃があの山でぐうぐう寝てる時も澪は空腹のまま世界中を暴れまわっていたんだから。純粋な経験値は彼女の方が上でも不思議は無い。

……正しい意味でそれが”経験”値かと言われるとゼロでも納得だけど。本能のみなんで。

何やら~ですぞー! とか、なのじゃー! とかいってる巴は澪に任せることにして、僕はカウンターに向かった。

[よろしくお願いします]

そう文字で伝える。

フェリシア嬢は恐る恐る九百紙を差し出す。

思わず苦笑。

「私には一番小さいので十分です」

そういって両手サイズの判別紙を辞退。

だって多分必要無いし。

すると、差し出されたのはエマさんからもらったのに良く似た懐かしさを感じる紙。

これですよこれ。

右手で掴む。

おや、変化がある。おお、レベルアップしたの、僕も?

で、ぴたっと止まった。

この紙、特に模様も無いし、どうやってレベル判別する仕様なんだろう?

何て言うか、沈黙が凄く痛い。遠慮なく刺さってくる。

爆笑みたいな反応の方がまだ救いがあるんだけど。

「ええっと、ライドウ様。……Eランク、レベル一です」

明らかに気の抜けた声で教えてくれた。

ええ、ええ、そうでしょうとも。判ってましたとも。

いいんだ、わかってたもん。

ちなみに僕はこの世界で偽名を名乗ることにしました。

女神とか勇者とかにしか意味が無い事ではあるんですけどね。まあ理由の大半は気分なんですけど。

周囲の視線はどうにもなるまい。名前とレベルとランクはどうやら誰でも見られる公開情報らしいから今後も二人の情報は隠しようもない。

僕だけ地味路線でいくからいいんだもん。

それに、救いだってある。情報を公開されてプライバシーを晒される人は高ランクであることが優先される為、それほどランクを上げなければ二人の名が劇的に広まることは無い、かもしれない。

細かいステータスの調査はしっかりとお断りした。もうこれ以上は正直情報を遮断したい! どんなおかしな数値が飛び出てくるかわかったものじゃない。

個人的には自分の数値は知っておきたかったけど、おいおい身内で調べられる方法を探そう。

さて、露店を眺めながら宿屋にでも行きますか。いくつかギルドと提携した宿があるのは係のお姉さんに教えてもらったしさ。

冒険者の皆さんが僕の下僕二人を避けて出来た人垣のおかげで、来た時よりも大分広くなってしまった通路を悠々と歩きながら。

僕らは今宵の宿を選びに出たのだった。
レベルや金額については数字を使ったほうがわかりやすいかと思って使っているのですが、漢数字は一切使わずに数字だけで統一したほうがいいんだろうか。
それとも漢数字だけで表現した方がいいのか。
ご意見があれば下さると嬉しいです。

前日中の2話投稿とは行きませんでしたが休日に進行できて予定通り、といえば予定通りです。それではまた。
小説家になろう 勝手にランキング


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