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寒い。
でも投稿できる時に投稿する。
連続で行けるなら行くべき。

4月から異様な忙しさで死ぬかもしれないのでその前に咲いておきます。
ではどぞー^^
序章 世界の果て放浪編
真、生まれを儚む
きょろきょろ。

顔は動かさず、目の動きだけで町の様子を観察する。

昔TVで見た難民キャンプに毛が生えたような感じ、だな。

町というのはやっぱり言いすぎなのかもしれない。これがこの土地における、ヒューマンを中心とするベースという拠点なのか。

建物は一応木造できちんと(といってもログハウス程度だが)している。所々には、住居や店舗と思われる建物とはかなり様子の違う精緻な石造りの建物も存在している。物々しい警備まで敷かれて、大事な物がありますと言わんばかりだ。集めた資源を置いておく場所、かな。

門番の話では主に修行や資源探索の連中の集まる最終ベースらしいからな。修行目的の人はともかく資源目的の連中は、あの建物への念の入れ方の違いと言い、人道的とは言い難い考え方をしているかもしれないな。邪推で済めば良いんだけど……。

僕からすると初めての町なわけだけど、そのほか全ての住人から見ればここは「最後の」町なわけだ。広場で子供が平和にはしゃいでいる、なんて微笑ましい風景を期待する方が間違いか。

あの絶望の日からどうなったかと言うと。

結論、僕(ら)はまったく正面から町に入ることができました。

先日の人と同一の存在だとは思われなかったようで。やっぱり仮面は万能なんだね。

僕の仮面は顔全部を覆うサイズじゃないから、極端に言えば目隠しの延長に過ぎないんだけど。

適当に名乗った商会の跡継ぎってことで、買い付けやら売り出しなんでもしておりますって感じで門番さんに説明してね。

即席で適当に荷物を積んだ馬車も用意したから、品物の珍しさもあって怪しまれるどころか歓迎された。

特に乾物でない果物やらには大いに興味を持っていたようだ。亜空で手っ取り早く採取できた果物を箱詰めしただけなので、あまり注目されるのも申し訳無く思える。

荒地だし、こういうものは喜ばれるのだろうか。青々とした樹木なんぞ道中無かったから青果は貴重品扱い?

亜空へと移住したエルダードワーフの一部に、ヒューマンの街にいたことのある者がいたので物の相場は多少は知ってはいるが、こんな特殊な場所では本当の意味で気休めの参考にしかならない。情報自体もかなり昔の話なので、予備知識程度に考えておくべきだと思っている。

流通がどれ程確立されているかにもよるんだけど、先ほどの門番の関心は生の野菜果物そのものに向けられていた。

つまり新鮮なものは入りにくく、およそ売り手市場な可能性が高い。他の場所からここに物を輸送するのは、それなりに大変だと思うし。

あまり長居をする心算は無いとは言っても、市場をめちゃくちゃに荒らすような安値で取引をしては、周囲の商人に何をされるかわかったものではないだろう。危険は値段に反映させるのが商人という人種のやり方だろうし。

そうなると、素直に冒険者を名乗ればよかったか。考える事多くて商人路線で通すのも正直めんどくさいかも。

冒険者の登録も、一応はしておくことに決めている。冒険者ギルド、なんてファンタジーな存在があるのもドワーフに教えてもらっている。

だがそれを本職にしてしまうのは、これまた今は都合が悪い。

場所柄、ここは高レベルの人の修行場になっているわけで。

ギルドへ「登録」しに訪れるレベル1のルーキーなんて、この町では皆無なんですな。

僕については後学の為に登録だけしておく、ってことで納得してもらうとして。

残りの二人は用心棒なんだからきっちり登録して、しかも評価をある程度高くしておいてもらわないとまずい。道中の安全にもかかわるだろうから。

レベル1なんてのは僕特有のバグで、他の二人はハイランドオークの持っていた判別紙で高レベルなことが判明している。

ちなみにこの世界、レベルは上限が無いくらい上がるとのこと。九十九で最高値なのかと聞いたら、数百までは確認されている筈だと皆に返されたからな。それで1って…いったい僕はなんなんだって話でね?

あいまいだが二人ともレベル的には百オーバーなのは間違いないらしい。

そしてそれヒューマンの中でもそこそこな位置、とのことだ。ドワーフさんからの三十年以上前の情報だけど。

問題は……。

「お前ら、ぶち抜きの高レベルで周りが全員引くとかは勘弁してくれよ?」

それが問題だ。百オーバーなのはわかったとして、詳しく判別された時にとんでもないことになるのは非常に困る気がする。威嚇にはなるだろうけど、無駄に注目されそうな……。デメリットが大きいよな。

「うむ~、しかしこればかりは我らではわかりませんからな。大体、レベルがどうとかなぞ、ヒューマンやら魔族が気にするモノであって私達には興味も無いものでして……」

ま、もっともだね巴さん。でもお前絡みの不安はこの世界に来てからハズレ無しなんだよ?

「ですわね。でもそういえば昔、レベルが二百五十だか三百だかのヒューマンのパーティが、私の子供の一人を倒したことがあったとか。かなりの激戦だったようで、ヒューマンも何人か死んだと聞きました」

眷属であるアルケーからの報告を思い出したのか、澪が基準に出来そうな、それでいて参考にならないかもしれない微妙な例を出してくれた。

マジかよ。ちょっと、ここのギルドのレベル次第によっちゃあ登録、やめさせるか。アルケーってボスなオーラ全開の方々だし。それでレベル三百だかのヒューマンを複数相手取るとなると、巴と澪はもっと上と思った方が良さそう。

一月ほど滞在してみて、相場やら商売やらの基礎を覚えて、出来れば冒険者の立ち回りも知っておきたかったんだが。ふむ、どうしたものか。早々にボロが出そうな予感。

それにしても。

なんかこの町。

変だ。

そりゃ。最果ての町だ。最後の拠点だ。色んな種族がいるのは納得出来る。

魔族とヒューマンが、戦争を起こすくらい揉めている世界の背景は何となくわかったけど、こんな僻地でまで徹底したものじゃないなら共存していてもおかしくは無い。呉越同舟って言葉もある。状況次第ではあることなんだと思える。

店舗を構えるよりも、露店形式で商品を並べている店が多いのも、この町の建物の数と資源の状況を思えば納得だ。未踏の地に挑む最前線キャンプだもんな。僕の最初の村。

だが、なぜ。

ここには。

こうまでも。

美形しかいないのか。

「なあ、巴。澪」

「む、どうされました若」

「なんでございましょう、若様」

両脇を歩く二人が顔を向けてくる。こいつらもどんだけ綺麗だとは思ったけどさ。あの化け物が契約でこうなるんだから、僕にも何か特典が欲しい所ですよ、マヂで。

「なんでこの町、こんな美男美女が揃ってるの? ここじゃあ美人しか住めないとか、そんな理不尽な決まりでもあるの?」

そうなのだ。

老いも若いも男も女も、ヒューマンもその他も。

みーんなかっこいいんだよ。綺麗なんだよ。ありえなくない!?

僕、自虐するわけでもないけど、ここにいる人たちとオークを両端に並べたら間違いなくオーク寄りな感じがするよ?

あれ、おかしいな目から心の汗がでそう。

一体どうなってるんだか。

だが、思えば巴も澪も特にそこは気にした風も無いな?

?が頭の周りを乱舞する。

「そうですかな? 特に、注目するような美しい者がいるとも思いませんが?」

巴、お前の目は何を見てる。今おまえの横を通ったエルフっぽい女性、どこの彫刻だ? 石膏で型を取るだけで商売になるぞ?

「ええ、そこまで容姿の美しい者は辺りにはいないですけれど?」

澪、その真面目に美人を探す目は本気? 見渡す限りどこのショーに出るモデルさんですか? って美形ばかりじゃないか。

「……本気で言ってる、のか?」

二人はその台詞に肯定を返してくれた。それもかなり不思議そうに。

もしかして、この世界、さっきのレベルの外見で普通、なの?

ま、まぢですか?

…………な、なにそれ、すっげえ僕に優しくないよ!?

待てよ? マテマテマテマテ?

何かとても重大な事実に少し気付いてしまったかもしれないのかもしれないよ? 落ち着け、僕。

まず。

僕の両親はコッチの世界出身らしい。

事実、納得しちゃう程格好良いし可愛い二人だ。うむ、こっちの世界では並なんだろうが。

そして僕には姉と妹がいる。多少、体は弱いものの贔屓目無しに美人姉妹だ。あ、僕は除外しといてね(涙

ぢゃ、ぢゃあ僕って?

大体さ、両親がヒューマンって種で元の世界に来て僕らを生んだってことは。僕は人間でなくて、あれ、ヒューマン?

ん? ん~~~~~?

とすると、僕がこの普通、いやここ的には多分チェンジリング的な容姿レベルなのは何事?

母さんが浮気でもしたのか? それとも橋の下か? いや、どっちも考えられない。

「若、難しい顔をされてどうなさいました?」

「もしかしてどこかお加減が? でしたら建物の中にでも入りましょうか?」

気遣う声がする。

そっか、難しい顔してたか。

うん!!

なんかわかった!!

これは考えても多分絶対ろくな結末は出ない!!

やめやめやめ。

「いや、何でもない。それよりも」

そうだ。何一つ知らないこの世界を今は勉強しないとな。

「後でお前たちの意見も聞きたい。特に露店の商品の値段やライ、いや品揃えはそれとなくチェックしておいてくれ」

ラインナップとかいっても巴はともかく澪はわからないかもしれないか。出来るだけ横文字は多用しないようにしよう。

「むむ、面倒ですな」

「わかりましたわ」

用心棒寄り、巴。番頭の可能性、澪ってとこだね。

「んじゃ、とりあえず冒険者ギルド、で名前は合っているよな? そこに行こう。巴、場所を確認してくれるか」

僕じゃ二人以外とは筆談になるし。今だって変に怪しまれないように、気を遣って小声でぼそぼそと話しているんだ。

ふん、「あーうーえー」とかどこぞの半漁人みたく唸ってる言葉なんて話せなくて良いんだ! 僕には美しき日本語があるんだ!

……悔しくなんてないやい。

「御意」

巴はそう言うと、露店を開いていた中年の男性に声をかけて道を尋ねてくれる。こうやって人を使って聞くのが今の僕にとって一番無難な選択だ。悲しいけど。

そういう意味では、タイプの違う二人が従者なのは実に有難いことかも。

「若、その角を右に曲がって、正面突き当りが冒険者ギルドだそうです」

無難にこなしてくれたようで何より。

さて、では行きますかね。






~深澄真の日記・初めての町より~

元の世界。

それはもう戻ることの出来ない場所だろう。

でも僕はこの新たな世界でのことを、結局は元の世界での常識で考えてしまう。

無意味、だと思う。

だって、戻れない世界の価値観に今更価値は無いのだから。

かつての世界で僕の容姿は中の下だったと思う。実際、何故か美形揃いの弓道部では結構浮いていた部類だと自覚はあるし。

あのまま大学とか行って、当時の部での写真を新しい友人に見せたら「え、お前なんでここにいるの?」って言われるに違いない。

平和で多様な価値観を認め、受け入れてくれたあの世界。

月読様から聞いた限りだと、他の世界より相当過酷らしいけど、少なくとも僕らはそれを感じることはなく。

実際、生きることすら日常的におびやかされる世界の価値観よりはかなり寛容と言える。不思議なものだ。過酷なのに優しいだなんて。

ヒューマンと言う種。人間に似てはいた。だが、外見全てが美しく出来ている。

一流モデルばかりをキャスティングした映画を見ているようだ。

もしくは最新の技術を駆使した超美麗なCG映像、か。病的と言っても決して言いすぎじゃない。

どちらにせよ、どちらをみても美男美女。僕が町の外で見た女性も、何のことはない。この中に混ざるなら普通の部類だろう。

亜人とかブサイクとか言われたのにも納得だ。

そんな美人達が、その外見を誇るでもなく生きるだ死ぬだと必死に生活をしている。繰り返すけど、僕の目には不思議に映った。

僕はこの光景に慣れていくのだろうか。

すぐにスカウトされて芸能人になりそうな連中が、細い路地で生気を失った表情で膝を抱えて座り込んでいる。

美形の定義も違うんだろうけど、僕には不思議でしょうがない。それだけである程度のアドバンテージを持てる場所で育ったんだから。

まったく。

この世界は何もかもが不思議だ。
主人公に偽名を付けようと思うのですが、現状、仲魔がいるのでどうしても候補が憧れのアレになってしまう。
いっちゃうかなあ。まずかったら後で代えればいっか。
よしいっちゃおう。うん。

では次回投稿時にお会いしましょう。
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