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序章 世界の果て放浪編
平和と街、近づく程に遠のくモノ
そして着きました。
簡素な門。町、いや村と呼ぶのも少々無理があるな。キャンプ、程度か。
途中で多分、町の人と思われる妙齢の女性に会いました。すっごい美人さんでした。
染めたわけでもないだろう髪は優しく輝く金色。風でなびく様子は絵画そのもの。
こんな過酷な土地なのに肌は陶磁器を思わせる白。
凄いな。うちの高校の弓道部でも上位に入りそうだ。
ちなみに男女共に美しい人が多いと評判でした弓道部。
僕が姿を確認すると、既に彼女はこちらを見ていました。ナニコレ、この人とフラグとかなら本気で期待するけど?
こちらは超視力だというのに、向こうもこっちが見えていたのか。う、運命?
見ていた、のではなく目を見開いていたのだという事にその時の僕は気付けなかったわけで。
彼女は僕の放つナニカに怯えて金縛り状態だったというのに。
しかし彼女は逃げなかった。だから僕は期待を含めた解釈をしてしまった。
そのまま近づいて、かつ極めてフレンドリーに「すみません」と声をかけました。もちろんにっこりと精一杯笑ってね。
それに対して彼女の反応は、絶叫に近い悲鳴と撃ち出されるようなロケットスタートによる全力疾走。クラウチングスタートもびっくりだ。
ありえない拒絶ってこんなのを言うんでしょうか。……凄い、傷付く。
間違いなく町へ逃げていくので、僕も後を追いました。
あくまで歩いてだよ? だって走って追いかけて彼女を刺激しても困るから。
そして、門の前。今。
僕の前にはずらりと並んだヒューマンの皆さん。エルフっぽいのとか他にも獣人やらちっこいのやら色々いる。
青い肌のは魔族、かもしれない。前あったのはもっと特徴的だったから違うかもしれない。
皆武装して、そしてこちらに敵意を向けている。どう考えても村の警備を刺激するような真似はしてないぞ?
相変わらず流れが急で、展開に抗い難い世界だな、おい。
だが相手は知性ある人である。こちらには戦闘ではなく、話し合いという武器があるのだ。
「あ、先ほどは女性を驚かせて申し訳ない。僕はミスミマコトといいます。この町に入りたいのですが」
「……」
返事がない。というか敵意が明らかに強くなった。自己紹介でか!?
「……っ! ……!」
なにか激論が繰り広げられている。
少し待つべきか。集団の意見はまとまるの時間もかかるだろう。
やがて勢いは収まり。代わりに最前列に展開している人が武器を構えた。
あれえ!?
中列以降は弓矢と投擲具、杖を持った人は詠唱を始めている。
これ、やばい!?
「ちょ、ちょっと!僕はただ……」
「#$%&$&(#$()!!」
!!!
嘘だろ?
立ち止まる。
そして耳を澄ます。
まだ攻撃は無い。……無いけど!
「%$#&%$#!!」
両手を挙げて降参の意を表そうとするが。
どうやら!
それは彼らには攻撃の意思と取られてしまったようだ。
いかん。弓が魔法が一気に放たれる!
自分の周り、少し広めに守りの界を展開する。
色とりどりの魔法も弓も全てがその境界で弾かれ、消える。
剣や槍をもって突進してきた者がその光景に警戒をもって止まる。
また何かやり取りがある。だがこれは。
どうしようもない。
一度退かないと取り返しの付かないことになる気がする。
畜生。女神よ、ちょっと感謝した途端にこれか。
あんの虫があ!!
反転して僕は全速力で走る。そりゃあもう馬でも追いつけないスピードで、土煙をごうごう巻き上げて。
「ちっくしょおおおおお! 人の言葉がわからないなんてありかああああ!」
肝心の。
絶対に大丈夫なはずの言葉が。
わからなかったのである。
明日はどっちですか!
~とある城にて~
重い空気が玉座のある謁見の間を満たしていた。部屋にはいずれも風格のある面々が揃い、沈黙している。
亜精霊から女神の目覚めと勇者の召喚の話を聞いて、今回の召集をかけた。
玉座に腰掛けるのは魔王。表情は芳しくない。眉間に皺を寄せている。
「既に意は伝わっていると思うが」
魔王は口を開く。威厳と自信に満ちた声。優れた王であることは疑いようがない。言葉だけでそれが知れた。
「女神が目覚めた。精霊殿よりの知らせで嘘は有り得ぬ」
「では勇者についても」
「ああ、召喚されたようだ」
四腕の将軍の言葉に肯定を返す魔王。
ため息が所々で漏れる。
女神の突然の休眠、亜精霊からの協力要請、この好機が同時に訪れたことで魔族は版図を広げるべく戦争を始めた。
結果は大勝。
元々は不毛の地に追いやられ加護も得られぬ魔族の手に、せめて少しでも豊かな土地をと始めた戦争。
だが結果は女神を最も強く信仰する大国エリュシオンを滅ぼし、その国土の半分以上を完全に制圧。
激戦の南部ですらこの完全勝利。
西、東方面などは巨象が蟻を潰すように快進撃を続けた。
結果、世界地図は大きく塗り替えられ、世界から大小合わせて十を超える国が滅んだ。
豊かな国土に加えて魔族は海までも手に入れることが出来た。凍らぬ港の獲得は多くの民を飢えから救うだろうと期待され、事実素晴らしい成果を挙げている。
だがエリュシオンを滅ぼした後、南に続くのはヒューマンの大国、リミア王国とグリトニア帝国。
人の国で最大の軍事力を誇る大国二つ。
この二国が出張ってきた所為で、陥落させたエリュシオンにしても、その国土の全てを制することは出来なかった。
広さの上では人と魔族の勢力は互角。だがそれは地図上のことに過ぎない。
戦争で広げた土地の内政を進め、安定させる時間が魔族には必要だったのだ。
だから魔族はそれ以上の南進をやめ、牽制を続けながら内政の充実に力を注いだ。
これが現在続く十年の平和の実情だった。
磐石とまではいかないが安定しつつある内政。
女神の覚醒と勇者の降臨は、さあいよいよ戦争を仕掛けるぞ、と動き出した矢先の最悪の報告だった。
グリトニアとリミアは前線で警戒させておいて、西から果ての荒野の各種族を協力勢力として纏める。
そして防衛に易いグリトニア方面はしばらく好きにさせる代わりに、リミアとグリトニアの南に存在する残る二つの大国、アイオンとローレルを電撃制圧する腹積もりだった。
果てへの工作も順調に進んでいたのだが。
特に力ある精霊であった「炎」が亜精霊として魔族に味方してくれている為攻撃力はかなり上がっている。
果ての荒野は炎と大地の精霊の管轄。そのため炎の亜精霊の協力は果ての篭絡にかなり成果をあげていた。
荒野には、一種族で軍を相手に戦える非情に強力な種族が数多く存在している。
短期攻略は十分に可能な計画だったのだ。
「女神が目覚めただけで、これまでの苦労が水の泡になろうとは」
忌々しさを隠すことなく半人半蛇の将軍が吐き捨てる。
この作戦がこのまま成功すれば、人が奴隷、魔族が世界の王となる世界が実現されていたことだろう。蔑まされてきた彼らの悲願でもある。
だが、これはあくまでリミアとグリトニアの両勢力が現状のままでいた場合の計画。
勇者が現れたなどと言う、特大のアクシデントがあっては勢力を複数に割っての同時戦争は自殺行為になってしまう恐れがある。
(ままならぬ)
あと一月ほど眠っていれば、もう詰んでいたものを。魔王たる男はそう思う。
さらに気になる事もあった。
「全てが無駄になったわけではない。リミアへの伏兵としても果ての勢力は動けるのだしな。それよりも、だ」
魔王は言葉を一つ区切る。かなり真剣な表情だったのだが、さらに眉間に力がこもる。
「リミアとグリトニアに勇者が降りた事は間違い無い。こうして城にいても奴らの魔力を感じる。恐らくまだ隠し方も知らぬのだろうが、察するにその力、魔力の量では私を超えておる」
「なんと!?」
「そんな馬鹿な! 人の身で、ですか!?」
「おそらく別世界。それもかなりの強者を連れてきたのだろうな。この世界での戦い方を覚え、攻めに出られたら苦しい展開となるだろう。女神も相当な加護を与えたに違いない」
魔力で超えられている、とはいえ使い方では負けはしない自信があるのか。魔王の言葉には絶望は無い。
「前線の軍を再構成する。これにて失礼する」
無言だった四腕の巨漢が一言、言葉を発して動く。王もその様子を攻める様子はない。リミアとの前線を統べる彼の判断を支持したからだ。
「頼もしいことだ。だが、この二人は居所が知れ、さらに力の程度を予想出来るからまだ良い。脅威が増えた。考えねばならぬ。それだけだ」
勇者の出現をそれだけと告げる。不安を両断し、戦意を鼓舞する意図か。
集まった将軍各位、文官各位感服して王をあがめた。
「問題はだ」
魔王は続ける。
「此度出現した強大な魔力はもう一つあるのだ」
「三人目の勇者ですと!?」
「いや、勇者は二人だ。女神の神気を纏った者はリミアとグリトニアに降りた、それに相違ない。だが……」
珍しく後の句を迷う様子に家臣たちも怪訝に言葉を待つ。
「世界の果てにも一人、誰かいるような気がするのだ」
魔力の欠片を感じた。だが大陸の北端であるこの城から世界の果てにある荒野の魔力など感じられようもない。
だが感じる。これは何か。
答えは魔王自身にも出なかった。だから迷っているのだ。
「如何に私とて、果ての荒野の存在の魔力など感じるはずもない。だから確実ではないが、恐らくはもう一人居る、と思う。勇者ではない異世界人が、な」
どんな使命をもってきたのか。女神との関係は?
勇者だと言ってもらえた方が余程対策が立てやすい。
ここまで考えた女神の策なら見事と賞賛するほかないと、魔王は嘆息する。
「もちろん、勇者より優先順位は低くても良いのだが。果てで任務に就いている者に命じて、この者についても調べさせろ」
工作を担当する将軍が神妙に頷く。工作などという暗部を任せられている身の上、不確定な脅威がどれほどに作戦の成否を左右するかはわかっていた。
(ふん、だがもしも。もしも世界の果てからここまで魔力を感じさせるような化け物が実在し。しかも我が側に立つようなことがあれば。その時は勇者どころか女神の喉元にまで悲願の刃、届くやもしれん)
魔王は他の案件を片付けながら、不意に。存在すら明らかでない荒野の者の身の上に興味を抱いた。
人の側に二人も勇者が居て、しかも女神までいるのだ。
ならこちらにも。それをひっくるめたような畏敬の存在がいてもよいではないかと。
深澄真は世界の動乱の中心たる魔王に興味を持たれる。全力で、自身が待望した人の町から逃げる彼の悲惨は、何だか終わりが無さそうである。
次回はすっ転んだ真君の立て直しです。
街編はその次からですね。
最果てでこそこそするのも後半になってきております。
どうかお付き合いください。
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