ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
二日連続投稿完了。万歳!
昨日も似たこと書いた気がします。
でも嬉しいことには違いないのでこのままいきまっす。
箱庭は順調に都市への道を歩んでいきます。ではどぞ。
序章 世界の果て放浪編
お披露目。頭痛はレベル2になりました。
名付けの夜から明けて翌朝。

天幕を出た僕は勢揃いしたオークさんと、そこに向かって立つ連れ二人の後姿を見てびっくりした。

朝っぱらから今日は何だと言うのか。

「よいか、お前たち。私は昨夜主人より名をもらった。伝えた通り、これより私のことをトモエとよぶように!」

「同じく私も名を授かりました。私のことは今後ミオと呼びなさい」

ワァーーーー

意味不明の歓声。

なに、これそんなに大事件ですか?

僕はまた何かやっちゃいましたか?

「ついては、我が主にしてこの地の領主たる我が主のことだが。皆が私と同じように主、と呼ぶわけにもいかぬ」

「そしてご主人様、旦那様と呼ばれるのもお嫌いとのこと。もちろん、名を呼ぶなどという不遜は許しません」

いや、名前呼んで良いって。痒くなるんだって! 許してよ!

しかし、オークの皆さんはうんうんと頷くばかり。

僕ってどんだけ何様?

『よって!』

二人はハモった。というか、この歓声と言葉の切り替わりのうまいことうまいこと。

これ、もう始めから流れ出来てね?

『皆よ!』

はいはい、なんですか。

『殿様、若様、ご隠居、どれが良いか! 多数決で決めようぞ!』

はいはい……はいいいいいいい!?

何でやねん!? いや、その……何でやねん!

「あっ、お? え? ちょ」

うまく言葉にならん!

というか何でその三択。

ろくなものがねえ!!!

「では殿が良い者!!」

ワァーーー

結構いるね!?

「次に若が良い者!!」

ワァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!

ぶち抜いてるね!?

「最後!ご隠居が良い者!!」

ワァーーー

まだお爺ちゃんじゃないから!

従者二人が回れ右。

「というわけで」

「ということですので」

何がだ!

『若様、でお願いします』

「馬鹿だろ! 馬鹿だろ!? もしくはアホだろぉ!!」

「民主的に決めてみましたぞ。お好きでしょう民主的」

「若様も一票お持ちですけど、どこに入れても若様ですわ♪」

納得いきませんよ!?

流れが最初から全部出来ていたじゃないか!

「いやいや僕主人だよね? なんでこうなるんだよ?」

「昨夜話し合って決めろと申されましたので、皆で決めてみました」

「変な三択だったのは何故!」

「昨夜有力者を叩き起こして徹夜で決めた三択です! 断じて変ではありませんぞ!」

て、徹夜!?

トモエさん何やってるんだよ!

と言う事は、ここにいる人の数人は徹夜した挙句にこんな茶番に付き合ってるわけですか。

明らかに巴に偏った三択だし。

ううう、ごめんなさい。

期待に満ちた目で僕の言葉を待っているオーク&従者ズ。

ううう。

名前を呼ぶの不遜とかじゃ全然無いのに……。

さあさあ! と目で無言の圧力を生む皆様。

寝起きからこれってさあ。

軽い虐めだよね…。

「若様で、いいです」

耳を塞ぎたくなる大歓声が沸く。

今からドワーフ全員洗脳して第三の選択肢を作っても聞き入れそうにないし。

それからは、会う人会う人、大人も子供も若様若様だ。

せつにゃい。

もういいやと旅を再開し、いよいよ街が見えてテンションが上がったその時。

ちょっと待って欲しいと言われました。

またかよ!

もうマジで目と鼻の先だよ?

ドワーフの到着を待ちたいとのこと。

まあこれは仕方ないか。

到着はじゃあ明日か。

さくっと諦めて亜空で休むことにする。

ま、明日には移住も終了していることだろう。

となると、細かい案内は亜空の中に蜃の分身を残しておけばいいかな。

何故か。

ドワーフからの挨拶は翌日の昼にするといわれ、僕はいぶかしみながらも休んだのだった。

この展開、フリじゃないよね?










翌朝。

見事にフリでした。頭痛がします。

昨日はオークの群れがいただけだけど。

今日は向かって左にドワーフ。先頭にベレンさん。五十人くらいか?

中央には蒼い鱗のリザードマン、だと思う。先頭にトモエさん。こっちは百名以上いるようだ。

右には下半身が蜘蛛、上半身は人っぽい何か。先頭にはミオさん。こちらはミオさん含めて五人。

なんじゃこれ!? 増えてりゅ!? ってええ!?

「やるではないか。昼になると言っておったのに」

ベレンさんを褒めるトモエさん。

「いやいや、お二方の眷属のお披露目とあれば。是非この機会に我らも一緒にご挨拶した方が良いですからな! 第一印象が違いましょう!」

「……」

「もう、貴方たちは無口ね~。言っておくけど、若様に不敬を働いたりしたら…食うわよ」

「!!!(コクコク)」

うーん、カオス。

事情がさっぱりわからん。

眷属、とベレンさんは言っていたね。

眷属っていうと、部下って感じか。それとも子供?

しかし、人数もばらついてるな。

ドワーフは集落の全員であれってことはかなり少ないんじゃないだろうか。

家族は基本二人以上、夫婦か母子で構成される。父母に子供の三人と考えても十六世帯。

もし家族が祖父母まであるとしたら十世帯前後になりかねない。

それで村を形成できるんだろうか?

僕の考える村とか町って単位が大きすぎるか? ありえるな、何せ平和な日本での考えなんだし。

川蝉色の美しい蒼鱗のリザードマンは、配置から言って巴の眷族、なのだろう。

剣を地に刺し盾を腕につけたまま胸の前に。片膝ついて頭をたれたその姿は騎士を思わせた。

鞘、はないようだ。あったほうが便利だと思う。僕は刀文化ですので、抜き身の剣はちょっと物騒に見えるさ。

あの蜃に、こんな礼節ある眷属がいるようにはとても見えない。部下に恵まれているタイプだったんだろうか。

災害の蜘蛛、澪の後ろには四人(匹?)の半人半蜘蛛。

間違いなく村って単位ではない。となると引き連れている部下?

にしては戦闘中には出てこなかった。それに…なんというか集団生活が異様に思い浮かばない。

なんていうか、ボスキャラっぽさがあるんだな、この人らは。

直立不動で胸に右手を添えて頭を垂れている。

そして、多分無口なんだろう。口は一度も開いてない。

瞳には知性と、よくわからない色があった。

今はみな頭を下げているのでわからないが。

「わかったようね。いい、あの御方、若様はこの私、そして貴方たちをも飢えから救った方。全霊をもって尽くしなさい子供たち」

子供っすか。はあ、僕はどれだけあの人たちの美味しい食べ物なんでしょうかね。

そうかー。知性の他に伺えたのは「あれが美味の源か」という興味か。

眷属というと、あれも急に現れては何もかも食い散らかしたりするんだろうか。

うーん、あの四人を満たすだけの魔力だかなんだかを分け与えてもまだ澪は正気を失ってないとなると……。

いや、もう僕の魔力を考えるのはやめよう。

「む、お前ら」

巴が僕に気づいて他の二人に目配せをする。

二人は僕を見ると姿勢を正す。

「ああ、おはようみんな?」

みんなと言ってよかったかわからず、?をつけちゃいました。

『おはようございます若様!!』

おおう、全員の言葉がばっちりわかる自分がいる。そして返事が返ってきた時点で僕の言葉も間違いなく伝わってる。虫、ホントに使える能力じゃないか。

ベレンが二人に目で了解を取って一歩前にでる。

ひざまずいていたドワーフも一斉に起立して前に。迫力あるね流石に。

「マコト様、名を呼ぶ非礼をお許しください。ここにおります我らエルダードワーフ五十四名、今日よりこの地に住まわせていただきます。今後ともよろしくお願いいたします!」

「あ、よろしくお願いします。マコトです。別に名を呼んでも構いませんよ~」

「それでは、我らが集落のおさよりご挨拶させていただきます!!」

おう、答えが無いよ。そんな緊張しなくても良いのになあ。ベレンさん、がちがちだ。

ベレンさんは数歩下がり他のドワーフ達の列に戻る。次いで、いかにも威厳のある、髭を蓄えたドワーフが前に出てくる。探るような目で僕を見てくるが、それを失礼には感じない。

人の上に立つ雰囲気がある人だなあ。年齢も明らかにベレンよりも上だ。彼が若輩なのは本当のようだ。

最初に僕に面識がある彼を前に出す辺りが、わきまえているというか何というか。こんなところで外交も何も無いと思うんだけどね。

一礼。釣られて僕も一礼。こちらの世界でも頭を下げる文化はあるのかな。

「エルダードワーフを率いておりますエルドと申します。果ての荒野に隠れ住んだ我らに、これほどに恵まれた地を与えてくださって感謝しております」

「あ、いえ。マコトと申します。困ったことや聞きたいことがあればどうぞ気軽に仰ってください」

「ありがとうございます。では早速よろしいでしょうか?」

「はい?」

「若様は見たところ辛うじてヒューマン種。ですが従者として契約されているのは幻を司る上位竜種である蜃様に、更には世界を食い尽くすと恐れられている災害の黒蜘蛛。幾ら何でもヒューマンに支配できるものではありませぬ」

「は、はあ」

そういえば二人も驚いていた。チートの本領ってところなだろうか。それに辛うじてヒューマンって何だ?

「率直に伺います。貴方は世界を司る女神の加護と使命を帯びて、荒野に降り立ったのでは無いですかな?」

キラーンと長さんの目が光った。だがこれには物申すぞ僕は!

「あ、あんな虫に加護なんぞもらうかあ! あいつのせいで果てに落とされたのは本当だけどな! むしろ酷い目に遭ってんだよ!」

「む、虫?」

「ああ、あんな女は虫で十分だ! 世界の隅っこで魔物と過ごしてらっしゃい、とかいって僕を荒野に放り出しやがって!!」

ああ、思い出したらまた腹が立ってきた!

「で、では使命は無いと? 目的は無いと?」

「ああ、ないね! 一切ないね! 僕は被害者なんだぞ!? まあ、魔物、魔族の類と話せるようにしてくれたのは少し感謝してるけども」

ちょっと語尾が尻すぼみ。

「我々と話せるのは女神の加護では?」

「これは理解、なんだとよ。加護を与えるなど汚らわしいとか言われたよ!」

まったく思い出したくもない。

考え込むドワーフの長老。

「で、では若様はどの勢力にも付かぬ立場のヒューマンなんですな?」

「もちろん。あと、ヒューマンヒューマンって止めてくれないかな。僕は人間って呼ばれたほうがしっくりくるんだけど」

「人間、ですか。旧き時代の住人の名前ですな。ヒューマン種の祖とも言われる」

「なんだってね。でも僕は人間、なんだよ。まあ、事情により魔力や体力はそこそこ強いけど」

巴が「竜を殴り倒すのはそこそこじゃないわ」と横向いて言い捨てた。

澪は「あの魔力と血肉は至高の美味でございます!」と力強い表情。

聞こえない、何も聞こえないさ。

「安心いたしました。我らは女神と意を異なるもの。敵対まではしていませんがな。同様にヒューマンとも魔族とも友誼はなく仲間と呼べるものがおりません」

「そりゃあ、また。独立してるんですね~」

「ですが貴方は面白い。蜃気楼都市という構想。我らとの会話能力、そしてその規格外れの魔力」

貴方になら付いていくのも面白い。

そういった。

「あははは、そんな大した物でもありませんけど」

「ふふふ、では長々と失礼しました。後ほどご挨拶代わりの品をお持ちします」

長老は下がる。謙遜、と受け取られたんだろう。しかし、規格外の魔力って。

魔力って見えるものなのか? 

「では次は私だな」

巴だ。相変わらず機嫌が良さそうだ。

蒼い鱗のリザードマンたちが一斉に起立する。壮観だ。訓練された軍隊を思わせる。

「若! 後ろにいるのが私の眷属であるミスティオリザードマンだ。水と風、二つの属性を併せ持つ非常に珍しく強力な種でな。特徴はなんといっても美しい蒼鱗だ」

「お前に眷属なんてものがいたことを初めて知ったよ」

「勝手に信仰しているのも含めると結構おりますぞ? 曖昧に神と呼ぶのを含めるとさらにドンじゃ。しかし彼らは我と強く関係を持つまさに眷族たる存在。彼らの戦士は亜竜程度なら相手にできる」

「そりゃあ、またすごいな。しかもこの雰囲気、得意は集団戦闘だろう。もはや兵器レベルじゃないのか彼らは」

「それは言いえて妙。そして良くその質を見抜いたものです。まあ、彼ら百八人今日より移住する。我ともどもよろしく頼みますぞ」

巴が軽く頭を下げる。合わせて彼らも統率された動きで礼をした。

まったく、彼らは巴には勿体無いな。一人で亜竜を相手にできる戦士が軍隊として機能するとなると。運用しだいでは凄いことになるような。

戦士と言っても彼らは騎士に近い印象を受けるから、特殊部隊みたいには動けまいが、精鋭という存在には違いないだろう。

続いて澪。

「若様、後ろに控えているのが私の眷属アルケーでございます。彼らも、私同様飢えから逃れられぬ者でしたが、このたび若様の精を受け正気に戻りましたのでここに連れて参りました」

アルケー。知らないな。

やっぱり、僕の知らない、僕のいた世界とは全く接点の無い存在なのか澪の種族は。

って、そこじゃないよ。

精って。精って何さ。

血とか魔力とかその他なんだろうけど。精って言い方は何か嫌。

というか、どうやって分けたんだろうな。

「ど、どうやってそんな見えないモノを分け与えたんです?」

敬語で話してしまう。や、やっぱりなにかぐちょぐちょなことになってるんだろうか。

「それはもう、こうしてですわ!」

澪は言うが早いか一番手近にいたアルケーを招くとその肩口あたりに貫手をくらわせた。貫通。

「おい!!」

思わず声が出た。

「……♪」

だが貫かれたアルケーさんは気持ちよさそうにしています。

い、いやだーー!

こいつらも全部同類なのか!?

ミニ澪とプチ澪が増えただけなのかよ!あ、また頭痛が……。

貫手を食らわせている澪から眷属に何か流れ込んでいる。これが分け与えるってことか。

バイオレンスなこと。

「あ~もうわかりました、いやわかった。もういいぞ澪」

「はい。お粗末でした」

手を抜き取る。血も出ず傷跡が塞がった。うおう、不思議仕様も継承されてるよぉ。こいつらも十分チートだぁ。

「アルケー、ト、イイマス。ナマエハ、ナイデス。ヨロシク、オネガ、イイタシマス」

喋るのは得意じゃないみたいだな。

それでもゆっくりと確実に話してくれる。誠実な人たち、なんだろうか。

さらに、彼らは個人で生活して周囲に話す者もいないのだろうと思った。だから名も言葉も必要なかったのだろうと。

そして澪同様で飢えている。いや、いた。

「今後、が抜けたわね? 食らわれたいの? あん?」

どこのヤクザだよお前は!

「澪。良いから! 良く話してくれました。順に、ゆっくりで良いからここに慣れていって」

澪がしぶしぶ退くと、安心したのかアルケーも頷いてくれた。

ぜ、前途多難だな、このチーム。

「私もアルケーたちも体内で希少な物質を作れます。また古の錬金術の知識もございます。お役立て下さい。では不肖の眷属ではありますがよろしくお願いします若様」

鍛冶はドワーフ、錬金はアルケー、そして戦闘はミスティオリザードマン、そして基本作業は頑強なハイランドオークにこれまたリザードマン。

ふむ、格好はそこそこついてきたのかも。人成分が多大に不足しているけど。

そして自己紹介は全部終わったわけだ。これがあったから街に行くのを遅れさせたんだろうか。

ともかく、これでもう行けるわけだ。後一時間弱くらいのところに念願のヒューマンの町があるんだよ。

やっと、人に会えるんだよ!

「うん、それじゃ皆、これからよろしくね。詳しくはそれぞれ上司に聞いてくれ。巴、澪。エルドさんに色々教えてあげてくれ。住む場所は自由に決めていいけど、揉めないように。僕は街に向かうよ。もうすぐだから街へは僕一人で行く」

「あ、お一人では危険では?」

「そうです、お供しますわ」

「いや。大丈夫だろう? ここまでよりは間違いなく安全だ。それにこの大所帯だ、誰かが指示しないと収拾がつかない。なに、上手くいけばそのまま一泊して明日戻るよ。じゃ」

僕はそう言うと、朝飯も取らずに出入り口に向かう。

巴も澪も納得してくれたようだ。付いてこないから、そう判断した。

亜空のごたごたは、起こるようなら後でどうにかする!

今はとにかく街に行かねば。

こっちに来てもう一週間くらいが経つのに。

誰にも会えず。さらには二回も死にかける始末。

そろそろ、人と会いたいんだよ!
次回、とうとう真君の前に彼以外のヒトが現れます。
感動、ただ感動。世界の果て編、いよいよ最終章近しです。
さらなる彼のカオスにご期待あれ~。
お暇な時にお付き合い頂けると至福です。それではまた。
小説家になろう 勝手にランキング


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。