予定内の投稿完了です。万歳!
そろそろ、距離的な進行もしないとな~と思いながら今回も寄り道です。
アクセス解析、早く復旧するといいですね~。
投稿始めたのが最近なので数字が一気に減って寂しい限りです。
ではどうぞ^^
「名前が欲しい?」
ああ、やっぱりか。
僕としても彼女をいつまでも蜃と呼ぶわけにもいかないとは思っていた。
そう考えると、蜘蛛に至っては種族名さえ知らないな。
僕だって人間とかヒューマンってずっと言われると思ったら嫌だし。
「そうじゃ。いつまでも蜃と呼ばれるよりも主にきっちり名前を付けてもらいたい。これも契約者の務めじゃぞ?」
「私は急ぎではありませんが、いつか名前を頂きたいと思います」
二人とも気持ちは同じようだ。が、意外だな。蜘蛛が一番に欲しがると思っていた。
このままだと悲惨なのに。
「あれ、急ぎじゃないの?」
「ええ、私は蜃さんの後でいいですわ。新参者ですから」
にこりと微笑む。華やかだな。蜃が武士なら、こっちは貴族か姫か。
「ってことは、しばらくは名無しとか蜘蛛さんとかその二って呼んでもいいってことね。りょうか…」
ぴしっ。何かそんな音が聞こえたような。
「お断りします!!!!!!」
「うおう?」
「旦那様! それは女性を呼ぶ名ではないと思うのですが!」
旦那様をまず止めろと言うのに。
「いや、でも貴女の名前知らないし? 大体、種族は何さ」
「……種族? 私の?」
「ああ、教えてくれない?」
「そう、私って何なのでしょう。ずっと空腹感に突き動かされていただけで、自分のこと何も知りませんわ」
おお~?
記憶喪失状態? いや、記憶なんて無い状態?
「じゃあとりあえず黒ちゃんとかで」
「もちろん却下です! 即刻、名前を付けていただきたく思います。」
「くぉら! おぬし、名前は私の後でよいといったではないか」
蜃がなにやら食いつく。
ええっと、そんなことの順番、予め密約しておくほどのことか?
「ですが蜃さん? いまの仮名はどれも容認できません。貴女は中性的な名でしたから良かったでしょうけど……」
「ほっほう、なら伽は譲ると言った件も反故で良いな!?」
「くう、悔しいですけれど…」
そんな密約もあったんかい。いや手なんて出しませんよ。多分。原型、見てるんだしさ。
まあ、そっちは存分に反故にして頂いてよい。
「だいたい、蜃は一度名前をつけようとしたら全力で拒絶したじゃないか」
蜃のままが嫌だって言うから何個も候補を出してあげたのに。
「あんな、ハイカラな名前は嫌じゃ!」
「まあ、名無しは正直酷いし、実は名前は思い付いたのがある」
「まあ!」
「なんじゃとおおおおおお!?」
「なんなんだよ!?」
「駄目じゃ駄目じゃ駄目じゃ!! 私から名前を与えるのが筋なのじゃーーー!」
子供かおのれは。
一方の蜘蛛嬢は「ああ、私のことをそこまで…」とトリップしてる。
これが、僕の旅の連れ、か。
ため息を堪える。これ以上人生が不幸になるのは断固さけたい。
今後は心の中だけにしよう。
「あーーーーもう!! わかった。蜃にも今から名前を付ける。で、蜃から付けるってことで!」
それでいいなと二人を見る。
ちょっと不満そうな目と大満足な目。おおむね、肯定はしているようだ。よし。
「じゃあ蜃」
「はい、力漲る名を頼みますぞ!」
「えーーーーと」
「(わくわくわく)」
どうしようか。蜘蛛が不憫だから正直そっちしか考えてなかったなあ。
「うーーーーむ」
「(わくわく)うむ?」
「ふーーーーむ」
「おい、主まさか今考えてないか?」
「まっさかーー……」
「ううう、何でこの蜘蛛が先なのじゃあ……」
泣くほどかね。
契約と名付けってのは、そこまで重要なことなんだろうか。
詳細は未だに知らないんだよね。
「蜃、お前に名前を与える。今後『巴』と名乗ると良い」
「トモエ?」
「そうだ、僕の知っている中で、一番勇敢な女武士の名前からもらった」
「女の侍がおったのですか!」
「そうだ、夫とともに戦場を駆けたとも言われている女性だ」
確か乳兄妹だったはず。家族で妹で嫁で相棒ってどんだけ旦那様は恵まれてるかね。絆レベル振り切ってるよね。……一歩間違えたらヤンじゃいそうな位。
「おおお! 巴の名、確かに頂きましたぞ!」
こいつには明らかに過分な気がするけど、武士で女性で思いついたから良しとするか。考え直すの面倒だ。
実は淀って名前も考えついてたんだけど、この名前だと策謀に優れる手に負えない人になりそうだったので却下。あくまで僕のイメージだけどね。
鼻歌交じりに「トモエトモエ」と繰り返している。気のせいかうっすらと光を纏っているような?
「光?」
「む、おおそうじゃった。名前を与えられるとその名に応じて力を増すのじゃ。主との結びつきが強くなる故な」
おいおい。
結構重要なことじゃん?
思いつきで決めてしまって良かったんだろうか。まあ、こいつが気に入っているから良いか。
「それにしても馴染む。巴、実に気に入った! 私は今日この時から巴じゃ! よいな!」
僕ともう一人の従者を見て確認する。
肯定してやると顔を朱に染めて破顔する。大の大人がはしゃぐというのも中々見られない光景だな。
「力を増すって、なんか法則とか色々あるんじゃないだろうな」
「もちろんあるぞー♪」
「いや、なら先に言えよ!?」
「いいのじゃいいのじゃ。どんなに効率の良い名より、主が本当に付けたい名をつけてもらった方が私は嬉しい♪」
「いや、だけどな?」
一生に関係することを、短命の自分の気分で決めてよいものなのか。結構悩むぞ?
「良いというのです♪ 法則なんぞに縛られた名前なんぞ欲しくも無い。では私はこれから皆に名前を伝えに行ってくる!」
巴は言うが早いか走り去ってしまった。
誕生日プレゼントをもらった子供のようだと思った。
「あらあら、でも本当に羨ましい。旦那様、私にも名を頂けるのですよね?」
「あ、ああ。その心算だけど。でもその前にね。その旦那様ってのはやめてもらえますか?」
「私としたことが。ご主人様の方が良かったですか?」
五十歩百歩。
「いや普通にミスミかマコトで読んでほしいんだけど」
「無理ですわ(にっこり)」
即答否定の微笑みがきました。
「なぜ!?」
「だって私は被支配の身ですもの。主人に向かって呼び捨てなどとてもとても。気位の高い蜃、いえ巴さんですら主と呼んでいらっしゃるでしょう」
うううう、それでも旦那様とかいわれると背中が痒くなるんだよおお。
主って呼んでもらうか。
でもこの人が呼ぶとそれも痒くなりそうな気もする。
「ミスミさんとか、だめ?」
「ダメでございます」
「とにかく、巴とも話して何でもいいからご主人様とか旦那様以外で探してください! これ命令!」
「はあっ、命令だなんて…。そこまで言われるのでしたら後で話し合ってみますわ」
身を震わせて命令ってとこに反応されてもさあ?
これにも、慣れないと、な。ランダムエンカウントよりマシ、ランダムエンカウントよりマシ、ランダ……。
「それで、名前ですけど」
「はい♪」
「法則とかあるなら軽くで良いので教えてもらえます?やっぱ重いし少し考え直したいので」
「ダメでございます(にっこり)」
なんで~~~~?
この人本当にわからない!
「えっと、名前が力とか言われますと僕もですね」
「ちっ、蜃め、もう少し黙っていれば良いものを」
今すっごく小さな言葉で毒吐いたね!?
「構えるというか考えたいというか」
「もうお考えの名があるのでございましょう?」
「事情を知らずに考えたものですので…」
「それが! 欲しいのでございます!」
おおう、強い。
ずずいっと顔を近づけられる。
いやこれは普通に照れるな。
「大体、そんなものに縛られた名前などに何の喜びがありましょう。力より何より、今後自分が名乗る名は主人が自然に望んで付けたものにしたく存じます」
「それで弱くなっても?」
「今より弱くはなりません。それに今更強さに興味もございません。どうか、今お考えの名前を私に下さいませ」
ここまで言われると、そうしないといけないと思う。
「じゃあ」
彼女が息を呑む。
「君に名前を与える。君は今後、『澪』を名乗れ」
「ミオ……」
「僕の国でゼロを表す文字に、僕の得意らしい水属性を現す文字を加えた名前」
彼女は空腹しかなかったというから。
ならば満たされたこの後は。零からのスタートになる。
そこに契約した僕の得意属性の水を表す部首を加えて澪。安易かも。
「謹んでお受けします。今後、私はミオを名乗ります。ありがとうございます旦那様」
「だーかーら旦那様は」
「あ、ええ。控えます。ミオ。うふふ。主人の属性を含む名。うふふふ」
「おーい。帰ってこーい」
「はっ、ゼロに主人の文字? ということは、私を主人の色で染めてくださるって事!? ああっ」
駄目だ、まったくダメだ。話なんて聞いてない。
僕の周りには、どうも、ずれた奴しかいない。
トリップし続けるミオの背を押し、天幕から出す。
僕は目覚めたばかりだというのに、どっと疲れて再び眠りにつくのだった。
町。もう目の前のはずなんだけどなあ。
次回更新予定は数日中。できれば2日以内。を目標にしております。
三人目の下僕は後回しにして荒野脱出まで書いたほうがいいかな。
そしてまだまだ下僕四択募集中です。
それではまた次回投稿の時に。
小説家になろう 勝手にランキング
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。