あずです。
少し長めにして見ました。
ついでに予約投稿というものを使ってみました。
上手く出来てますように、と。
ん~すがすがしい朝だね。
表面に白い化粧を施した岩山から爽やかな風が吹き降ろしてきます。
ま、いい加減自分の超人仕様には驚くのは止めよう。誰かに説明する時には目で見た情報を客観的に伝えよう。爽やかな風じゃなくて凍てつく強風が普通かな?
大気に溢れる魔力を体感できるようになった僕としては、すっかり世界の印象も変わって「爽やかな」気分なんだけどね。
さて、僕はレベル1だってことが判明しました。
おかしいです。
もともと高レベルだったなら、リズーって犬を倒してレベルが上がらないのはわかりますが。
レベル1なら上がるでしょうに。それともあの犬はひたすら弱いんでしょうか。
エマさんも僕が戦いに勝ったことは確認しています。不意打ちだと経験が入らない、とか?
ん~、存在がチートゆえにレベルの概念からも外れた存在なんですかね、自分。
ちょっと落ち込んでいる所為でとっても丁寧でした。ふう。
「さ、やるか」
洞窟の門番さんにはエマへの言伝を頼んだ。
手紙で、ね。
すごいよね、まさか話せるだけじゃなくて文字まで理解できようとは。
読み書きばっちり。
万歳チート。虫にも少し感謝の念を覚えたね。こうなってくると勇者は全知全能じゃないかとすら思う。
これなら人間の街についた後は魔物と人間の間で交易でもして稼げそうだな。
内容はそんなにたくさんは書いてない。
神様何とかしてみるよ。
きっと無事では済まないだろうから、僕の事は忘れて村に帰ってくれ。ありがとう。
って感じの文章。実際は少し世間話とか説明も織り交ぜてあるけど。
洞窟に戻る心算はなかった。
結局、魔法を教わったうえに、この辺境の大体の地図を見せてもらうことに成功した僕。
神様に話を付けた後はこのまま人の街に行くつもりだった。
なんでも、世界の果てで取れる希少物質を目的とする人や、武者修行に来た人たちが集まったテント以上村未満の場所があるらしい。
洞窟からはまだ相当距離はある。
大体今の僕の最高速度(旅として進む上でのね)で一週間、途中なんぞあったとしても10日見ておけば到着出来ると思う。
その間には幾つかの種族の集落(もれなく魔物)や森がある。話せるのだから毎回戦闘、という事態にはならないだろう。
食べ物はとりあえず大丈夫だ。3日絶食したけどまだ動けた。
感覚から5日は大丈夫に違いない。したくないけど。オークさんからもらった食料は、彼らにとっても(多分)貴重なものを分けてもらったんだし大事に食わねばと誓う。
そんなことを考えながら岩山を迂回するように回って奥の、一際高い山を目指す。神山、ねえ。
実は蜃とかいう神だか魔物だかにはそんなに警戒は無かった。
どうにも、それ以上のきな臭さが先行していたから。
生贄以外の誰も蜃に会っていないというのが先ず気になった。実質誰も会ってないってことだから。
そして生贄がわざわざ危険な荒野を一人で抜けなければいけないのもおかしい。
だってたどり着けなければ生贄の意味はないんだから。
生贄は幾つかの身清め場を巡礼した時点でその役割を果たすのだとか何とか説明されたが。
なにそのトンデモ理論。生贄とか既に関係なくない?
実際、あのままだとエマはリズーのエサだったのだ。
そう、そしてリズー。
あの魔物は確かに世界の果てにはいるらしいが普段生息する地域とは大分離れていたらしい。
そして彼らは本来群れで狩をするそうだ。
ならば、あそこで一匹だけでエマを襲っている状況が奇妙だ。
ハイランドオークの村を緩慢に滅ぼそうとしている意図は、彼女の話から何となく感じる。
でもそれは……蜃という存在の意思に拠るものなんだろうか。
第三者の悪意ある干渉、もしくはハイランドオークの村落内部での内紛。
その二つの可能性が僕の中で渦巻いていた。
ただ滅ぼすなら生贄なんてやり方は馬鹿らしい。脅しに使ったという霧で数年村を覆えばそれでおしまいだろう。
「緩慢に、か」
これが鍵のような気がした。
時間を掛けるということはそうする意味があることのように思える。
何か要求があるなら蜃はきっと生贄を要求するのと同時にソレも求めているだろう。
だから時間を求めている存在がいるならそれは蜃自身ではないことになる。
第三者か、それか内乱なのか。
短絡的なのかもしれない。まるで見当違いかもしれない。相手は人じゃないんだ。
人と同じ思考とは限らない。その場合は考えの根底が崩れてしまう。
でも現状、材料がないので僕はその線で考えることにした。
戦いになったら戦いになったで良い。
もしかしたら僕自身どこかでそれを望んでいるのかもしれない。
魔法、魔力。
振るってみたいのは事実だ。
もっと習得したいのも山々だったが、エマが神山に出立する前に事を起こす必要があったし。
明かりを生むライトの魔法は実は門番の詠唱を盗み聞いたので習得済みだ!
道々もらった詠唱リストで魔法のストックを増やしていかないとなあ。
「試して、みるか。ぶっつけ本番は流石にね」
一度、全開で。
どのくらいの消耗があるかわからない。なら一度試してしまうか。
そうと決まれば。
前提をすませなければ。
小さく呟いて昨夜と同じくらいのブリッドの炎を作り、ボールにして適当に飛ばす。成功。
よし。
やるか。
体の力を抜いて慎重に、ありったけの力を込めて「強い炎」を意識して詠唱をする。ただし心の中で。
そしてブリッドと心中で呟く。試したいことその一。口に出さなくても良いかどうか。
成功。昨夜よりも遥かに強力な高圧縮で弾けんばかりの真紅の球が出来る。
良かった。洞窟でいきなりボールにするイメージもなしに垂れ流したら大惨事になっていたかもしれない。多分、僕自身よりも何回りか大きい火が出たことだろう。
次に標的。
神山と呼ばれる山への道。その先、山の麓付近に門のようなものが見える。あれでいいか。距離はここから何百メートルか。超視力に感謝だよね、実際。
試したいことその二。僕は弓道をやっている。
昨日も玉を岩塊に当てる時に『中てる』ことを決めた後に放ち、そのように飛び、中った。
つまり弓を持ち矢を射るようにこの球を撃てないかと思ったのだ。
ついでにブリッドの有効射程距離も知りたかった。
そう。
弓道場で弓を持ち正座。
心の準備を済ませて集中を終え。
立ち上がった時には後の動作の結果は僕にはもうわかっている。
部活の友人たちと弓を構えるときのことやら話していたときによく言われたものだった。どうして座っている段階でもう、中てる確信がもてるのか、と。
どうしてかといわれても、と苦笑した覚えがある。僕は「そう」なのだから仕方がない。今は、精神を鍛える目的で続けている弓道。
初めて的に当たったときには嬉しかった。だけどその喜びも、当てるのが容易くなると薄れていく。
だが技術で当てるのでは精度に限界がある。
初めは精度を上げるために。より難解であろうものに挑もうと。
目を閉じて心を平静であるように努めていた。何度も心で射て中った時の所作をシミュレートするようになった。
構えや姿勢も、一挙一動に極度の集中を持続して臨んだ。
気がついたら先生に道場を好きに使って良いと言われ、代わりに同年代の人と同席しないようになった。
今思うと、あれは先生の配慮だったのかもしれない。
僕の異常さが他の人に影響を与えないがための。
やがて。
道場に入り、気持ちを切り替えると僕は外さなくなった。正座して的を見たときにはもうその後何射しても結果は心に出来ていた。現実もその通りになった。
高校に入って弓道部に入部した時。
周りの稚拙さに微笑ましくなった。そして、自分の異常さにも気付き出した。
先生に相談すると、彼女は僕が弓道部に入ると思っていなかったらしく、ひどく驚いておられた。
弓が好きですから、と言うと先生は呆れたように笑った。
そして先生は何かを決意したんだろう。僕に弓術を教えるといった。
先生の家系で伝えている実戦弓術は僕の知らない技術や、様々な状況で弓矢を扱う知識に満ちていた。
だがそこでも僕は中てることには揺らぎがなかった。
一年ほど学ぶと先生は今日で終わりだといって簡単な試験を出した。そして合格。
高校二年の夏。ついこの間のことだった。
それから僕は弓道部の副部長に納まっていた。先生の言いつけに従い一切の大会に出なかったし、他の部員と比べて弓を持つ機会が少ない僕を先輩方は副部長に命じた。
ま、部長に頼られているんだと少し嬉しく思ったけどね。そんなこんなで後輩の指導を中心に学校生活を楽しんでいたところに異世界なんて言葉がぶちこまれてきたのだ。
考えてみると、やっぱ惜しかったかなあ。先輩先輩って寄ってくる後輩は結構気持ち良かった。
と、ホームシックになっても仕方ないや。現実現実。おし、まだ球は安定してるな。
久々に本気で、っと。
狙うは鳥居のような門の根元。
癖で左手が弓を持つようなしぐさで前に、突き出した右手は顔の横を過ぎて少し後ろへ。
矢をつがえる手の動きは自制した。この球を掴んで万が一火傷したら泣ける。
見せてもらいましょうか、僕の全力魔法の威力を。
僕は矢を放つ。あくまでイメージの中で行われたことだが、球はゆっくりと縮小していき。
瞬間、矢のような棒状の形になって門を直撃した。突き刺さる炎の矢。
「成功、だな。速度も申し分ない」
人が投げたものではなく正に射られた速度で空中を翔けてくれた。これが出来れば練習が必要とはいえ、弓矢を常に手元に持てるのと同じ。大きな前進だ。心強い。
「あ、れ?」
矢が消えずに門に突き刺さったまま歪んだ。抵抗するように一際大きくもがき歪んだ後。
炎の矢は爆発した。
門ごとだ。
一瞬遅れてここまで熱風が吹き付けてくる。かなり熱い。息を吸うのを躊躇うほどだ。焼け付くとはこういうのを言うのか!?
「やば、門が消えちゃった」
まあ門くらい良いか。そう思った僕は歩き出す前にありえないものを見た。
何かが動いたのだ。
門の付近に何か生物がいたとしたら。
これはまずい。
あの直撃は多分相当やばいことになっているだろう。
動いているということはもしかするとまだ間に合うかもしれない。
誰かを傷つける心算は無かったと断言できるけど、仕方ない。この際、間に合うのなら治療の為に一度ハイランドオークの洞窟に戻るのも選択肢にいれないと。
とにかく。現場に行こう。
僕は冷や汗を振り切るように走った。
『貴様、何者だ!!』
「うっわ、これはもう」
手遅れでした。四つほど生物らしき焦げたもの。
そしてもう一人も、半身が消し飛んでいます。なんで喋ってんですか、この御仁は?
物凄い生命力だな。
『ハイランドオークめ、まさか何か感づいたのか!?』
「あーいや、元気っすね」
何か普通に話してるんでこっちも緊張感が薄くなった。
『もうじきに、ワタシは死ぬ!!』
「……ですよね、やっぱ」
『ハイランドオークめ、まさかわれら魔族の策に気づいたとでも言うのか? それとも、奴ら竜殺しでもするつもりか……!』
「ストップ! ストップだ! あんたもうしゃべるな!」
『く、くく、もはや私の命は助からんだろう。最後くらい、しゃべらせろ』
いや助からないだろうけどね!? それやったの僕ですけどね?
でもあんた、やばそうなフラグドンドン立ててるんですよ!?
これなんて泥沼!?
『大人しく我らに協力すれば問題を解決してやると言って陣営に加えようと思ったが。まさか貴様のような化け物を飼っていたとはな』
うっおおおおおおおおおおおおお!!
第三者の介入って裏でしたか!? 当たっちゃったよ、畜生!
『まあ、しかし…門まで壊したのだ。奴らもはやまったものだ。これで蜃の怒りは現実のものとなろうよ』
「っておい!? 蜃って門を壊すとそんな怒るのかよ!?」
やばいやばいヤヴァイ。セーブポイントもなく戦闘に突っ込みそうなパターンじゃ?
会話コマンドを選択。それどころではない! とか返ってきそうな予感が。
きっと来るーーーーーーー!
『強大な竜族が、自分の縄張りの、門をいきなり破壊されたのだ、クケケエ、ザマアミロォ……』
半身になりながらも話したい事を話したそいつは、風化して砂のように消えた。言葉を信じるなら死んだのだろう。
残りの4つの炭ももう無くなっている。同様に風化したのか。
そして、地響き。
さらに山を包んでいた雲がどんどん高度を下げてくる。
雲、いや属性を考えると霧、なのか?
とにかく異常現象。
死ぬ!
会話する心算でした。そして出来れば握手して穏やかに帰るつもりでした!
嫌ーーー!! 自然現象が起こってきちゃうようなやばさだとは思いませんでしたとも!?
埋められて殺されて犯されるーーー!! 順番が猟奇的ーーー!!
読みは当たってたのに! なんでこうなる!?
悪いの魔族ジャン。第三者だったジャン!
「蜃様、話を聞いてください!」
僕はそう言って、もう数M上まで降りてきた極めて濃い真っ白な霧に叫んだ。
そこには、僕でもわかるような憤怒の表情で牙を剥く東洋伝統の竜神さまがおられました。
もうそのまま僕を咬み殺しに来てるのばっちりわかるんですけど!
大体だな。
「蜃ってでっかい蛤じゃないのかよーーーーーーーーー!!!」
異世界に、自分の常識、通じない。
こんな辞世の句はイヤ
です!!
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