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少し短いですが、区切りで分けて投稿します。

森や草原ですら無く荒れた大地にほっぽり出されて三日くらい食べなくても飲まなくても生きている。

そんなチート。あれ、あんま羨ましい感じがしない。

ではどうぞ。
序章 世界の果て放浪編
悲鳴に縋る
見渡す限りの荒野に岩山。

ひたっすらに続く荒野に岩山。

ずっとずっと続く以下同文。

落下してる時は涙ぼろぼろで、真下をじっくり見る余裕なんて無かった。

マジか? 本気と書いてマジか? この状況。

もう今日で三日目だぞ。

いい加減変化の一つもあっていいんじゃないか?

着地してから、昼夜を問わず僕から見て右にまっすぐ進んでいる。とにかく広い荒地だ。気付いたら元の位置に、なんてことにならないように遠くに見える景色の一つを目印にして、ひたすらに歩いた。

それでも、僕が正面に見据えている一際高さのある山には一向に近づいた感じがしない。幻かもしれない、と何度か心が折れそうになった。

何せ見事に誰にも何にも会わない。

ある意味すごいよね。人どころか、動物すらいないんだよ?

あ、忘れていた。

食べられそうなものも一切無いんだよね。枯れた藁みたいな草は時々見るけど、流石に食べられそうな気がしない。それすらまばらだけどね!

飢えはあるがまだ動けそうなのは、肉体が強化されている超人仕様だからかな。普通だったら、とっくに衰弱して動けなくなっていそうだし。

月様に言われたようにして、与えられた『力』を使ってみようと能力の発現を試みたが失敗(?)した。

手の平に集めるようにすると良いとの助言を信じてやってみたものの。

今ひとつわからない。確かに力が集まっているのはわかるのだが、何も起こらないのだ。

地面に手をつけてやってみたりしたけどこれも空振り。

色々試してはいるんだけどなあ。

唯一、手にモノを置いて発動させると力の入れ加減によって違うが微かに動く。多分、これが一番わかりやすい形の発現なんだろうか。

だけど自在に動かせるわけじゃなく震えるようにピクピクするだけ。

謎だ。そして少なくとも現状打破には使えそうに無い。

まあ、この力は月様から授かった尊いものだ。あの御方に間違いは無いと信じたい。

もっと色々試して、早くこの力を理解しなければ。

それにしても、暑い。

昼はそこそこの暑さ。

夜はそこそこの寒さ。

そう体感していたんだけど。

昼は陽炎が目をこするまでもなく立ち上る。今もそうだ。

夜は岩の表面に霜が降りる。

結構、人間にとって劣悪な環境のようです、はい。

改めて超人仕様に感謝。

まあ、他にすることも無くかなりの速度で一方向に進んでいるわけで。

あの山に着く頃には、きっと何かしらの状況の変化があるだろう。あってくれ。お願いです。

風の音と自分の足音しかしかきいてないんだよ!

もう三日なんだよ三日!!

普通イベントが起こるよね、こうなる前に!!

「そっかー僕勇者じゃ無くなったんだもんな~醜いアヒルの子だったから」

独り言が漏れる。誰もいない寂しさもあってか、意味も無く考えを口にすることも増えた。悲しい。

目が少し虚ろになる。遠くを見つめた。あそこには人里があると信じたい。

勇者の二人は今頃何してるのかねえ。きっと王族貴族に迎えられてチヤホヤされて、さぞかし美味いモノ食ってんだろうなあ。

それに引き換え僕はって言うと。

後ろを見る。ひたすら赤茶けた荒野。僕が踏破してきた道。

蜃気楼が見えるたびに全力でダッシュしてきたから結構距離は稼いできたはずだ。もうどこが自分の降りた場所かわからないだろうなあ。

最初は適当に歩いている内に誰かに会えるか人里に着くだろうなんて楽観的に思っていたけどさ。

それは主人公にだけ許された特権だったようで。

大体、見事にこれだけ何にもないのだ。人影一つも……はふう。

『……ッ……ッ』

だから。

その声はかすかだったけど。

僕が全ての変化に、多分人生で一番敏感になっていたからこそ。

僕の耳は聞き逃さなかったのだと思う。

歩を止める。

手を耳に当て、静かに目を閉じる。

どこだ、どこから聞こえた。

集中する。とにかく集中する。

水の一滴が落ちる音も逃さない気持ちで。

声は絶対にした、確かめろ。

『…てっ。…だ…かっ』

「こっち、だーーーーーーーー!!!!」

再度聞こえた、今度は明らかな悲鳴。

目を見開く。カッって効果音がほしい感じで!

絶賛絶食中ですけど!

お腹、すっごく減ってますけど!

こっちに来てから一番力強く。

僕は大地を蹴って走り出した。
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