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「主権回復の日」28日に式典、沖縄出身者や在日コリアンに漂う疎外感も/神奈川

2013年4月28日

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 戦後日本が独立を果たした「主権回復の日」を祝う式典が28日、東京都内で開かれる。61年前の1952年、サンフランシスコ講和条約が発効した「4・28」はしかし、沖縄にとっては本土と切り離され、米国の統治下に入った「屈辱の日」であり、旧植民地出身者が「外国人」として生きることを強いられた日でもあった。県内の沖縄出身者、在日コリアンの祝賀に向けられるまなざしは、寂しげで憂いの色を帯びている。


◆沖縄「犠牲忘れてないか」
 「この国は『ウチナー(沖縄の人々)』の犠牲を忘れていないでしょうか」。相模原市中央区で沖縄料理店を営む玉那覇直(すなお)さん(44)は静かに口を開いた。沖縄県宜野湾市出身。18歳まで過ごした実家は、米軍普天間飛行場と目と鼻の先にあった。

 沖縄戦で祖父を亡くした。祖母は多くを語ろうとしなかった。

 その手の甲に彫られた楕円(だえん)の入れ墨が、子ども心に不思議だった。のちに、既婚者であることを示すサインなのだと聞いた。「米兵にレイプされないためだった」。その体にも消せない「屈辱」は刻まれていた。

 国土の0・6%にすぎない沖縄に在日米軍基地の74%が集中する。50年代後半から60年代にかけ、独立を果たした本土の基地が縮小され、沖縄に寄せ集められていった結果だった。

 そして、72年の本土復帰後も止まらない米兵の犯罪、米軍機の騒音、墜落の危険と隣り合わせの日常。「負担を押しつけたままだ。沖縄は日本ではないのか。故郷が含まれない『主権』をどう祝え、というのか」

 基地の存在自体を否定するつもりはない。「沖縄が受け入れている基地のおかげで、日本は戦争をしない国でいられたのではないか」。自負にも似た響きは、踏みつけにされてきた自尊を、そう思うことで保とうとしている裏返しだった。基地経済に頼らざるを得ない人がいる現実もある。

 玉那覇さんの問い掛けは、どこまでも穏やかだ。「主権国家でいられるのも平和であればこそ。28日は、その意味を考える日であってほしい。そうすれば、沖縄の痛みにも気が付くはずだ」


◆在日「過去と向き合って」
 61年前、15歳だったころの記憶がよみがえる。「日本人がうらやましかった」。在日1世のチョウチェイヨンさん(76)=川崎市川崎区=は遠い目になり、つぶやいた。

 陸上自衛隊の前身に当たる保安隊が発足したのは「4・28」の半年後のことだった。同級生はこぞって「俺はここに入るぞ」。だがチョウ少年は、志を立てることさえ許されなかった。「朝鮮人ゆえ、相手にされないと分かっていた」

 日本が独立を果たしたその日、日本国籍を一方的に剥奪された。旧植民地出身者に与えられるべき国籍選択の権利が顧みられることはなかった。

 日本の植民地支配下にあった朝鮮半島から、身を立てるすべをつかもうと一家で海を渡った。当時4歳。「皇国臣民」として生き、朝鮮語は家でも口にしなかった。「奪われた民族の言葉や生活があった」

 終戦、そして日本の独立を境に一転、外国人扱いとされ、制度的な不平等は正当化された。植民地支配の責任は忘れられたかのようだった。

 50年、朝鮮戦争が勃発。祖国は混乱を極め、帰国は諦めざるを得なかった。

 期待し続けていたことがあった。「日本が国際社会に復帰すれば、旧植民地出身者の処遇も他国並みに改善されるのではないか」。在日はこれからも、この地で生きていく。ならば、せめて人々の尊敬を得られる国になってほしい。過去の歴史の克服には、そんな願いも込められていた。

 中国、韓国との対立を深めるこの国はいま、どこへ向かおうとしているのか。「過去と向き合わずして未来は語れない」。目の前の国益が強調され、祝おうとされている「主権回復」に落胆は深まる。

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