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焦点/復興格差解消へ/調整役の育成進む被災地
 | 研修に臨む「地域福祉コーディネーター」=石巻市社会福祉協議会 |
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◎住民課題を整理/公的支援へ接続 東日本大震災の被災地で、地域再生や被災者の自立支援を促す専門員「コミュニティー・ソーシャル・ワーカー(CSW)」の育成が進んでいる。医療福祉、雇用、自治活動など被災者や地域が抱える複合的な課題を整理し、専門分野とつなぐ総合調整を担う。地域や個人によって復興の格差が目立ち始めており、解消に向けた高水準の活動が期待されている。(片桐大介)
<不安見いだす> 「人の手を握ってあげられるような、寄り添う支援をしてほしい」 11日、石巻市社会福祉協議会が企画したCSWに当たる「地域福祉コーディネーター」の育成研修。男女7人が熱心にメモを走らせた。 7人は4月1日、CSW担当として市社協が市の委託を受けて採用。このうち谷祐輔さん(30)は震災直後に福岡県太宰府市から石巻市に入り、支援を続ける。「住民の心の立ち直りに格差を感じている。不安な点を見いだし、支えていきたい」と意気込む。 CSWの役割として市社協は、(1)体の不自由な高齢者ら要援護者の支援(2)医療や就労など住民の課題に合わせた公的サービスとの接点づくり(3)自治会育成など住民活動の活性化−を想定する。
<地域崩壊防ぐ> 期待の背景には、復興の遅れに伴うコミュニティー崩壊の危機がある。 市社協には仮設住宅団地の住民から「連日、男性数人が飲酒し、暴言を吐く」「中傷ビラをまかれた」といった心の荒廃が要因とみられる苦情が寄せられる。「自治会がまとまらず、誰も会長にならない」など停滞する自治活動への悩みを訴える声も少なくない。 CSWは仮設住宅で安否確認や傾聴活動を行う訪問員より、高度な知識と調整力が求められる。市社協の大槻英夫事務局長は「孤独死防止はもちろん、地域全体の活力が失われることを防ぐ役割が期待されている」と重要性を強調する。
<出向いて発見> 仙台市社会福祉協議会も4月、市内6地区の各社協にCSW専任職員を置いた。市社協地域福祉課は「地元との交流事業や生活支援に取り組む。被災者が孤立しないよう社会とつながる手助けをしたい」と狙いを語る。 CSWの役割について、龍谷大(京都市)の筒井のり子教授(地域福祉)は「受け身ではなく、積極的に地域に出向いて自ら課題を発見することが大切だ」と説明。「新たなコミュニティーづくりが必要な被災地で、住民同士が支え合える仕組みづくりを担ってほしい」と期待する。 CSWは都道府県では、大阪府が2004年度に初めて事業化し、関西地方を中心に広がった。
2013年04月28日日曜日
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