たこ焼きは北海道名産?!
歌登の宿泊ホテル(うたのぼりグリーンパークホテル)に着いたタイ人ご一行様は、浴衣に着替える。取材したのは3月、北海道ではまだまだ雪が根深く残るシーズンだ。しかし、北海道は建物の中は非常に暖かいので浴衣でも十分快適に過ごせる。
そんな浴衣姿のタイ人観光客たちが夕食用の特設会場に足を運ぶと、ステージ上では鉢巻き姿の男たちが力強く和太鼓を打ち鳴らしている。気分上々、テンション上昇だ。この後は、これでもかというぐらいに日本を舌と体で同時に味わってもらうことになる。
みんなで餅つきをやり、たこ焼きを作り、寿司も自分たちで握る。手巻き寿司ではない。本当の握りずしだ。自分で握った寿司に舌鼓をうつ。マグロの解体ショーならぬ、鮭の解体ショーもある。そして、流しそうめんまで登場するのだ。
日常では、北海道でたこ焼き屋を目にすることはほぼない。餅つきも本州と同じで通常は正月のみ実施している。和太鼓だって滅多にお目にかからない。しかし、そんなことは関係なく、観光客が喜ぶならということで全部てんこ盛りにしているわけだ。
「けしからん!そんなことをすると、たこ焼きや北海道のものだと誤解されるし、日本人は年がら年中餅つきをしているなんて勘違いされる、浴衣を持っている日本人も多くはないはずだ」という批判も当然にあろう。
しかし、これらはタイ人側からのリクエストに応えたらこうなったとのことであり、彼らは一度に日本を味わい尽くしたいわけだ。
なにもしなくても観光客がくる観光地ではアイデアは生まれない・・・
北海道にはきれいな景色とおいしい食べ物があるので、観光資源は十分ある。したがって、観光地に存在する宿泊施設では黙っていても観光客がやってくるので、ここまで徹底的にやるところはあまりないだろう。
しかし、それら観光地の宿泊施設があぐらをかいてくれるからこそ、この歌登のホテルのように、徹底的に海外の観光客のニーズに応えると観光地でなくとも宿泊をしにやってきてくれるわけだ。
このホテルでは2010年からタイ人観光客の受け入れを開始し、最初の年は200人、2011年は400人、2012年は600人、そして今年は800人の宿泊を見込んでいる。
対照的なのは小樽だ。小樽は代表的な観光地であるが、実は宿泊施設があまり存在しない。何もしなくとも観光客が毎日やってくるのだが、それら観光客は電車で30分ほどの札幌で宿泊する。あるいは、車で1時間半ほどのニセコに滞在する。
せっかく毎日たくさんの観光客がやってきてくれるのに滞在時間が短いのだ。これを嘆く声が小樽では非常に多い一方、実際は何もしなくても観光客が来てくれるため動きは鈍い。
話を戻すと、外的環境も追い風だ。去年からはバンコクと新千歳空港を結ぶ直行便が就航し、搭乗率は当初予想を上回って好調に推移している。現地バンコクの旅行代理店も取材班が訪れたが、北海道観光のツアーはキャンセル待ちの状態とのことだった。
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