ソウル市中区のロッテホテル38階にある韓国料理店「無窮花」を昼時に訪れると、空席がない繁盛ぶりだった。外国人の姿も目立った。香港から来た取引先を接待していた米国人実業家のティモシー・タイタスさんは「料理がおいしいのでよく来る。韓国では韓国料理でもてなすべきではないか」と話した。
同じ時間帯、ソウル市広津区のシェラトン・グランド・ウォーカーヒル・ホテルの韓国料理店「オンダル」も混雑していた。ビジネスマンよりも中国人観光客や女性客が中心だった。
■黒字転換し経営快調
最高級ホテル内の韓国料理店は、これまで赤字で苦戦していたが、最近は売り上げが伸び、復活の兆しを見せている。現在ソウル市内の最高級ホテルのうち、韓国料理店があるのは、ロッテホテル(無窮花)、シェラトン・グランド・ウォーカーヒル・ホテル(オンダル・明月館)、ルネサンス・ソウル・ホテル(泗庇楼)、メイフィールド・ホテル(楽園・蓬莱軒)。1990年代後半まで10カ所のホテルが韓国料理店を経営していたが、次々と閉店し、現在は4カ所に減少した。
最近の状況は一変した。ロッテホテルの無窮花は2010年に改装後、最近2年間で売り上げが60%伸びた。江西区にあるメイフィールド・ホテルは、収益全体の45%を韓国料理店2店が上げている。シェラトン・グランド・ウォーカーヒル・ホテルの韓国料理店も黒字でプラス成長を続けている。
汝矣島マリオットホテルは最近、外国人客の要望に応え、ラウンジで韓国料理を出すプロモーションを行っている。改装中の新羅ホテルも40席規模の韓国料理店をオープンする予定だ。
■黒字化の理由
韓国料理は人件費が掛かる。手間が掛かるためだ。テーブルの回転率も低く、収益を上げにくい。それでも黒字化に成功したのはなぜか。
まず思い切った改装が功を奏し、外国人客が訪れるようになったことだ。ロッテホテルは地下にあった韓国料理店「無窮花」を38階のVIPラウンジに移動した。伝統家屋やあずまや、池などを配した古典的なインテリアは、ドイツ人デザイナーのイネス・ゲルラフ氏の手によるもので、西洋人の目から見た韓国的デザインへと一新した。ロッテホテルの担当者は「外国人客の割合は当初10%に満たなかったが、最近は55%まで増えた」と語った。
シェラトン・グランド・ウォーカーヒル・ホテルの明月館は1983年開店。2010年に重要無形文化財保持者の丹青細工師、ホン・チャンウォンさんが改装を担当した。丹青とは韓国の寺などに用いられる色鮮やかな装飾のことで、格調高い韓国の美を伝えることが改装の狙いだった。
メイフィールド・ホテルは2003年に韓国料理店を増設するに当たり、景福宮の復元に参加した人間文化財の大工、イ・イルグさんに工事を任せた。従業員の制服もドラマ『宮廷女官チャングムの誓い』に登場した朝鮮王朝時代の宮中で王や王妃に仕えた役人の服装に統一した。