2013-04-14
96条改憲は憲法クーデターである
安倍自民党が憲法「改正」に執念を燃やしている。そのための突破口と位置付けているのが憲法改正手続きを定めた96条の改憲である。現行憲法が憲法改正の発議要件を国会の各議院の3分の2以上の賛成を要するとしているのを、過半数の賛成に緩めようとしているのであり、来る参院選の争点に掲げると息巻いている。言うまでもないことながら、自民党が改憲の争点としてまず真っ先に96条を持ってきたのは、いったん憲法改正の発議要件を衆参各院の2分の1にまで緩和してしまえば、自民党の長年の悲願であった9条改憲をはじめ、人権制約の根拠を人権の内在的制約原理である「公共の福祉」から外在的制約原理である「公益・公の秩序」に置き換えることによる人権保障の骨抜き(無制約化)や天皇の元首化、国民の義務規定の乱立など、次々とやりたい放題の改憲が容易になるからである。そのためには、衆参両院で改憲勢力が3分の2という現行憲法の改正手続き要件を満たす可能性がある次期参院選後を千載一遇のチャンスと見て、ここで一気に改憲要件を緩和してしまおうとしているのである。
そこで、安倍首相は9日の衆院予算委員会で、96条改正の意図を、「2分の1以上の国民が(憲法を)変えたいと思っても、3分の1をちょっと超える国会議員が反対すればできないのはおかしい」と述べている。確かに、安倍首相が96条の意味を全く理解できず、国民投票の賛成要件と国会議員の発議要件が違っていることを「おかしい」と思っていることは十分に理解できる。先日の記事(「アベシンゾーと「驚愕の事実」」)でも指摘したように、安倍首相には憲法の意味が全く理解できていないので、なぜ改憲要件が通常の立法よりも厳しくなっているのかということ自体が理解できないために、「おかしい」と感じているのであるが、それがどれほど大問題であるかも先日の記事で指摘した。
自民党は昨年、改憲草案とともに公表した「憲法改正草案Q&A」の中で、96条改正の理由について、「世界的に見ても、改正しに くい憲法となっています」と述べているが、これが事実に反する大嘘であることは4月13日の東京新聞特報面「チェック改憲 改正手続き 国際比較すると」でも詳細に証明されている。成文憲法を持たない英国やニュージーランドといった特殊な不文憲法の国を除けば、今日、成文憲法を持つ国はほとんどが硬性憲法(通常の立法や法改正より厳しい改正手続きを定めた憲法)であって、そうでなければ、そもそも立憲主義の国とは言えないのである。立憲主義とは、人権を保障するため権力分立を定めた憲法を制定し、そうすることで時々の為政者の恣意的な権力行使を制限し、人々の自由を確保しようとする思想であるから、憲法改正手続きが通常の立法手続きと同様であれば、到底この役割を果たしえないことは自明である。
そこで、憲法が立憲主義の憲法たりうるためには、憲法改正についても、おのずから一定の限界がある、というのが憲法学界の通説である。憲法改正の限界については、細かく言えば色々な学説が分かれているが、現在、日本の憲法注釈書としておそらく最も権威のある『注釈 日本国憲法』(青林書院)によれば、憲法改正の限界として、第1に、憲法制定権力の担い手である主権の変更は認められないこと、第2に、元の憲法との同一性を失わせるような改正は認められないこと、第3に、憲法改正手続き規定および改正禁止規定の実質に触れるようなことは改正行為として認められないこと、の3点が挙げられている(『注釈 日本国憲法(下)』1461頁)。これが憲法改正規定の限界をめぐる通説中の通説と言うべきものであろう。憲法改正手続きの改正が改正権の限界を超えていると考えられる理由は、国の最高法規(98条)である憲法の改正行為が法的に秩序づけられた行為であるためには、立法手続きを定める法規範が法律に上位する憲法規範と考えなければならないのと同様、改正規定そのものが、憲法典のなかにあっても、他の諸規定よりも一段上位の法規範と考えなければならないからである。それゆえ「改正手続き規定は、憲法制定権力が憲法典成立以後法的に行為しうる唯一の道筋であり行為準則であって、改正手続きの実質に触れる改正はできない」(佐藤幸治『憲法』)のである。
憲法を一度もまともに勉強したことのない安倍首相のような改憲派議員がこの説明を理解できるかどうかはわからない(ことにしてあげる)が、こうした憲法学の常識もない連中が数の力に任せて96条を改憲するようなことがあれば、まさしく憲法クーデターと言うべき由々しき事態である。
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