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2013-04-29

#403 佐藤優がボストンテロ事件を語ると


 作家で、ロシア関係の著作の多い佐藤優氏が、ボストンテロを語っているのを読んで、おおいに首をかしげた。(>引用符はすべて佐藤氏の論考)

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/35612

> 容疑者チェチェン人であるという要素が重要になるので、本件を読み解くためには民族学的知見が不可欠だ。

 で、こうつづく。

> チェチェン人の男子は、物心がつくと、父方の7代前までの祖先の名前、出生地と死亡地を暗記させられる。そして、7代前までの祖先が、誰かに殺害された場合、その子孫には「血の報復の掟」が適用される。江戸時代の「仇討ち」が、現在まで続いているのである。

 「不可欠」? もっと他に書くことはないの? と思う。

 20万人のチェチェン人を殺害した、ロシア軍による対チェチェン軍事侵攻とか、そのために、アメリカ含め世界中に離散したチェチェン難民とか、「不可欠のファクター」はいくらでも見出せるのでは。(これらの点、彼の論考はひとことも触れていない)

 じつは今の時点では、それらが不可欠といえるかどうかさえ、わからない。そのくらい不可解な事件であることを、チェチェン問題をずっと追跡してきた人々は感じている。

 たとえば今日紹介した富樫耕介氏の論文は、そんな誠実な論考だから、みんなに読んでほしいと思った。

http://synodos.jp/international/3642/1

 もし佐藤優氏が「血の復讐」を論じたいのなら、少なくとも「チェチェン民族学序説」(高文研刊)を読んでからにしてほしい。

http://tinyurl.com/cbl9b96

 「血の復讐」というのは、かならずしも、復讐・殺害で流される血を指すのではなく、言ってみれば一族という「血」のつながりの中での被害の「記憶」と、それに対する謝罪のありかたのことだ。

 ボストンマラソンの見物客を殺害するのは許されないとはいえ、そこに「血の復讐」を引っ張り出さなければ説明できないということは、ぜんぜんない。むしろ有害だ。たとえばこんな感じになると:

> 「血の報復の掟」があり、7代前までの祖先を覚えているために、ロシア中央アジア中東、西欧、米国などに分かれて住むチェチェン人は、濃淡の差はあってもチェチェン人としてのアイデンティティを保持している。

 こういう書き方は本当に差別的だし、難民として、アメリカヨーロッパ、そして日本に住んでいるチェチェン人全体への偏見を広めていると思う。彼らはもはや私たちの隣人なのだ。

 チェチェン人が何らかの形でアイデンティティを保っているとしても、その根拠が佐藤氏流の解釈による「血の復讐」にあると断じるのは、誤解の上に誤解を重ねることになる。

 早い話が、ステレオタイプなのだ。

 結局、犯人の動機が何だったかは、まだわからない。だからこそこういう、「風習」が事件に発展したような、つまり差別につながるようなことを、軽々しく書くべきではないと思う。

 佐藤氏とつながりのある方は、このメールを転送してほしい。彼には、日本で出ているチェチェン関係の本を、真摯に読んだ上で、チェチェンに言及していただきたい。

 (大富亮)

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