宮城のニュース
慶長遣欧使節関係資料 一部は欧州と無関係か 元学芸員指摘
仙台市博物館が所蔵する国宝「慶長遣欧使節関係資料」のうち、一部が欧州と無関係の可能性があることが、元博物館学芸員の研究で浮かび上がっている。資料は仙台藩祖伊達政宗の命を受けてローマなどに赴いた支倉常長が持ち帰った。文部科学省は資料を国連教育科学文化機関(ユネスコ)記憶遺産への登録を推薦。同省は「国宝指定の際に調査している」と全資料登録の価値があると強調している。
研究しているのは、元仙台市博物館学芸員で、考古学が専門の高校教諭佐々木和博さん(63)。 国宝資料47点のうち、鞍(くら)や四方手(しおで)など馬具4点が、日本や中国の明で製作された可能性があると指摘する。 いずれも具体的な入手地の記録はなく、類似する国内外の馬具の文様や形式から製作地と年代を類推した。 47点は、伊達家に献上された3点と、藩が支倉家改易の際に没収して「切支丹(きりしたん)所」に保管した44点に分類される。佐々木さんは「没収品の中に支倉家由来ではあるが、使節と無関係の品が混ざった可能性がある」と話す。 常長は政宗に従い、豊臣秀吉の朝鮮出兵に参加している。佐々木さんは現地で馬具を入手した可能性もあるとみている。 「仙台市史特別編8慶長遣欧使節」(2010年3月発行)にも、馬具について「形式から日本製と思われる」「製作地は中国ではないかと指摘されている」との記述がある。 仙台市博物館で資料の展示を担当する佐々木徹学芸員は「実は由来のはっきりしない資料はある」と指摘。常長はフィリピンのマニラを経由して帰国したことを挙げ「東西貿易の拠点だったマニラで入手したのかもしれない」と推測する。 文科省は国宝47点をユネスコ記憶遺産に登録を推薦。6月のユネスコ国際諮問委員会で記憶遺産となる見通しを示す。 同省の日本ユネスコ国内委員会事務局は資料について「諸説あるのは承知している」としつつ、「国宝指定の際の調査で使節帰国の際に持ち帰られたと認定されている」と説明する。 元学芸員の佐々木さんは「基礎的調査をせず、全て一緒に考えるのは学術的におかしい。積極的な絞り込みを進めるべきだ」と話している。
[慶長遣欧使節関係資料]伊達政宗によりスペインとローマに派遣された支倉常長が持ち帰ったローマ市公民権証書や肖像画など47点。鎖国直前の日欧交渉や文化交流を伝える文物として2001年に国宝に指定された。
2013年04月28日日曜日
|
|