高レベル放射性廃棄物の処分場誘致に絡み、東京電力と深いつながりを持つと見られる会社社長から、モーターボートを譲渡されたり、飲食接待を受けるなどしていた鹿児島県南大隅町の森田俊彦町長が、同社長に処分場を含む核関連施設誘致の一切を任せるとした「委任状」を渡していたことが明らかとなった。
この問題について長期取材を行っていたTBSテレビの取材班に対して認めたもので、24・25の両日、同局の「ニュース23」が一連の動きを詳しく報じた。
HUNTERでは、今年3月1日から委任状の存在を含めた疑惑の数々について全容を報道。これを受けた3月議会で追及された森田町長は、委任状や飲食接待などモーターボート譲渡以外の疑惑について全面的に否定する答弁を行っていた。
森田氏の委任状は2枚
森田町長の「委任状」は、東電・勝俣恒久前会長との間にパイプを持つ「オリエンタル商事」(東京都千代田区)の原幸一社長あてに作成され、同社長に渡されていた。関係者の話から、最低でも2枚あったことが分かっている。1枚は森田氏が商工会長を務めていた時代のもの。そしてもう1枚が、昨日までの報道でTBSが明らかにした森田氏の町長就任後に改めて原氏に渡されたものだ。
3月、HUNTERの取材に応じた前町長の税所篤朗氏は、高レベル放射性廃棄物の最終処分場誘致を主導したのが、オリエンタル商事の原幸一社長だったことを認めた上で、およそ次のように語っていた。
税所前町長が明かした原氏の紹介者とは、自民党の森山裕衆院議員である。森山議員はHUNTERの確認取材に対し、前町長に原氏を紹介したことの覚えはないとしながら、原氏を知っており、指宿の別荘に招かれたことだけは認めている。(右の写真が原氏の別荘)
税所篤朗・前町長らが作成したオリエンタル商事・原幸一社長への委任状について、事情を知る別の町関係者は、およそ次のように話していた。
この町関係者は、森田氏が町長就任後、新たな委任状を原氏に渡していたことや、東電の勝俣社長を訪問し、「私は処分場を誘致するために町長になりました」と言ったことについても詳しい証言を行っていた。
モーターボートの授受、委任状の存在、いずれも当初は否定しながら、証拠を突きつけられた末に嘘を認めた森田氏。原氏からの飲食接待についても否定しているが、現場に立ち会った町民がその実態を詳細に語っており、森田氏が言い逃れを続けることは難しい状況だ。
虚偽答弁、さらに金銭疑惑も
議会での虚偽答弁も問題になりそうだ。今年3月の南大隅町議会。HUNTERの報道を知った議員から、原氏との親密な関係などについて追及された森田氏は、モーターボートを譲り受けたことなどを認めながらも、町長就任後の飲食接待や東京電力訪問といった核心部分の疑惑を否定。この問題に関するHUNTERの報道を、町長選の対立候補陣営が仕組んだかのような発言に終始し、自身への疑惑を巧妙にはぐらかしていた。
この時の答弁では、「委任状」の存在も完全否定しており、TBSの報道によって、これも虚偽答弁だったことが証明された形。他の自治体なら即刻辞任のケースである。
森田氏については、金銭がらみの疑惑も浮上している。森田氏が経営する木材会社は、多額の借金に苦しんできたという。しかし、森田氏は昨年になって乗用車を購入し、自宅の改装まで行ったという。原資は不明だが、森田氏に金銭的な支援をしてきたという複数の町民は、次のように話している。
南大隅町の公共工事に関しては、一部の業者による支配、さらには談合の疑いが生じており、HUNTERも事実関係について取材を続けている。町長を支えているのは漁協や建設業界を仕切る町の有力者たち。そして、そのいずれもが高レベル放射性廃棄物の処分場誘致に積極的だった面々だ。人口約9,000人の南国の小さな町は、こうした汚れた連中に牛耳られているというのが現状だ。
陣営ぐるみで町民騙し―求められる町政刷新
今月14日に投・開票が行われた町長選の期間中には、HUNTERが配信した森田氏追及の記事や、原氏を追った週刊朝日の報道を、森田氏の対立候補がそれぞれ400万円、600万円の大金を渡して書かせたものだというデマが流された。記事そのものがでっち上げだと触れて回った恥知らずの森田派運動員もいる。まさに陣営ぐるみの選挙違反であり、対立候補や報道側に対する名誉毀損だった可能性が高い。この町の権力者達は腐っているとしか言いようがない。
南大隅町の町民は、嘘しか話さない町長とその陣営に騙され、町政刷新の機会を逸したと言っても過言ではない。きょうにも会見を開くという森田氏が何を語るのか注目されるが、森田氏が辞任を拒否した場合には、即刻リコール運動を起こすことをお勧めしておく。町の主役は町民なのだ。税金で嘘つきを養う必要はあるまい。
ちなみに、森田氏が初当選した平成21年の町長選の際、事前に町の有力者が談合して候補者を森田氏に決めていた。その場にいて睨みを利かしていたのが、オリエンタル商事の原幸一社長だったことを付記しておきたい。