日台:漁業協定に調印 尖閣周辺は「適用水域」
毎日新聞 2013年04月10日 21時07分(最終更新 04月11日 01時28分)
【台北・鈴木玲子】日本と台湾は10日、台北市で沖縄県・尖閣諸島周辺海域での漁業権を巡る漁業協定に調印した。台湾も領有権を主張している尖閣諸島周辺の日本の排他的経済水域(EEZ)の一部で台湾漁船に操業を認めた。協定は、調印から30日以内に運用が開始される見通し。
協定では、日本の排他的経済水域の一部に日台双方の漁船が操業できる「適用水域」を設置。尖閣諸島から12カイリの領海に台湾漁船が入ることは認めない。尖閣諸島の領有権問題については棚上げした。
また、日台双方で漁が盛んな適用水域内の東側に「特別協力水域」を設定。今後、日台漁業委員会を設置し、この水域で双方の漁業者間で問題が生じないよう、話し合う。
尖閣海域の漁業権を巡る問題は、友好関係にある日台間で「唯一の問題」(外交筋)とされる。協議は1996年から始まったものの進展はなく、09年に中断した。昨年9月の日本政府による尖閣諸島国有化で、日中関係が冷却化。尖閣の「共同防衛」を台湾に呼び掛ける中国をけん制する目的もあり、日本は協定締結で台湾の漁業範囲を従来より拡大させて譲歩する形を示し、台湾の取り込みを図った。
日台は72年に断交し、外交関係がないため、調印は日本の対台湾窓口機関「公益財団法人交流協会」と台湾の対日窓口機関「亜東関係協会」の間で行われた。調印後、交流協会の大橋光夫会長は「東シナ海の安定確保は日台のみならず、世界共通の利益になる」と話した。
沖縄県の仲井真弘多(なかいま・ひろかず)知事は「沖縄県の要望が全く反映されず、台湾側に大幅に譲歩した内容で極めて遺憾。今回の合意で本県水産業への多大な影響は避けられず、国に強く抗議する」とのコメントを発表した。 中国外務省の洪磊副報道局長は同日の記者会見で、日台間の合意について「重大な懸念を示す」と警戒感をあらわにした。