暴力団周辺者:「準構成員」基準が争点に 京都地裁
毎日新聞 2013年04月10日 15時00分
詐欺事件で被告が暴力団の周辺者とされる「準構成員」に当たるかどうかを巡り、検察側と弁護側が真っ向から争う裁判が京都地裁で審理されている。警察庁によると、2012年末現在、全国の準構成員は約3万4400人で、組員の約2万8800人を上回る。全国で暴力団排除の動きが進む一方、準構成員の認定基準は明確でなく、その当否が争点になるのは珍しい。捜査当局の恣意(しい)的な運用を懸念する声もあり、裁判所の判断が注目される。
この事件は、元会社役員の男(33)が準構成員であることを隠して11年12月、不動産業者を通じて自宅用マンションの売買契約をしたとして、詐欺罪に問われている。契約書には準構成員など「反社会的勢力」でないことを確約する暴力団排除条項があった。
初公判は12年8月に開かれ、弁護側は「準構成員ではない」と、一貫して無罪を主張。弁護人によると、元役員は「知人に組員がいるが、組員になる前からの付き合いで、組の活動とは無関係」などと話しているという。弁護側は大阪、滋賀の府県警に元役員が準構成員に認定されているか照会したが、情報は開示されなかった。
一方、検察側は認定理由を具体的に示していないが、検察側証人として出廷した元組員に「(元役員は)組事務所の掃除や組員の送り迎えをした」と証言させ、元役員は準構成員と主張している。今後、元役員と組員らとの人間関係などの審理で、裁判は長引く可能性もある。
暴力団問題に詳しいノンフィクション作家の溝口敦さんは「準構成員の認定が刑事裁判の争点になるのは初めてではないか。暴力団排除は必要だが、市民生活を送る権利を制限する前提となる身分の認定が警察だけに委ねられているのは、法治国家として問題がある」と指摘する。【田辺佑介】
暴力団の準構成員
警察庁は組織犯罪対策要綱で「暴力団の威力を背景に、暴力的不法行為を行うおそれがある者や、資金や武器など暴力団に協力する者」と規定。だが、判断基準や認定方法は明らかにしていない。
捜査関係者によると、組員は親分から杯を受けたり定期的に上納金を納めたりしたことなどで判断するが、準構成員は日ごろの人間関係や暴力団との関与の度合いなどで、警察が認定するという。暴力団が活動を潜在化させるため、あえて組員にせずに活動させるケースもあるため、捜査当局は取り締まりを強化している。