日銀:新緩和策 資金供給2年で倍、リスク資産購入増
毎日新聞 2013年04月04日 21時45分(最終更新 04月05日 00時39分)
日銀が4日の金融政策決定会合で導入を決めた新たな金融緩和の枠組み「量的・質的緩和」策は、日銀が市場に供給するお金の量を今後2年で倍増させるという大胆な内容だ。資金供給の手段として、銀行などから購入する金融資産も、40年債を含む全ての国債に対象を広げるほか、国債に比べて価格下落などのリスクが高い資産の購入も増やす。黒田東彦(はるひこ)総裁は就任後初の決定会合で、白川方明(まさあき)前総裁の下で実施してきた「包括緩和」を抜本的に見直し。レジームチェンジ(体制変換)を鮮明にし、2%物価上昇目標の早期達成を目指す。
◇長期金利最低、株高騰
「日銀がルビコン川を渡った」−−。決定が伝わった4日午後1時40分過ぎ、大手証券会社で国債売買の戦略を練る債券ストラテジストは驚きの声を上げた。
日銀が国債を買い続ける間、国債価格は下がらない。安心した金融機関が一斉に国債を買い進めると、価格は急上昇(金利は低下)。長期金利の指標となる10年債の利回りは一時、0.425%まで低下し、史上最低を更新した。日経平均株価は2週間ぶりに1万2600円台を回復、円相場は前日比約2円の円安となる1ドル=95円台に急落、米国市場では96円台まで下げた。日銀の黒田総裁は会合後の記者会見で「常識を超える、これまでとは次元の違う緩和だ」と強調した。
金融市場が反応したのは、金融緩和の度合いが想定を上回ったからだ。
新たな緩和策は、日銀が市場からこれまで以上に金融資産を買い、その見合いで資金供給を増やす。どれだけ増えたかを「マネタリーベース」という指標で測る。市中の現金と、銀行が決済用などで日銀に預けている当座預金残高の合計で、12年末は138兆円だった。日銀はこれを、14年末に270兆円に増やす。お金が増えれば価値は下がり、インフレにつながる。銀行が当座預金を融資などに回せば、景気を刺激する。
日銀が06年まで実施した前回の量的緩和でも、マネタリーベースは100兆円前後だった。類例のない巨額の資金供給だが、それでもデフレから脱却しなければ−−。「ちゅうちょなく(追加緩和を)行う」と黒田総裁は言う。